起業家デービッド・ベイリー氏が設立したヘッジファンド「210kキャピタル」は、トランプ大統領の仮想通貨支持姿勢への転換を後押ししたのち、デジタル資産保有によって巨額の利益を上げたと報じられている。これは、好意的な規制がデジタル資産分野に及ぼす可能性を示す例とされている。
ブルームバーグによれば、このファンドは6月までの12か月間で純利益640%を記録した。主な原動力は、ビットコイン(BTC)をバランスシートに組み入れた上場企業への投資だったという。
210kキャピタルは非公開企業であり財務情報の開示義務はないが、ブルームバーグは匿名情報筋から数値を入手。この情報筋によれば、同ファンドの資産は米国、英国、カナダ、オーストラリア、スウェーデンなどでのビットコイン財務投資によって築かれたという。
親会社のUTXOマネジメントによると、210kキャピタルは複数のビットコイン関連企業に出資しており、その例としてストラテジー(MSTR)、メタプラネット(3350)、ムーン(1723)、スマーター・ウェブ・カンパニー(SWC)、ブロックチェーングループ(ALTBG)、リキッド・テクノロジーズ(LQWD)、H100(H100)、マタドール(MATA)、DV8(DV8)が挙げられている。
マネージング・パートナーのタイラー・エバンス氏はブルームバーグに対し、同社が現在、いわゆる「ビットコインプロキシ」(ビットコイン関連事業を行う企業)への追加30件の投資を検討中であると語った。
ビットコイン・マガジンおよびBTC Inc.の創業者で、連続起業家でもあるベイリー氏は、トランプ氏の大統領選キャンペーンにおける主要な仮想通貨アドバイザーを務めた。ブルームバーグは、トランプ氏をビットコイン支持に転じさせた中心人物と位置づけている。
210kキャピタルに関する公的情報は限られているが、ベイリー氏の影響力はデジタル資産業界全体に広がっている。コインテレグラフは5月、彼の投資会社「ナカモト・ホールディングス」が3億ドルを調達し、株式公開の可能性を模索していると報じた。
その後、ナカモト・ホールディングスは医療企業KindlyMDとの合併に伴い、さらに5,150万ドルを調達。ビットコイン財務戦略の拡大を目指している。
ストラテジーの後を追って:ビットコイン財務企業が勢いを増す
マイケル・セイラー氏率いるストラテジー(旧マイクロストラテジー)が2020年8月にビットコインを財務資産として導入して以来、150社以上がこれに追随したとされている。少なくとも47の未上場企業も、自社のバランスシート上にビットコインを保有していると開示している。
この戦略は2025年に入り成果を上げており、ビットコインは最近12万3,000ドルを超える高値を記録した。しかし、長期的な見通しについては依然として意見が分かれている。
ベンチャーキャピタルのブリード社は、ビットコイン財務企業の成功は、純資産価値(NAV)に対する時価総額の倍率(MNAV)が高い水準で維持されることに強く依存していると警告している。ブリード社にとって、MNAVとは企業のデジタル資産価値に対する時価総額の比率を意味する。
たとえば、ビットコイン価格が持続的に下落すれば、MNAVも下がり、ビットコイン購入のための借入資金調達能力も低下するおそれがある。
一方、グラスノードのアナリストであるジェームズ・チェック氏は、明確なニッチや長期戦略を持たずにビットコインに参入した企業は、今後定着が難しくなるとの見解を示す。
「すでに『実力を見せろ』フェーズに入りつつある。明確なニッチがない企業が市場の評価を維持し、事業を軌道に乗せるのは今後ますます難しくなるだろう」とチェック氏はXに投稿した。
とはいえ、ビットコインの普及は業界の転換点と重なって進行している。先週、共和党が多数を占める米下院は、ステーブルコイン、マーケット構造、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の禁止に関する3つの仮想通貨関連法案を可決した。