コインチェックは18日、ノンファンジブルトークン(NFT)を取引するマーケットプレイス「Coincheck NFT」を3月24日から開始すると発表した

NFTとは、ブロックチェーン基盤にした固有の価値を証明することが可能なトークンであり、ブロックチェーンゲームのアイテムやデジタルコレクティブズ(収集品)などに使用されている。

サービス開始時点では、2つのゲームタイトルで利用できるNFTをサポート。コインチェックが取り扱う13種類の仮想通貨で交換することができるようにする。

コインチェックNFT(ベータ版)は、オフチェーンのマーケットプレイスになる。一般的なNFTマーケットプレイスは「オンチェーン」であるため、イーサリアムの手数料(ガス代)高騰の問題や、自身でウォレット管理をする必要などがあった。オフチェーンでは、コインチェックのユーザーであれば手数料無料で利用でき、NFT管理・保管もコインチェックのシステム内で完結することになる。

連携タイトルについては、今後詳細を発表する予定だが、当初の2タイトルから順次追加する予定だという。

セカンドリーとプライマリーの両方を視野に

コインテレグラフでは、コインチェック執行役員のNFTマーケットプレイス担当の天羽健介氏に今回の取り組みの狙いについて聞いた。

コインチェックの豊富なユーザーベースがNFTにアクセスできるようになることで、実質的に世界最大規模のNFTマーケットプレイスになると、天羽氏は強調している。コインチェックは口座開設数は100万人近くある一方、海外の大手NFTマーケットプレイスのOpen Seaでも3万人程度という。

このオフチェーンのマーケットプレイスでは、コインチェックに預けてある仮想通貨を使い、NFTの取引を行うことができる。基本的にNFTマーケットプレイスではユーザーが出品して、ほかのユーザーが購入する2次流通市場(セカンダリー市場)になる。天羽氏は「デジタルアイテムのメルカリ」を目指すと意気込む。

しかし、それにとどまることなく、将来的にはプライマリーでのNFT販売も視野に入れている。

天羽氏は、NFTを発行するディベロッパーサイドにとってもコインチェックのマーケットプレイスが非常に魅力的なものになるだろうと話す。

「コインチェックでは預かり資産が2000億円ほどある。新しいNFTマーケットプレイスでは、メタマスクなどにイーサリアムを送る必要がなく、すぐにNFTを取引できるようになる。そして発行元にとっても、すぐにユーザーにリーチできるようになることは大きなメリットになるだろう」

実際、コインチェックでは今年2月、ブロックチェーンゲーム「サンドボックス」の仮想空間上の土地になるNFT「LAND」を大量に購入している。コインチェックでは、このLANDの一部をNFTマーケットプレイスを通じて、ユーザーに売却する計画だ。発行元が直接売却する形ではないが、間にコインチェックを挟む形でユーザーに販売する形になるようだ。

NFTビジネスで競合と差別化

天羽氏は、既存の証券会社がセキュリティトークンに力を入れている中、暗号資産交換業者として新たな差別化を図る領域がNFTになると考えている。

コインチェックのユーザーベースや預かり資産の大きさを活かし、NFTでのスピーディなビジネス展開でほかの取引所との差別化を進める狙いだ。

コインチェックは今年2月にオンチェーンのマーケットプレイスである「Miime(ミーム)」も買収している。今回立ち上げたオフチェーンのマーケットプレイスとの両輪でNFTを展開していく考えだ。

国内外のディベロッパーやIP所有者にとっても2つのマーケットプレイスがあることが大きな武器になるとみている。

「グローバルに展開するディベロッパーがコインチェックのNFTマーケットプレイスを通じて日本のユーザーにアプローチする展開と、逆に日本のIP使ったNFTをMiimeを通じてグローバル展開するのもあり得る」

日本にとって大きなビジネスチャンス

業界団体の日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)では自主規制ガイドンラインを作るNFT部会が組織されるなど、NFTのビジネス活用に向けた動きも出ている。コインチェックは、このNFT部会でも中心的な役割を担っており、業界全体としてもNFT整備を進めている。

「様々な事業者がNFTビジネスに参入して欲しい。それによってユーザーにとってはコストや競争のメリットも出てくるはずだ」と、天羽氏は話す。日本の仮想通貨業界が、バイナンスやコインベースといった世界的大手企業と戦い、「勝算がある」フィールドがNFT分野だと考えている。

豊富なIP(知的財産権)を持つコンテンツ大国の日本にとって、NFTビジネスとの親和性は高いと、天羽氏は指摘する。アニメやゲーム、スポーツなど、日本のIPを活用したNFTビジネスをコインチェックとしても模索していく考えだ。「現在はアーリーアダプターが中心だが、誰もが知っているIPが入れば、一気にNFTへ注目が高まるだろう」と天羽氏は語る

 

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