7月の20日から21日にかけて予定されていたハードフォークの前夜、我々コインテレグラフはイーサリアムの共同創設者として知られるTaylor Gerring氏に対しインタビューを敢行した。

Gerring氏はイーサリアムの取締役会にも参加しており、現在は国際的な暗号通貨スピーカーとして活躍し、ブロックチェーンコンサルタントも務めている。

 

CT: 何故イーサリアムなのでしょうか。

 

Taylor Gerring (以下TG)氏: イーサリアムという名前はWarcraftというゲームの世界から由来しています。Warcraftの中では、Netherstormと呼ばれるゾーンが存在しその中から関連した”Ethereum”という名前を引用しています。Google トレンドに2007年頃から突然検索ワードとして多く出現するようになりました。当時と比較すると、今日のEthereumというブロックチェーン技術に対する検索ボリュームは容易に一時的なゲームに対する好奇心を超えています。

 

CT: The DAOの事件に対するハードフォークという解決方法についてどうお考えですか。よりセキュアになるのでしょうか。

 

TG: 私個人に関して言えば、ブロックチェーンに対する主な懸念としては”このことが、より多くの観衆の興味を引くことに繋がるのだろうか”という点です。

マーケティング、ブランディング、そしてコミュニティ内の意見が、大半の技術者たちが認める以上に関係してきますし、1日の終わりには関心を集め、そしてブロックチェーンをよりグローバルな関心事へと押し上げるためにもマインドシェアを確実なものにしなければなりません。

ブロックチェーンの採用とスケーリングに関しては、卵が先か、鶏が先か、という問題に少し近いものがありますが、長期的なスケーリングの調査は究極的には我々が到達すべき場所へと連れて行ってくれますから、複数のゴールは並行して導き出すことが可能です。

何故ならイーサリアムのコミュニティは概して冷静に問題に対処しようとしてきましたし、最終的な結果としてはテクノロジーの発展と問題に対処する覚悟、どちらにおいても底堅さを見せてくれるだろうと慎重ながらも楽観的に考えているからです。

 

 

CT: イーサリアムにはどのようにして関わることになったのでしょうか。

 

TG: いくつか大手企業に勤めた後、2012年は休職していました。当時は別のタイプの働き口を探していたのですが、インターネットを通じた投げ銭システムとしてビットコインを再発見することになります。

ラビット・ホールに飛び込むまで時間はかかりませんでしたし、その過程でHive walletの創設者であるWendell Davisに出会うことになります。そのプロジェクトに取り組むにあたり早い段階からDappsと関わることになる一方で、彼はMilanで開催されたDarkwalletのイベントに参加するように私に勧めてきました。

そこで私はAmir Taaki、Peter Todd、Mihai Aisie、などビットコイン業界に身を置いた多くの人々と出会うことになります。そこで話し合った内容は暗号通貨をいかに簡単に利用するかといったものが主なサブジェクトでしたが、究極的には利用可能なプロトコルによって制限されてしまうものでした。ここで初めてBitcoin Magazineに寄稿した何人かのロシア人の少年たちから、多くの問題を解決することが出来るかもしれない新しいアイディアについて耳にすることになったのです。

シカゴに帰った後は、イーサリアムのウェブサイト運営の手伝いを行うためにVitalik Buterinと私とを繋ぐことになるMihai氏と連絡を取り続けていました。

 

CT: イーサリアムやスマートコントラクトに関して: 現実的に見ると初心者向けではないとお考えですか。

 

TG: 所謂スマートコントラクトと呼ばれているものに対する大きな誤解として、その名前が部分的に間違っているという点があります。本当に我々が伝えたいのは、それがブロックチェーン上に存在するプログラムである、ということです。このプログラムはコーディングされていれば何でも実行することが可能ですが、デジタルであるという特性を生かした利点がありますし、障害となる中心点が存在しません。この点でいえば、デジタルアセットから自律アシスタントまで多くのことが可能です。

 

CT: 暗号通貨における有用なアプリケーションとしてマイクロペイメントについてお話しされていますね。シーンにSteemが登場したことについてはその文脈でいうとどのようにお考えでしょうか。

 

TG: まだSteemに関しては詳しく調べていませんが、コンテンツやアクションに対して少額支払いを行うというアイディアは長らく実装が待たれていたものですし、そういったものやAkasha (EthereumとIPFS上に実装されている) などのプロジェクトなどが開発され始めたということは素晴らしいと思います。

適切に真の価値を以て良好なコミュニティにおける動向に対する動機付けが出来るかどうかという問題はまだ残っていますが、もちろん、ユーザーが自身のデータを利用でき、分散型の底堅いテクノロジーを利用できるようなソリューションであればどのようなものでも従来のサービスと相対した時に大きな勝利を収めることが出来るでしょう。

 

CT: イーサリアムの未来については個人的にはどうお考えでしょうか。ビットコインに最終的には取って代わるとお考えですか。

 

TG: 人々は単に価値を交換するということを超えたブロックチェーンの可能性について気づき始めています。

ブロックチェーンの特性はコアのコンポーネントとしてどのパブリックブロックチェーンにもしっかりと残っている一方で、新しいプロジェクトが業界に参入し足場を固めるためのたくさんの機会が存在しています。

ビットコインやイーサリアムを含めたテクノロジーには一切成功する保証がありません。しかし、私は決済や送金といった分野に関しては、ビットコインは不利であると考えています。

もともとビットコインにどっぷりとはまっていた当初は、低コストでほぼ瞬時にマイクロトランザクションが行えるというのは夢のまた夢でした。

その夢を実現するために、長くは続きませんでしたがPaythruというサービスを開発し、まだビットコインアドレスをリリースしていないデジタル企業に対してビットコインを送信できるようなサービスを提供していました。一旦”些細な”改変がされた後、”一つのチェーンが全てを支配する”というブロックチェーンの制限にいくつか気づき始めたのです。