分散型金融(DeFi)トークン「Sushi Swap(スシ・スワップ)」をめぐって新たな展開が起きた。
シェフ・ノミという偽名で知られる以前の代表が、9月11日、「これまでの過ち」を謝罪して1400万ドル(約14億8000万円)をスシ・スワップの開発基金に返金した。
「私は1400万ドル分のETHを基金に戻す。今後はスシ・スワップの創設者としての価値をコミュニティに判断してもらう。どんな通貨(ETH/SUSHI/など)でもいい。どんなロックアップスケジュールでも良い」
ノミ氏は9月6日にプロジェクトのコントロール権を仮想通貨デリバティブ取引所CEOのサム・バンクマンーフライド氏に移譲。ノミ氏は開発資金捻出のためにSUSHIトークンを全てイーサ (ETH)に交換したとTwitterで公言し、「詐欺プロジェクトではないか」と批判を浴びていた。
開発基金には2700万ドル(約28億6000万円)が入っており、ノミ氏は1300万ドル分をイーサ に売却したとされていた。
ノミ氏の復帰についてバンクマンーフライド氏は、コインテレグラフに対して、歓迎する意向を示した。
「私はノミ氏がETHを返金したことをとても嬉しく思う。正しいことをした。彼がしたことを忘れるべきではないが、最終的に彼が正しいことをしたことも忘れるべきではない」
ノミ氏は、コミュニティ全体に謝罪をするとともに複数の個人にも謝罪をした。
仮想通貨取引所のバイナンスやブランド・プロトコルのソラウィット・スリヤカーンCTOに対して、「トラブルを起こしてすみません。あなたたちは素晴らしいビルダーだ」と発言。またバンクマンーフライド氏に対しては「私がほとんど破壊をしてしまったスシ・スワップを立て直してくれてありがとう」と感謝した。
スシ・スワップが注目な訳
2020年はDeFiの年。6月のCOMPローンチと「流動性マイニング(Liquidity Mining)」登場によって一気にDeFiはブームとなった。
流動性マイニングとは、DeFiプロトコルに参加することによって独自トークンをもらう行為を指す。COMPの後は、ヤーン・ファイナンス(YFI)、そしてスシ・スワップが人気を博した。
メサーリ共同創業者のライアン・セルキス氏によると、COMPとYFIの大きな違いは「立ち上げがフェアだったか(Fair Launch)」かどうか。COMP立ち上げ時にはすでにVCや初期投資家にトークンが配布されていたが、YFI創設者のアンドレ・クロンジェ氏はヤーンに資金をロックすることですべての人にYFIトークンを稼がせる仕組みにした。彼を含めて外部投資家に対するトークンの配布はなしで、YFIをファーミングした利用者にすべてのトークンを分配する仕組みだ。
その後、ヤム・ファイナンス(YAM Finance)など、いわゆるミームコイン(模倣コイン)が誕生。DeFi市場の過熱感を示すことになった。一見ミームコインと目されるスシ・スワップだが、セルキス氏によると、実は見所もある。
分散型取引所であるユニスワップとのコラボだ。
スシ・スワップは、8月末に立ち上げた時、ユニスワップからのフォークであることを発表。ユニスワップのコードのコピペでありスシ・トークンを追加したにすぎない計画だったが、「よりコミュニティ全体が運営するユニスワップであり運営面で初期の流動性供給者に高い報酬を与える」というアイデアが受け入れられた。
ユニ・スワップは、0xのような分散型取引所のように買い手と売り手をマッチさせるオーダーブックを採用するモデルと異なり、常に資産の売買を目指す流動性プールを使う自動マーケットメーカー(AMM)モデルを採用している。
例えば、もしDAIやイーサが余っていたら、ユニスワップのDAI /ETHプールを使うことができる。代わりにユニスワップからLP(流動性供給, Liquidity Provider)トークンを受け取る。ユニスワップの他の利用者がDAIとETHの交換をすることで、取引手数料が得られることになる。
LPトークンをスシ・スワップでステークすることでSUSHIトークンを獲得できる。
ユニスワップが手数料として0.3%支払うのに対して、スシ・スワップは0.25%の手数料にして残りの0.05%のSUSHIトークンへの変換、SUSHI保有者への分配を行う。これが、初期の流動性供給者に対する報酬になる。さらにSUSHIへの分配分の10%が開発者基金に回される。
セルキス氏は、ユニスワップからスシ・スワップへの「流動性移動(Liquidity Migration)」が起こっているとみている。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン