著者 Hisashi Oki dYdX Foundation Japan Lead

早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、キー局のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、大手仮想通貨メディアの編集長を務めた。2020年12月に米国の大手仮想通貨取引所の日本法人の広報責任者に就任。2022年6月より現職。

今後のバリデーターの重要な役割は「代議員」ーーー。

バリデーターといえば、インフラのオペレーションやステーキングのイメージが強く、「代議員」といったような政治的なニュアンスからかけ離れている存在と思う人が多いだろう。筆者もその1人だった。しかし、バリデーターのガバナンスにおける役割の重要性を認識し、啓蒙・知識の底上げをしていく動きが世界で始まっている。

IVS京都が始まる前の6月26日月曜日、都内で「Japanese Validator Ecosystem」というワークショップが開催された。主催者は、Daniel Hwang。議題は、バリデーターの技術的な要件ではなく、バリデーターの政治的な責任に関するものだった。

どういうことか?バリデーターの役割は、PoSにおいてブロックチェーンにネイティブトークンをステークし、ブロックを生成・承認することと定義されることがほとんどだ。バリデーターには、ステーキング総額に応じた報酬が支払われる。上記において、バリデーターには①ネットワークのインフラのセキュリティを高めること ②トークンを委任してくれた人に対する報酬の支払いをすること があげられる。

Danielの主張は、第3の役割として「代議員」の重要性を説くものだ。上記2つに加えて、バリデーターには「有権者」であるトークン保有者に対する投票の説明責任とコアチームの行動チェックが大きな責務としてある。「アクティビストとしてのバリデーターの台頭といったブログ記事も出ているほか、ガバナンスにおけるバリデーターの役割の重要性を強調する動きは世界的に広まっている。

例えば、Validator Commonsは、以下の宣言が書かれている。

  • ガバナンスは重要。
  • Proof-of-Stake(PoS)のガバナンスでは、トークン保有者がトークンを委任し、バリデーターがそれをステーキングし、プロトコルをサポートする Foundationやコアチームが参加する、3つの主要な組織が必要。
  • トークン保有者は、プロトコルの基本的な権力の源であり、その権力をバリデーターに託す。
  • 権力には責任が伴う。バリデーターは、委任者とネットワーク全体に対して責任を負っている。
  • Foundationとコアチームは、中央集権的な組織であり非民主的な行政権力を使う。
  • ガバナンスに参加することで、バリデーターはその権力をチェックする。
  • トークン保有者には知る権利があります。
  • バリデーターは、トークン保有者、コアチーム、そして自分自身に対して、自分たちの価値観を明言するべき。
  • 価値観は重要。

上記の観点は翻って考えてみると、トークン保有者が、ステーキングの経済的なインセンティブ以外に『政治的なポジショニング』によってバリデーターを選ぶ時代の到来を告げるものかもしれない。

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