仮想通貨(暗号資産)業界全体は3年前と大きく異なっている。2017年は規制が整備されておらず、天文学的な価格上昇と多くの資金調達が行われた。現在はICOなど2017年にあった要素はほぼ消滅した。一方で、仮想通貨取引所クラーケンのレポートで指摘されるように、デリバティブ取引が急成長を遂げている。

「クリプト・ファシリティーズ、ビットメックス、デリビット、ビットVC(現フォビDM)、OKCoin(現OKEx)のようなパイオニアに始まり、2017年にはCMEやCBOEのような伝統的機関が参入し、仮想通貨市場でのデリバティブ取引が定着した。」とクラーケンの11月のレポートで述べている。

レポートでは「デリバティブは現在、スポット取引量の少なくとも4.6倍の規模となっており、この傾向は今後も続くだろう」としている。ビットコイン(BTC)のスポット取引とは、現物のBTCのことで、取引所以外の場所でも譲渡可能な市場レートで売買される。一方でデリバティブは取引所で取引される商品だ。これらは基本的にビットコインの将来の価格に賭けている。

仮想通貨のスポット取引とデリバティブ取引量の推移

(出典:クラーケン)

仮想通貨デリバティブの需要は、近年盛んになってきている。こうしたトレンドは、ビットメックスといったプラットフォームの成長や、Bybitのような新しいプレーヤーが現れ、バイナンスのような既存の取引所が独自のデリバティブ商品を追加した

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は2017年にビットコイン先物を追加し、その後2020年にビットコインオプション取引を追加した。シカゴオプション取引所(CBOE)も2017年にBTC先物を始めたが、2019年に終了している。

「デリバティブ取引量の伸びは、スポット取引量の伸びとは対照的である」とクラーケンのレポートは指摘している。スポットの仮想通貨取引は、2017年末の強気相場の絶頂期から減少している一方で、デリバティブ取引は増加している。

「2017年第2四半期から2018年第1四半期にかけて、スポット取引量は、約580億ドルの安値から約5兆7000億ドルの高値へと急上昇し、2年後には1兆400億ドルの安値へと大幅に下落した。それ以来、デリバティブは完全にスポットに取って代わって市場を支配しているが、スポットの取引量は完全に回復することができなかった。デリバティブの想定取引量は、2017年第2四半期には60億ドル以下だったが、2020年第3四半期には1兆7000億ドルを超えるまでに爆発的に増加した。」

成長の根拠については、レバレッジがその一端を担っているとクラーケンは考えている。デリバティブのトレーダーは、基本的に口座に保有している金額に基づいて、取引のために多額の資金を借りることができる。

デリバティブは2017年からブームになっているが、規制が整いつつあり、ほとんどの仮想通貨デリバティブプラットフォームは近年、米国の顧客を禁止している。最近では、米国当局が規制に違反しているとしてビットメックスCEOらを訴追している。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン