仮想通貨市場に広がる債務問題の連鎖が明らかになっている。

シンガポールの仮想通貨ヘッジファンドのスリーアローズ・キャピタル(3AC)が英領バージン諸島の裁判所から清算を命じられたことが報じられた。英メディアのスカイニュースが関係者の話として報じた。

さらにレンディングプラットフォーム「セルシウス」は、今年流動性問題に直面する前に、資産対株式比率が19対1と非常に危険な状態にあったことが明らかになっている。レンディング企業でマーケットメーカーのジェネシス・トレーディングも3AC関連で「数億ドル」の損失を抱えたとも報じられている。ブロックファイでも3ACへの10億ドルの融資を清算した詳細も明らかになっている。

セルシウスが抱えていたリスク

6月29日にウォールストリートジャーナル(WSJ)の報道によると、セルシウスは2021年にかけて仮想通貨市場がその価値を膨らせたため、非常に細かくリスクの高いマージンで運用されていたという。

WSJが入手した前回の増資前に作成された資料によると、銀行に代わるリスクの少ない金融機関であることを謳っていたセルシウスは、昨年半ばには資産対株式比率が190億ドル:10億ドルとなっており、同時に担保不足の融資を多数行っていたことがわかった。

資産対株式比率は、株主による資金と企業の資産の割合を指す。この比率は、一般的に、企業がその事業を賄うために活用されているどのくらいの債務があるかを表す。高い比率であることはその会社が事業を継続するためににかなりの融資と債務を利用していることを示すものだ。

資本対株式比率はその事業体が保有する資産や業界ごとに異なるが、セルシウスの19対1という高い比率は、同社が仮想通貨、レバレッジ、融資にさらされるため、非常に高いリスクと見られている。

シカゴ大学ビジネススクールの経済学者エリック・ブディッシュ氏は、セルシウスの運営を2008年の住宅バブルに至るまでの金融会社の運営になぞらえ、「リスクの高い構造になっていた」と指摘する。

「2006年に住宅ローンのポートフォリオが分散化されたのと同じように、分散化されていることに驚いた。かつて住宅だったが、今回は仮想通貨となった」

また、ボイジャー・デジタルが過去数カ月間にセルシウスに1億7,400万ドル以上を送金したという報道も浮上した。この取引は今週、分析プラットフォームのNansenによって確認されたが、資金調達の内容や融資であるかどうかは不明だ。

数億ドルの損失に直面したジェネシス

デジタルカレンシーグループ(DCG)傘下のCoin Deskが報じた情報によると、DCG傘下のマーケットメーカー兼レンディング企業であるジェネシス・トレーディングが数億ドルの損失を抱えている。

この損失は、ジェネシスの3ACと仮想通貨レンディング企業バベル・ファイナンスへのエクスポージャーに関連したものだという。ジェネシスは損失についてまだ部分的な返済を受ける望みがあり、他の損失はヘッジによって相殺されているとしている。ジェネシスのマイケル・モロCEOは、同社が「私たちへのマージンコールを満たすことができなかった大口のカウンターパーティー」で損失を軽減していると述べたという。

「私たちは担保を売却し、下げ幅をヘッジし、先へと進んだ。私たちのビジネスは通常通り運営されており、顧客のニーズにもすべて応えている」

ブロックファイの問題

ヘッジファンドのモルガン・クリーク・デジタルから流出した投資家向けの電話では、6月16日にブロックファイでの大口顧客の清算が3ACであることが確認されている。

モルガン・クリークのマネージング・パートナーであるマーク・ユスコ氏と共同設立者のアンソニー・ポンプリアーノ氏は、電話の中でブロックファイが10億ドル相当のローンで30%の担保超過であることを同社に「報告」したという。

ポンプリアーノ氏はさらに、13億3000万ドルの担保のうちおよそ3分の2はビットコイン(BTC)であり、3ACが返済不能になった時点で直ちに清算されたと述べている。残りの3分の1は、約4億ドル相当のグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)株であったという。

グレースケールのGBTCは、BTCのスポット価値にペッグするように設計されているが、しばしばプレミアムまたはディスカウントで取引されている。

ポンプリアーノ氏によると、ブロックファイはGBTCのディスカウントが34%程度まで下がり、ポジションを清算する上で問題に直面したという。

FTXがブロックファイに対して2億5000万ドルのリボルビング・クレジット枠を発行した後、ブロックファイの株式を購入するために交渉中だと報じられているが、その一方でモルガン・クリークもブロックファイの51%を購入するために2億5000万ドルを調達しようとしていることについても電話の中で触れられている。このような金額であれば、ブロックファイの評価額は5億ドルに過ぎず、2021年6月に報告された50億ドルを大きく下回ることになってしまう。