9月初旬、中国はICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨で広く資金調達する手法)を禁止し、1週間後には中国当局は国内の主要な仮想通貨取引を停止させた。本記事では、この禁止令が、中国だけでなく世界中の仮想通貨経済全体に与えた影響について解説する。

現在、中国では、多くの人々がICO規制に懸念を抱いている。にもかかわらず、業界はもうこの潮流を止めることなどできない、といわんばかりにビジネスを通常通り進めている。技術的な点で禁止されていても、市場は継続しなくてはならない。マーケティングは中断されているが、誰もが何が次に起こるのか注目している。

再会への希望は残っている

しかし、中国の禁止は一時的なものとみられる。米国や日本などは、既存の証券法の下で投資家の保護を提供するための新たな規制を制定し、仮想通貨の合法化を目指している。新しい規制によって、新規の市場開拓が可能になり、将来的には企業には代替的な資本調達が可能になる。

禁止にもかかわらず、中国人はたくみに微信(ウィーチャット)経由、さらにはテレグラムというロシア発のメッセンジャーアプリまで駆使してデジタル通貨を取引しており、このことは中国で仮想通貨が必要とされ、まだ未来の可能性が残っていることを示している。中国において、政策や規制があるところにはそれをかいくぐる方法が必ずあるといわれるのだ。

しかし中国当局によって禁止令が発表されてすぐ、ビットコインの価格が25%落下し市場は突然のパニックを引き起こした。コインテレグラフが企画していた上海でのイベントを含むいくつかのブロックチェーン関連のイベントは、中国政府の仮想通貨に対する厳しい措置を恐れて中止された。

また、ICOの提供を通じて資金を調達したスタートアップは、全額返還を余儀なくされた。

ICO調達金を全額返済した上海発のブロックチェーンスタートアップに独占インタビュー

その企業の1つは、次世代人工知能(AI)を搭載したブロックチェーンを開発する上海発のアトマトリックス(Atmatrix、智能矩阵)社だ。ICO禁止令以前に約5000万ドル(約57億円)の資金調達を成功させたが、全額返金しなければなならなかった。 彼らはコインテレグラフ主催のBlockShowアジア(11月29~30日にシンガポールで開催予定)に参加する予定で、そこで中国における現在のICO規制と彼らの経験、最新事情について、喜んで共有したい、という。さらに、アトマトリックスは出展者、スピーカーとしてBlockShowに参加したいと望んでいる。

一方、コインテレグラフは、アトマトリックスに中国で何が起こっている事について彼らの見解を伺う機会を得た。アトマトリックスのチームは、大変協力的に私たちの質問に答えてくれた。インタビューの要旨は次のとおり。

Q. 現時点でのアトマトリックスの主要な目標は?

A. 我々は中国の規制遵守を果たした上で、円滑に事業を推進するための法的枠組みを開発した。11月に分権化されたAIaaS市場(AI as a Service)をグローバルAI市場に投入する予定だ。これによりモバイルアプリ及びDApps(非中央集権・分散型アプリケーション)にAI機能が付与される。 また、アトマトリックス基金は、開発者と仮想通貨愛好者の双方の国際社会の発展に積極的に取り組んでいく。

Q. あなたはトークン・セールで調達した50百万ドル弱を返却させられたわけだが、新たなクラウドセールの計画は?

A. 我々は、ICOに関する中国の規制は完全遵守する。 Atmatrix.orgは、最初から国際的なブロックチェーンプロジェクトとしてスタートし、シンガポールに登録されている。 当社は、特定のコンプライアンス環境の下で、グローバルにトークンセールを新たに開始するかもしれない。

Q. われわれは皆、ICOと仮想通貨全般についての中国政府の最終的な決断をやきもきしながら待っている。 あなたの考えや対策は? あなたは今のところ国際的マーケティングをおこなっているが、中国の投資家はまだあなたの射程距離内か?

A. 私たちは中国の規制当局の要求に応じ、コンプライアンスの問題にその都度取り組んできたが、アトマトリックスをグローバルに成長させる計画も常に立てている。ブロックチェーンの世界には国境がなく、お客様が私たちの公共および分散型AIaaSプラットフォームを使用するのを規制することはできないのだということを理解するのは重要だ。私たちは、発売以来、世界市場を目指してきた。華為(ホアウェイ)、百度、テンセント、アリババなどの中国のIT大手もアトマトリックスが現在構築しているエコシステムの一部になるだろう。

Q. 中国におけるICOの禁止を受けて、ビットコインおよび仮想通貨産業の行方に関する全般的な見方は?

A. ビットコインおよび仮想通貨業界は、中国での禁止後も止まることなく成長する。