仮想通貨取引所ディーカレットが事務局を務め、大手銀行や小売・運輸などの大手企業が参加した「デジタル通貨勉強会」が19日に最終報告書を発表した

今回発表された「日本の決済インフラのイノベーションとデジタル通貨の可能性」と題した最終報告書では、二層構造型のデジタル通貨を提唱している。

出典:デジタル通貨勉強会最終報告書

これはデジタル通貨を「価値情報を書き込む共通領域(下層部分)」と、様々なビジネスニーズに応じて付加機能をスマートコントラクトで付加する領域(上層部分)の二層構造とする考え方だ。これによりデジタルによる決済手段確立と、様々なビジネスニーズへの対応とを両立させようとするものだ。

勉強会の事務局を務めた仮想通貨取引所ディーカレットの時田一広社長は19日の記者発表会で、二層構造モデルという方向性を示したことで「日本のデジタル化の推進、成長戦略に貢献できるようにしたい」と語った。さらに今後実証フェーズに入り、デジタル通貨実現を加速させていき、「民間主導のデジタル通貨モデルとして世界に発信していきたい」と強調した。

既に一部報道されているように、今回のデジタル通貨勉強会は、これを母体として「デジタル通貨フォーラム」へと発展させる方針だ。フォーラムのもとでは民間デジタル通貨に関する概念実証を進め、具体的なユースケース検討をさらに深化させていくという。

デジタル通貨勉強会は、官民を横断したメンバーが参加しており、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガバンクやインターネットイニシアティブ(IIJ)、セブン銀行、NTTグループやKDDI、東日本旅客鉄道(JR東日本)などが参加していた。新たに発足するフォーラムでは野村ホールディングス、東京海上日動火災保険、大同生命保険、関西電力なども加わり、メンバーは30社を超える大所帯となる。

マネーのデジタル化は「待ったなしの課題」

今回のデジタル通貨勉強会で座長を務めた山岡浩巳氏(元日本銀行決済機構局長)は、「世界的に政策アジェンダが大きく変化し、デジタル化する世界への対応が最重要課題としてクローズアップされている」と現状を総括する。

こうした中で「日本においてもデジタル化やDX(デジタルトランフォーメーション)への対応は待ったなしである」と強調。デジタル通貨を日本のDXに活かしていくためには「支払決済だけでは十分ではない」と述べ、より包括的なエコシステムの構築が不可欠だとも指摘した。

今後は新しく設立されるフォーラムのもとで、「デジタル通貨を1つのインフラとして有効に活用するエコシステム構築に向け、議論を進めていきたい」と話した。