今年、新規の仮想通貨業者が1年以上登録されていない状況の中で、2018年1月の仮想通貨流出事件後初めて金融庁から登録されたディーカレット。コインテレグラフ・ジャパンは年末年始企画の一環で、時田一広社長にインタビューを実施。コインテレグラフの取材に対し、2020年は「新しい時代へ突入し、仮想通貨業界の転換期になる」と答えた。

特に時田社長が注目するポイントは「デジタル金融の本格化」「ステーブルコイン」「STO」だ。

時田社長は「来年はデジタル人民元が出てきたり、リブラを採用する国が出てくることも予想されるだろう。デジタル通貨元年と言える年になるのではないか」と予想した。

2019年の振り返り

2019年はどんな1年だったかとの問いに、

「我々が仮想通貨交換業者として登録されたことが1番のニュースであり一つのマイルストーンになったのではないか。それまでみなし業者が登録したことはあったが、新規の事業者が1年以上登録されておらず、2018年1月の仮想通貨流出事件後初だった。新しいステージに変わったと言えるだろう。」

と答えた。

ディーカレットは今年電子マネーと仮想通貨との連携にも取り組んだ。これについて

「仮想通貨を特別なものと捉えないように、リアルな生活によっていくことをしていかないと仮想通貨が一般的なものにならないだろうと考えていた。仮想通貨を決済に使うのは敷居が高い。仮想通貨を資産として持っている人がいつでも使える状態を作るために電子マネーチャージを始めた」

と語り、今後既存の金融資産や金融サービスとの連携を増やしていきたいと抱負を語った。

一方で、業界全体の振り返りとしては「混沌とした一年だった」と総括した。金融活動作業部会(FATF)の審査も日本の仮想通貨業界に対してあり、「マネロンへの対策が強く出た一年だったのは確かだ」という時田社長。「規制の中でガイドラインの引き上げがあったり、仮想通貨交換業がどういうところに位置するかを模索する一年だった。我々も登録するにあたり、どこにハードルがあるのか、どこの高さなのかが見極めにくかった」と話した。

来年の注目はBTC半減期とイーサリアムのアップデート

2020年の国内外の注目ポイントとして挙げたのは米国の大統領選、中国のデジタル人民元の動きなどに加え、5月に予定されるビットコインの半減期とイーサリアムのアップデートだ。

「イーサは無事にアップデートできるとプルーフ・オブ・ステーク(PoS)になる。そうなると需要がイーサに流れる可能性も考えられる。また、ステーキングが出来るようになることで、仮想通貨を保有していることで実質利回りが出る商品に変わる。トレーディングの急速なボラティリティを狙うトレーディングから、形が変わってくるだろう」

国内で注目するのは4月施行予定の改正金商法だ。

「規制が厳しくなる方向にある。これまでは問題が起きたりしてもガイドラインの引き上げで対応していた。

法律の変更はガイドラインの変更に比べて見直しのハードルが大幅に高くなる。規制が厳しくなりすぎると事業の選択が狭まり収益性に大きく影響するため、当社も含めた既存業者は事業継続が厳しくなる可能性がある。

事業者の中での淘汰が進む可能性もあるだろう。」

時田社長はこうした規制の変化が業界に影響を与えることを危惧する。

「単なる競争力や資金力の問題ではない。市場そのものが冷えすぎないようになってほしい。最悪の状況は業者も含めてみんなが退場していくという状況だ。そうならないように頑張っていかなければいけない」

Decurret時田社長

来年の予想レンジは

来年の予想レンジについては無回答としたが、「法改正で霧が晴れてくるだろう」とコメント。さらに米国で資産運用会社の資金が仮想通貨に流入し、需要が大きくなるほか、ETFの解禁にも注目。米大統領選などのマクロなイベントなど材料には事欠かない年になるだろうと予想した。

そのため、レンジは広く動くだろうと予想した。

2020年に注目する仮想通貨は

2020年に注目する仮想通貨については「特定の銘柄はない」という時田社長だが、「PoS」の銘柄がどれだけ増えかは注目だという。最近では分散型アプリ(DApps)などに注目が集まっている。時田社長はこの流れを「実需が伴ってきている」と評価。ここにステーキングが入ってくることで利回りも見込め、成熟した市場になるとみる。

時田社長は来年以降、特定の場所や空間で仮想通貨やトークンが使われることがより頻繁になってくると話す。例えばゲームのトークンやポイント、地域通貨がリアルなマネーと混ざって使われるようになることが起きるという。

仮想通貨以外の注目ポイントとしては「分散型ID(DID、Decentralized Identities」をあげた。

「DIDはブロックチェーンととても相性がいい。IDが横断的につながっていくとマイナンバーとの連携も考えられる。各サービス業者で乱立しているIDを横断的に使えるようになれば業者ごとに必要な本人確認を効率的に行える仕組みが出来る。注意点としては、プライバシーの保護とセットだ」と強調する。「そのために公的機関も巻き込んだ取り組みが必要になる」

来年はステーブルコインが重要に

リブラや中国のデジタル人民元の動き等から、来年以降は仮想通貨以外での大きな流れが出てくると指南。「担保と連動したトークン、つまりはステーブルコインの動きが活発になる」と予想する。

時田社長は「現金をキャッシュレスにしていく電子マネーの領域と仮想通貨・デジタル通貨の領域は棲み分けがされる」と指南する。「キャッシュレスは既に多くの電子マネーが存在し、生活に使われている。増加を続けているため、しばらくは乱立することから、異なるお金を使わざる得ないだろう」という。

デジタル通貨はその領域ではなく、このような電子マネーをつなぐ役割を担える可能性がある。

デジタル通貨の需要は企業にある

「Maasのように一つの決済で複数の業者のサービスを利用することが可能になると、裏は業者間の決済が膨大になる。

今までのように月締めでバッチ処理するようなモデルでは、MaaSのような先進的なサービスを活用しきれない。

リアルタイムかつ少額の決済を企業間で処理出来るようにならなければ真のデジタル化とは言えない。

デジタル通貨が存在しないので実現していないが、デジタル通貨が発行・流通すればすぐにでも実現できる世界だ」