中国政府が完全に追跡可能な中央銀行デジタル通貨(CBDC)を導入し、マネーロンダリングや違法取引を管理しようとすれば、マカオのギャンブル産業に脅威をもたらす可能性がある。

ロイターは22日の記事で、デジタル人民元が使われることで、観光客(中国本土からが70%を占める)による違法な資金の流れを抑制し、マカオのギャンブルビジネスに影響を与えるだろうと指摘している。

マカオは中国で唯一ギャンブルが合法である地域であり、その恩恵を享受してきた。だがマカオのカジノジャンケット(VIP向け仲介業者)は、新型コロナウィルスで既に打撃を受けており、ロイターによれば、その収入は19年比で60%減少している。

中国政府はオンラインギャンブルとマカオのジャンケット業界の不透明な資金の流れの摘発にも動いており、既に多くの逮捕者が出ているとも伝えられている。

一部のカジノ業界幹部は、中国当局がデジタル通貨を使い、カジノへの取引制限を課す可能性を懸念している。ロイターによれば、顧客の中からはジャンケットに預けてある資金を引き出す動きも出ているという。

ジャンケット業界の投資家であるルイス・ラム氏は「これらの仲介業界がすぐに消滅・衰退する可能性が非常に高いだろう」と、ロイターにコメントしている。

しかし、一方で楽観的な見方もある。デジタル人民元によってカジノへの資金の流れが完全に把握できるようになれば、より多くの中国本土からの観光客がマカオを訪れることができるようになるという予想だ。

ラスベガスサンズとマカオサンズ・チャイナのロバート・ゴールドスタイン会長も楽観的な可能性に言及している。同氏は「マカオ市場が中国とより統合し、より消費者フレンドリーになれば、それは非常にポジティブなことになるかもしれない」と最近発言している。

中国のデジタル人民元は、深圳や蘇州、成都、雄安といった地域や都市で既に試験運用されている。ロイターによれば、マカオでもでデジタル通貨を運用する準備を進めているようだ。