分散型仮想通貨ミキサー「トルネードキャッシュ」を狙った制裁は、サービスの足かせにはなったものの、その利用を完全に断ち切ることはできなかったようだ。

昨年8月8日、米財務省の外国資産管理局(OFAC)は、仮想通貨ミキサーが犯罪収益のマネーロンダリングに関与しているとして制裁を発表した

ブロックチェーン分析企業チェイナリシスが1月9日に発表したレポートによると、制裁は一定の効果を発揮し、制裁発効後の30日間でミキサーへの流入総額は68%減少したという。

しかしチェイナリシスはまた、トルネードキャッシュがスマートコントラクトベースの分散型プラットフォームであるため、「個人や組織は、集中型サービスのように簡単にトルネードキャッシュのプラグを抜くことはできない」と強調している。

チェイナリシスは、ダークネットマーケットプレイス「Hydra」を対照的な例に挙げ、ドイツの警察が制裁の結果、サーバーを押収したため、仮想通貨通貨の流入がゼロになったことを紹介した。

チェイナリシスは、トルネードキャッシュに適用された制裁では「フロントエンドのウェブサイトがダウンしたが、そのスマートコントラクトは実行でき、つまり誰でも技術的にいつでも使用できる」と説明している。「このことは、分散型サービスに対する制裁が、利用を完全に断つというよりも、サービスの利用を阻害するツールとして機能することを示唆している」と指摘する。

チェイナリシスのレポートによれば、トルネードキャッシュの不正使用は主に仮想通貨のハッキングや詐欺に関連しており、全流入額のおおよそ34%がそうしたものに起因しているという

制裁はミキサーを完全に止めることはできなかったものの、そのプラットフォームの利用を控えるよう効果的に働き、制裁の翌月には総流入額が68%も減少したという。制裁前の30日間は1日あたり2500万ドル近い資金が流入していたが、制裁後は1日あたり500万ドル以下に減少していることが図表から読み取れる。

Before and after inflows for sanctioned platforms. Source: Chainalysis

「トルネードキャッシュへの制裁後の30日間に資金流入が68%減少したことから、こうした措置は強力だったようだ。トルネードキャッシュがミキサーであり、ミキサーは資金が少なければ少ないほどマネーロンダリングの効果が低くなることを考えると、これは特に重要なことだ」とチェイナリシスは指摘する。