5月8日から9日にかけて、イーサリアム(ETH)は29%の大幅上昇を記録し、4月9日に付けた1385ドルの安値を底とする10週にわたる弱気市場に終止符を打った可能性がある。この急騰により、ショート(売り)ポジションを取っていた先物取引で4億ドル以上の清算が発生し、クジラ(大口投資家)やマーケットメイカーの意表を突く形となった。
とはいえ、ETHのデリバティブ市場では依然としてトレーダーの姿勢は中立的だ。この慎重な姿勢が、実質的なトレンド転換の始まりを示しているのか、それとも再び2000ドルの水準を試す前段階にすぎないのかはまだわからない。
ETH先物における年率換算プレミアムは、通常の中立市場とされる5%水準に到達しておらず、レバレッジを用いた強気ポジションへの需要は依然として低調だ。2025年のETHのパフォーマンスは、アルトコイン市場の時価総額に対して17%遅れており、こうした状況が投資家の慎重なスタンスの背景になっているとみられる。
一部のアナリストは、今回の反発をさらなるショートカバーの呼び水と見ているが、他方ではイーサリアムのファンダメンタルが大きく改善していないと指摘する声もある。
分散性とTVLでの優位性は依然として堅固
価格動向とは別に、最近のネットワークアップグレードにより、レイヤー2のスケーラビリティは大幅に向上した。特に重要なのは、分散性とセキュリティの観点でイーサリアムが依然として業界の先頭を走っている点だ。
実際、イーサリアムの総ロック価値(TVL)は640億ドルに達しており、ソラナ、BNBチェーン、トロンという3大競合チェーンの合計TVLである223億ドルを大きく上回っている。
一方で、現物イーサリアム上場投資信託(ETF)に対する投資需要が盛り上がりに欠けている点は、警戒すべきサインとなっている。ファーサイド・インベスターズのデータによれば、過去4年間で最も大きな上昇を見せた当日ですら、米国上場のイーサリアムETFでは3日連続となる資金流出が記録された。5月8日だけでも純流出額は1600万ドルに達している。
このような投資家の反応の鈍さは、1月から4月にかけてネットワーク手数料が85%も減少したことが一因と考えられる。ネットワーク上のアクティビティが減ればETHへの需要も低下し、プロトコルが導入しているバーンメカニズムの効力が落ちて、ステーキング利回りにも悪影響が及ぶ。
ETHオプション市場におけるデータも、市場参加者の慎重な姿勢を裏付けている。現在、プット(売り)オプションとコール(買い)オプションの価格はほぼ均衡しており、市場全体のセンチメントは中立的であるといえる。これは強気派にとってはやや心許ない状況だ。
しかしながら、トランプ米大統領が以前に支持を示した競合アルトコインへのスタンスを軟化させたことは、ETHにとって追い風となる可能性がある。
5月8日のポリティコの報道によれば、トランプ氏は「利用された」と感じ、仮想通貨準備金構想を提案したとされるロビイストとの関係を断ったとされる。3月2日の投稿ではソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)、XRPに言及していたが、その4日後に出されたデジタル資産備蓄に関する大統領令ではより慎重なトーンに転じていた。
現時点では、デリバティブ市場やETFへの資金流入が鈍い状況だが、競合勢力のロビー活動の失敗を受けて投資家心理が好転すれば、ETHが2700ドルに向けてさらに上昇する展開も十分にあり得る。
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