JPモルガンの新しい報告書によると、ネットワークアップグレードである「マージ」と「シャンハイ」以降、イーサリアムのステーキングの増加は、より高い集中化とステーキング利回りの低下というコストになっている。

JPモルガンのシニアマネージングディレクターであるニコラオス・パニギルツォグロウ氏らのアナリストチームは、10月5日に新たな投資者向けノートを発行し、イーサリアムの集中化が進むリスクについて警告した。

上位5つのステーキングプロバイダー Source: JPMorgan

トップ5の流動性ステーキングプロバイダー(リド、コインべーづ、フィグメント、バイナンス、クラーケン)は、イーサリアムネットワーク上のステーキングの50%以上を支配していると、JPモルガンは報告書で指摘した。また、リドだけでほぼ3分の1を占めているとも付け加えた。

JPモルガンのアナリストたちは、仮想通貨コミュニティが、コインベースやバイナンスといった中央集権的なステーキングプラットフォームに対するより良い代替手段として、分散型流動性ステーキングプラットフォームであるリドを見ていると指摘した。

しかし、実際には「分散型流動性ステーキングプラットフォームでも高度な集中化が存在する」とJPモルガンの報告書は指摘し、単一のリドのノードオペレーターが7000以上のバリデーターセット、つまり23万ETHを占めていると付け加えた。

これらのノードオペレーターは、リドの分散型自律組織(DAO)によって選ばれ、少数のウォレットアドレスによって制御されている。「これにより、リドのプラットフォームは意思決定においてむしろ中央集権的だ」とアナリストたちは書いている。

報告書は、リドのDAOが集中化を避けるためにイーサリアムの全体的なステーキングの22%にステーキングシェアを制限する提案を却下したケースを取り上げた。

「リドはその提案に参加せず、そのDAOは99%の圧倒的多数によって提案を却下した」とJPモルガンのアナリストたちは書いている。「言うまでもなく、どのエンティティやプロトコルによる集中化も、流動性プロバイダーやノードオペレーターの集中数が単一障害点となるか、攻撃の対象となるか、独占を作り出すために結託する可能性があるため、イーサリアム・ネットワークにリスクをもたらす」と付け加えている。

JPモルガンによれば、より高い集中化に加えて、マージ後のイーサリアムは全体的なステーキング利回りの減少とも関連している。標準的なブロック報酬は、シャンハイ・アップグレード前の4.3%から現在の3.5%に減少し、全体的なステーキング利回りもシャンハイ・アップグレード前の7.3%から現在約5.5%に減少したとアナリストたちは書いている。

JPモルガンのアナリストたちは、マージ・アップグレード後のネットワークの集中化が大幅に増加したことに気づいた唯一のイーサリアムの観察者ではない。2022年9月15日に実施されたマージは、イーサリアムの分散化の大きな障害と見なされ、利回りの低下の主要な原因となっている。

イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、ノードの集中化がイーサリアムの主要な課題の1つであると認めている。彼は2023年9月に、この問題を解決するための完璧な解決策を見つけるのにはさらに20年かかるかもしれないと述べた。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン