仮想通貨取引所MEXCの最高執行責任者(COO)であるトレイシー・ジン氏は、現実世界資産(RWA)のトークン化には、検閲、流動性リスク、法的な不確実性、サイバーセキュリティ上の問題、そして国家や第三者仲介機関による資産の没収といった、重大な中央集権的リスクが伴うと警告している。
コインテレグラフとのインタビューでジン氏は、トークン化資産が国家規制当局や中央集権的な仲介機関の管理下にある限り、「トークン化は単に旧来の金融インフラの新しい形でしかなく、金融革命とは言えない」と述べた。さらに次のように続けている。
「大半のトークン化資産は、許可制あるいは半中央集権的なブロックチェーン上で発行されることになる。これにより当局は資産に制限をかけたり、没収したりする権限を持つことになる。たとえば不動産や債券といった資産のトークン化は、結局のところ国家の法制度に結びついている」
「もしそのトークンの裏付けとなる不動産や企業が、法制度が不安定または政治的な不確実性が高い国にある場合、没収リスクはいっそう高まる」とジン氏は指摘した。
実世界資産のトークン化は、今後10年間で数兆ドル規模の市場になると予測されており、世界の資産がオンチェーン化されることで、資金の流動性が高まり、世界的な資本市場の裾野が拡大すると見込まれている。
The total market cap of the RWA sector. Source: RWA.XYZ
将来のRWA市場予測には大きなばらつき
トークン化された実世界資産には、株式、債券、不動産、知的財産権、エネルギー、美術品、プライベートクレジット、債務商品、法定通貨、商品、コレクターズアイテムなどが含まれる。
RWA.XYZによると、安定通貨(ステーブルコイン)セクターを除き、現在オンチェーン上には196億ドル超の実世界資産がトークン化されている。ステーブルコイン市場は、2024年12月に時価総額が2,000億ドルを突破した。
Tren Financeが実施した調査レポートでは、シティ、スタンダードチャータード、マッキンゼー・アンド・カンパニーといった大手金融機関を対象にアンケートが行われ、回答者の予測では、RWA市場は2030年までに4兆ドルから最大30兆ドルに達するとされた。
Financial institutions provide different forecasts for the future of the tokenized RWA market. Source: Tren Finance
マッキンゼーは比較的控えめな見通しを示しており、RWA市場は2030年までに2兆~4兆ドル規模になると予測している。
一方、スタンダードチャータードやブロックチェーンネットワークPolygonの幹部らは、RWA市場が今後10年で30兆ドル規模に成長すると見ている。