政府で規制緩和を議論する国家戦略特区諮問会議は17日の会合で、電子マネーによる給与支払いについて議論した。産経新聞の報道によれば、来年度にも電子マネーによる給与支払いをスタートする方向で調整していくという。

現行法では電子マネーによる給与支払いは認められていない。政府が進める新制度の導入で、プリペイドカードやスマートフォンの決済アプリなどに給与を入金できるようになるという。キャッシュレス社会推進や、銀行口座の開設が難しい外国人労働者の受け入れ整備が狙いだ。

国家戦略特区諮問会議 資料より

今回のケースでは想定されていないが、仮想通貨による給与支払いも将来的には進むことになるかもしれない。ステーブルコインといった法定通貨とペッグした仮想通貨であれば、価格変動のリスクもなく、給与の支払い方法に採用される可能性もあるだろう。現在のステーブルコインの法的位置づけは資金決済法の「仮想通貨」には当たらない。電子マネーということになれば、ステーブルコインによる給与支払いはあり得るだろう。

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仮想通貨の給与支払いの現状は?

既に海外では給与を仮想通貨で支払う動きも出ている。

仮想通貨取引所大手のバイナンスは、従業員の9割がバイナンスの独自トークン「BNB」での給与支払いを受け付けている。

今年3月時点の報道によれば、米ピットペイの従業員の52%が全額ビットコインによる給与支払いを選択しているという。また米大手取引所のコインベースでも従業員の4割が、給与の一部をビットコインで受け取っている。

日本ではGMOインターネットが今年2月から給与の手取り支給額の一部をビットコインで受け取れる制度を導入済だ。これは社員が申請すれば、1~10万円の範囲で申込申請額分を給与から天引きする形で、同金額相当をビットコインの購入に充てる。購入したビットコインは給与支払日にGMOコインの口座に支払われる形だ。

またGMOのスキームとは別の形で、日本で仮想通貨で給与を支払うことも可能だ。

労働基準法では、給与の支払いについて「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定に期日を定めて支払わなければならない」としている。この場合の通貨とは、法定通貨である日本円だ。

ただ、労働組合との間で労働協約を結ぶ形で、給与の一部を仮想通貨で支払うこともできる。国税庁が11月に出した「仮想通貨FAQ」の中でも、仮想通貨による給与支払のケースでの源泉徴収の方法について触れている。