英ロンドンに拠点を置く仮想通貨決済企業のボトルペイは13日、12月31日で事業を停止すると発表した。来年1月に施行されるEUのマネーロンダリング規制のためだと説明している。
EUの第5次マローロンダリング対策指令(5AMLD)が来年1月10日から施行される。5AMLDでは、仮想通貨取引所やウォレット事業者も規制対象となる。仮想通貨アドレスと所有者本人の情報を紐づける必要があり、その情報を必要に応じて金融当局に提供しなければならない。
ボトルペイはビットコイン決済を手掛けており、保管用のウォレットを提供している。そのため5AMLDの規制対象となる。
同社は、発表の中でEUの新規制に強く反対する姿勢を示している。
「ユーザーから収集しなくてはならない追加の個人情報の種類と数は、現在のユーザーエクスペリエンスを大幅に、そして非常にネガティブに変更してしまうため、コミュニティにこれを強制することはできない」
その上で、ユーザーの利益を保護するため、事業停止という「苦渋の決断を下した」と説明している。
「サービスプロバイダーとしての誠実さを維持し、チームや投資家、そしてユーザーの利益を保護するために、この新しい規制の対象とならず、ボトルペイを完全に閉鎖するという苦渋の決断を下した」
ボトルペイはユーザーに対して、今後2週間以内に資金を引き出すように求めている。31日で引き出しはできなくなる。閉鎖後に残ったウォレットの資金は人権団体に寄付するという。
ボトルペイは今年6月にスタートしたビットコイン決済サービスだ。ブラウザの拡張機能として、ビットコイン送金を組み込むことができる。The Blockによれば、今年9月に200万ドルの資金調達に成功していた。
今回のボトルペイの決断は、ほかのウォレット事業者にも影響を与えるかもしれない。
仮想通貨分析企業コインシェアーズの最高戦略責任者(CSO)であるメルテム・デミローズ氏は、EUの新規制によって「より多くの企業が閉鎖という選択に迫られるかもしれない」とコメントしている。5AMLDで仮想通貨ビジネスの不確実性やリスクが増してしまうとみている。