親市場派の中国人民銀行新総裁、仮想通貨業界推進か

 アメリカ帰りの経済学者易綱(イ・コウ)氏は、中国の中央銀行である中国人民銀行の行長(総裁)に任命された。親市場派経済学者の登用は、仮想通貨市場に良い影響を与える可能性がある。

親市場派、自由を推進

 中国の習近平国家主席も中国人民銀行の易綱新総裁も、親市場、市場改革賛成派である。総裁への任命前から、易氏は市場自由化の重要性を常に強調し、中国市場の柔軟性を高めるための自身の長期的計画をサポートできる経験豊富な金融専門家を経済学者とともに招き入れてきた。

 易氏の任命から数週間ですでに、中国政府は初めて同国の決済業界への外国企業の進出を許可し、アリペイを提供するEコマースの複合企業アリババや、テンセント・ペイを提供する同国最大のテクノロジー企業テンセントといった国内の巨大企業と競合させている。

テンセントのゲーム業界での成功ー背景理解

 背景理解のために、中国のテンセントについて紹介しておこう。同社は、最も人気のあるオンラインゲームの1つであるリーグ・オブ・レジェンド(LOL)の立役者でゲーム開発会社のライアット・ゲームズを含む一連の会社買収を過去数年で成功させており、昨年11月にはフェイスブックの市場評価を超えた。

 テンセントは5000億ドル(約53兆1000億円)の指標を超えた初のアジア企業で、フェイスブックの市場価値を5170億ドルから4450億ドルへ下落させたケンブリッジ・アナリティカス事件の以前に、フェイスブックを引き離していた。

 2016年には、NBAファイナルよりも、テンセント傘下のライアット・ゲームズが開発したゲームLOLを観戦した視聴者の方が多かったことが明らかになった。LOLのプロeスポーツリーグ決勝は、9万1000人を収容でき、鳥の巣の愛称で知られる北京国家体育場で開かれた。NBAファイナルは世界中で3100万人が観戦したのに対して、LOL決勝は世界で3600万人が視聴した。

 国際的なeスポーツ業界およびソーシャルメディア、メッセージ、決済市場でのテンセントの成功と優勢を認識することは重要である。なぜなら中国政府は史上初めて、テンセントに対し金融部門での競争の扉を開いたからだ。

外国企業に開かれた決済市場

 中国政府が27兆ドル規模の決済市場の門戸を外国企業に対して正式に開き、ライセンスの申請を許可したことをブルームバーグが3月21日に報じた。INGグループに勤める香港在住の経済学者アイリス・パン氏はブルームバーグに対し次のように語った

「国内市場は非常に強力な国内プレーヤーでだいぶ飽和状態であり、外国企業がそこに食い込むのは比較的難しい。しかし、国境を越える決済市場では競争のチャンスがある」

 

 ソーシャルメディア、検索エンジン、メッセージといった決済以外の市場において、中国政府がフェイスブックやグーグルなどの複合企業の参入を禁止している理由は様々だが、主にはチャットアプリのQQや動画共有サイトのヨウク(YouKu)といった国内プラットフォームに市場シェアを100%握らせ、市場全体をコントロールできるようにするためである。

 中国政府と中銀による決済部門への外国企業参入許可は前例のないもので、そのような市場自由化への前向きな動きは、仮想通貨市場とそれに対する姿勢にまつわる憶測を生むのは避けがたい。

 

習主席の談話

 昨年9月、中銀と中国政府が仮想通貨取引を厳格に禁止したすぐ後に、アナリストのジョン・クリーシー氏は中銀がそのような方策をとったのは、習国家主席の政治的談話を支持するためであると説明した。習国家主席が自身の政府を再度確立したら、政府が仮想通貨市場を開く可能性が高い、とクリーシー氏は述べた

「歴史的に見て、習近平国家主席はかなり長い期間にわたり中国で最も強力な自由市場の擁護者の1人である。このような傾向がは続くと考えている。しかし今のところは、習国家主席は彼を権力の座にとどめてくれる人々、つまり共産党に訴えかけなければならない。私の意見では、ビットコイン(BTC)取引の禁止は一時的な、うわべだけの行為に他ならない。これが本当だとして、私たちはどうしたら良いだろうか?」

 

 今のところ、中国政府と習国家主席は中国市場の自由化計画を継続する意思を示しており、国内企業により大部分が独占されている決済部門から着手した。

 中国政府が同国内での仮想通貨事業やプロジェクトを停止するさらなる取り組みを主導していないことを考慮すると、中国政府の次なるターゲット市場は、仮想通貨市場の可能性がある。中国政府は仮想通貨の取引を禁止しただけで、その保管や所有を禁止はしていないため、ヴェチェーン (VeChain)やネオ(NEO)といった中国発のブロックチェーンプロジェクトはいまだに開発を続けることができている。

 

中国の仮想通貨

 ヴェチェーン、ネオ、クアンタム(Qtum)はすべて、中国に拠点を持つチームによって創設、開発されている数十億ドル規模のプロジェクトである。実際、これら3つの仮想通貨は世界市場でも最大の仮想通貨の一部であり、ネオは評価額37億ドルで市場第9位の規模を誇る。

 著名な仮想通貨リサーチャーのcryptweeterは、第一財経(YICAI)をはじめとする国営報道機関が、中国を拠点とするブロックチェーン・プロジェクトの仮想通貨ヴェチェーンを大々的に取り扱ったと述べた

「中国の主流メディアによって取り扱われるようになってきた。特筆すべきは第一財経で、ヴェチェーンについて最近頻繁にツイートやリツイートをしている。第一財経は国営で、国内トップの金融、投資報道機関の1つである」

 自国発のブロックチェーンプロジェクトやイニシアチブに対する政府のサポート、そして中銀の易新総裁といった親市場派経済学者の登用を考慮すると、中長期的にブロックチェーン推進型の法律が発表される可能性がある。

 中国政府は仮想通貨取引を禁止したが、この事態が長引く可能性は低い。特に、中銀の易総裁が中国市場と、決済や金融セクターといった主要産業を自由化する長期的な取り組みを続けるならばなおさらである。

  • フォローはこちら: