米仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)が、世界で最も著名な株価指数の1つであるS&P500に加わった。これは2020年代を通して米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)との法廷闘争を繰り広げてきた同社にとって、大きな節目となる出来事である。

しかし、この達成はコインベース単体にとどまらない。

「これはコインベースの功績であると同時に、仮想通貨およびブロックチェーン業界全体にとっても画期的な出来事だ」と、ビットスペースの最高収益責任者メリエム・ハビビ氏はコインテレグラフに語った。コインベースのS&P500採用は、米国最大の仮想通貨取引所という地位を持つ同社だけでなく、「仮想通貨という資産クラス全体の正統性を確立するものだ」と述べた。

ARKインベスト・ヨーロッパの事業開発責任者ジェイソン・ケナード氏も「S&P500という世界の象徴的なベンチマーク指数において、初めて仮想通貨ネイティブ企業が厳格な収益性・流動性・時価総額の要件を満たした」と語り、「これは機関投資家に対して、仮想通貨インフラが金融エコシステムの中で信用ある制度的な一部へと成熟したことを示す強いシグナルとなる」と付け加えた。

インタラクティブ・ブローカーズのチーフ・ストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「S&P500の指数連動型ファンドを購入する保守的な投資家であっても、COIN(コインベース株)を通じて仮想通貨エクスポージャーを持つことになる」と述べ、今後コインベースにはパッシブ投資による数十億ドル規模の資金流入が見込まれる可能性があると語った。

一方で、コインベースは同週、数万件規模の個人情報流出を報告しており、ユーザーへの補償などで最大4億ドルの費用が発生する可能性がある。2021年のレジャー社の情報漏洩と同様に、ユーザーが強盗や誘拐といった危険にも晒されかねない状況だ。

ハビビ氏によれば、S&P500への採用は「ブラックロックやバンガード、ステート・ストリートなどが運用するインデックスファンドがコインベースに資本を配分せざるを得なくなる」ことを意味し、「仮想通貨ネイティブ企業に対するパッシブ投資が一気に流入する」ことにつながる。

100億ドル規模の資金流入も?

では、コインベースにどの程度の資金が流入するのか。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスによると、2024年時点でS&P500に連動する運用資産は約10兆ドルに達している

ハビビ氏は、コインベースの指数ウェイトがわずか0.1%であったとしても、「積極的に仮想通貨に投資していない投資家からも100億ドルの資金流入が期待できる」と分析する。

この出来事は、規制遵守、事業運営の成熟性、そして長期的ビジョンを備えた仮想通貨企業が、株式市場から正当な評価を受ける時代に突入したことを示している。

「この動きは、サークル、チェイナリシス、ファイアブロックスといった企業の上場や、将来的な指数入りへの道を開き、機関投資家向けの仮想通貨金融企業の新たな波を引き起こす可能性がある」とハビビ氏は付け加えた。

仮想通貨と伝統金融の融合は進行中か?

仮想通貨と伝統的金融の融合をめぐっては意見が分かれる。サンタクララ大学のファイナンス准教授ソヨン・キム氏は「仮想通貨は経済全体の中では依然として小規模であり、今後の融合は、ブロックチェーンプロトコルやトークン化の採用拡大を通じた形になるだろう」と慎重な姿勢を示した。

一方、オッペンハイマーのオーウェン・ラウ氏は「ロビンフッドとビットスタンプ、クラーケンとニンジャトレーダー、リップルとヒドゥン・ロードといった例はすでに融合が進んでいることを示している」と述べた。

ケナード氏も「完全な融合には至っていないが、分離の段階はすでに過ぎた」とし、最近のギャラクシー・デジタルのナスダック上場や、複数ETFにおけるコインベースのカストディアンとしての役割を例に挙げた。「規制の明確化はまだ進行中だが、機関投資家向けのレールは急速に整備されている」と語った。

JPモルガンのOnyxやナスダックのカストディインフラ、ペイパルによるステーブルコイン「PYUSD」など、既存の大手金融機関もブロックチェーン技術の採用を進めており、これもまた「競合」から「共進化」への転換を象徴しているとハビビ氏は分析する。

次にS&P500入りする仮想通貨企業は?

コインベースのS&P500入りを受けて、他の仮想通貨企業が続くかという問いに対しては懐疑的な見方が多い。

インディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネスのラッセル・ローズ氏は、「S&P500では同業他社が交代で採用される傾向があり、今回はディスカバー・ファイナンシャルの代わりにCOINが加わった」と指摘した。

ストラテジー(MSTR)は時価総額では基準を満たしているものの、収益面で要件を満たしておらず、「現時点では該当しない」とキム氏は述べた。また、ジェミニは非上場のままで、直近の資金調達評価額を踏まえても「遠い存在」と評された。

今後、他のS&P500構成企業がブロックチェーン/仮想通貨サービスを採用するほうが、仮想通貨企業そのものの指数入りよりも早いだろうという見方も多い。とはいえ、今回のコインベースの採用は、仮想通貨業界全体にとって大きな転換点となったことは間違いない。

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