イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、状況によっては伝統的な企業構造よりも効率的かつ公平になるとして、分散型自律組織(DAO)の擁護を表明している。

理論的には、DAOはメンバーによって集団で所有・管理され、中心的なリーダーが存在しない。保有資金の使用やプロトコルの改善などに関するすべての決定は、コミュニティに提出された提案に対する投票によって行われる。

ブテリン氏は、9月20日に自身のウェブサイトに投稿した長文の中で、DAOの批判者がしばしばDAOのガバナンスは非効率であり、DAO理想主義者はナイーブであり、取締役会とCEOによる従来の企業統治構造が重要な決定を下すための最適な方法だと主張していると指摘する。

しかし、ブテリン氏は「この立場は往々にして間違っている」と考えており、単純な形の妥協であっても、特定の状況下では平均して中央集権型の企業構造より優れていると主張している。ただし、これは意思決定のタイプに依存すると考えている。このタイプというのは、凸型と凹型の2つのカテゴリーに分類されるという。

凸型の意思決定の例としては、パンデミック対応、軍事戦略、仮想通貨プロトコルの技術選択などがある。一方、凹型の意思決定には、司法関係、公共財の資金調達、税率などがある。

「凹型の場合は妥協案を、凸型の場合はコイン投げを選択する」と、ブテリン氏は書いている。

ブテリン氏によると、意思決定が凸型である場合、意思決定プロセスを分散させると「混乱と質の低い妥協」につながるが、凹型である場合は「集合知に頼った方が良い答えが得られる」という。

「このような場合、意思決定に数多くの多様な意見を取り入れるDAOのような仕組みは、非常に理にかなっていると言えるだろう」

DAOは通常、外部からの攻撃や検閲から身を守るために分散化を採用している。その世界の性質上、またプロジェクトによっては遠隔地やオンラインのため、「バックグラウンドチェックや非公式な対面による “身体検査”を行う」ことがより難しい場合がある。

ブテリン氏は、これこそがDAOが必要な理由だと主張し、分散化された世界には「より多くの決定者に意思決定を分散させ、個々の決定者の力を弱め、談合が内部告発されて明らかになる可能性を高める」ことが必要だと主張している。

しかし、DAOにも問題がないわけではない。例えば、ある組織が中心的なリーダーシップの下で運営され、各グループが独立して活動しているような場合、より集中的な構造が必要とされる場合がある。

コアとなるリーダーシップは分散型だが、個々のグループが明確な階層に従うことが必要な場合もあるとし、「意思決定を導く明確な視点」を採用することが必要になるともブテリン氏は言う。

「ある前提のもとに、安定した不変の方法で機能するよう意図されたシステムが、極端で予期せぬ状況の変化に直面したとき、その対応を調整する勇敢なリーダーのようなものが必要になる」

ブテリン氏はさらに詳しく説明し、DAOが「予期せぬ不確実性に対処する」ために、場合によっては「企業のような形態を使う」ことが必要になるとも述べている。

そして、仮想通貨の世界であっても、組織によっては「もっとシンプルで、俊敏性を重視したリーダー主導のガバナンス形態が意味を持つ場合がある」と結論付けている。

「しかし、このことは、企業ではない分散型の形態が全体を安定させなければ、エコシステムが存続できないという事実から目をそらすべきではない」と言う。