ステーブルコイン発行企業サークルと、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するインターコンチネンタル取引所(ICE)は、ICEのオペレーションにステーブルコインを統合する可能性について協業を開始した。
両社は3月27日に発表した覚書(MoU)にもとづき、サークルの米ドル連動型ステーブルコインUSDCおよび利回り付きトークンUSYCを、ICEのデリバティブ取引所、清算機関、データサービスを含む各種システムへ統合する可能性を探っていく。
ニューヨーク証券取引所のリン・マーティン社長は、次のようにコメントしている。
「デジタル通貨が市場参加者にとって米ドルと同等に受け入れられる存在として信頼を獲得していく中で、サークルのステーブルコインやトークン化された通貨が資本市場でより大きな役割を果たせると信じている。USDCおよびUSYCのICEマーケットにおけるユースケースを模索できることを非常に楽しみにしている」
この取り組みは、ナスダックが2026年より平日24時間取引を開始する計画を発表し、NYSEも平日の取引時間を拡大する方針を示す中で、伝統的金融市場がよりグローバルな構造に移行していることに呼応した動きといえる。
ステーブルコイン市場のシェア Source: RWA.XYZ
新興国で「価値の保存手段」として台頭
サークルやテザーが発行するステーブルコインは、急速にインフレが進む新興市場において「価値の保存手段」として重要性を高めている。
Bitsoの「2024年ラテンアメリカの仮想通貨情勢」レポートによると、同地域の仮想通貨購入の39%をステーブルコインが占めており、そのうちUSDCが24%を構成している。
同レポートは、激しいインフレ圧力により現地通貨の価値が急落する中、ステーブルコインが資産価値を維持する手段として使われていると指摘した。
2023年のチェイナリシスの調査によれば、ラテンアメリカでやり取りされた仮想通貨の大半がステーブルコインであり、多くの個人がビットコイン(BTC)よりもトークン化された法定通貨を価値の保全手段として選んでいる。
USDCはラテンアメリカで広く保有されている Source: Bitso
また、低コストかつ迅速な国際送金の手段としても、ステーブルコインは送金・貿易用途に適している。
こうした特性により、2024年にはステーブルコインの採用が急増。CEX.IOが2025年1月に発表したレポートによると、2024年のステーブルコインの送金総額は27.6兆ドルに達し、VisaとMastercardを合計した決済額を7.7%上回ったという。