ブロックチェーン技術がイスラエルに定着【専門家の寄稿】

専門家の寄稿では、仮想通貨業界内外のオピニオンリーダーがその見解を示すと共に、経験を共有し、専門的な助言を与える。ブロックチェーン技術やICOの資金調達、税金、規制、さまざまな経済分野での仮想通貨の採用事例まで、あらゆる話題を提供する。

 

偽造や贈収賄を減らすことを目的に設計されたブロックチェーン技術が、イスラエルの政治家や実業界で広く用いられるようになってきている。

 

政府×テクノロジー(ガブテック)

 イスラエル政府は開かれた政府の方針を推進しており、近年の情報通信テクノロジーの革新は、議会民主主義にとって重要な改善につながるものだと考えている。このアプローチでは、知識に基づく政策決定プロセスが促進され、それが行政サービスの改善や、国民と政府の間の信頼強化につながる可能性を持つ。

 イスラエル政府は、企業だけでなく教育機関に対しても出資や共同活動、提携を行い、革新的な科学技術の継続的な発展と促進に努めている。イスラエルのブロックチェーン協会は、ブロックチェーン技術に関する取り組みにおいて、これら当事者間のやりとりを橋渡ししている。

 ブロックチェーン技術のスタートアップ企業の1つ、コアリチェーンは、開かれた政府政策を促進し、選挙人と非選挙人の間のコミュニケーション・ギャップをなくすための、インタラクティブな政治プラットフォームの設計を行っている。このプラットフォームでは、市民と政府の間でインタラクティブに対話が行われている間、市民の関心がヒートマップやグラフとして視覚化される。そして政治家は、リアルタイムで有権者の質問に答えられるのである。このシステムで収集されるデータからは、企業の影響や政治家への支払いの頻度を追跡することができる。このシステムはまた、スマートコントラクトを利用して、予算案や政策など、政治家によってなされる選挙公約を遵守させる働きも持つ。同社のウェブサイトによれば、ベータ版の開始は18年第1四半期、完全版およびブロックチェーンが統合されたアプリのリリースは18年末の予定である。

 コロンビアでは、デモクラシー・アース財団がブロックチェーンを組み込んだデジタル投票プラットフォームのプレビスティコ・デジタル(デジタル国民投票)を立ち上げ、複数の市民社会組織と協力して、在外コロンビア人がこのプラットフォームで市民投票に票を投じられるようにしている。また、シエラレオネはすでに世界最初のブロックチェーンを利用した大統領選を行なっている。

 

ハイテク:ドローンとブロックチェーン

 イスラエルは世界で十指に入る革新的な国の1つであり、ブルームバーグによれば、同国はアメリカよりも先を行っているという。なぜなら、イスラエルは労働力に占めるエンジニアや科学者の比率が、非常に高い国の1つであり、数多くのテクノロジースタートアップが最先端技術を生み出しているからである。

 スマートフォン・エレクトロニクス業界によって活気づけられたテクノロジーの隆盛により、商業的応用における無人航空機(UAV)の使用が大きく加速することとなった。当初、ドローンは人による操縦では到達困難なエリアに到達したり、そこを横断したりすることを目的として生まれたものである。やがてその用途は軍事応用へと広がった。たとえば、複雑な作戦任務において俯瞰的な像を得たり、イスラエルがシリアで撃ち落としたイランのスパイドローンのように、情報収集や監視、偵察に用いたりといった用途である。その後さらなる需要や進展があり、ドローンはさまざまな目的に使用されるようになった。たとえば、視察や測量、監視、セキュリティ、配達、そして無線インターネットアクセスなどである。

 イスラエルはドローン輸出における主要国の1つである。イスラエルのペタク・チクヴァに拠点を置くスタートアップ企業のエアロボティクスは、企業として世界で初めて、イスラエル民間交通局(CAAI)から同国領空内での完全無人ドローンによる商業的飛行の認可を得た。

 商用ドローンの飛行や配送を追跡し、確実にするため、アディ・ベン=アリ氏が設立した別のスタートアップ企業であるアプライド・ブロックチェーンが、ブロックチェーンによるドローンレジストリを開発している。「ブロックチェーン・プラットフォームでは、ドローンの運用者とメーカー、およびその規制機関を1つにつなぎ合わるために、信頼できる唯一の情報源が用いられている。ドローンが飛行中に集めた航路データは、同じ共有台帳にアップロードして、インタラクティブ・マップの上に視覚的に表示させることもできる。

 このデータは登録されたドローンに紐付けされているため、航空局は特定のドローンの飛行や特定オペレーターによるすべてのドローンの飛行、さらには特定メーカーの全ドローンの飛行を1つのマップ上にリアルタイムでプロットすることができ、これにより領空内でのUVAの安全な相互運用を保証できる。このようなデータアクセスは、従来手法に基づくシステムからのパラダイムシフトだ。旧来のシステムでは、本質的に単一の信頼に足る者に頼る形でデータが維持され、そしてユーザーに適切なレベルのアクセスが提供されている」とベン=アリ氏は説明する。

 

国家的仮想通貨とフィンテック

 イスラエルの市場経済は技術的に進んでおり、イスラエルは、国が後押しする仮想通貨の導入を計画している国の1つでもある。現在、イスラエルの中央銀行であるイスラエル銀行(BOI)では、仮想通貨は資産・財産の1つとして分類されている。イスラエル財務省とBOIが国が後押しする仮想通貨を促進しようとするのは、贈収賄やマネーロンダリング、脱税のリスクを最小化したいからである。贈収賄に関する最近の調査でベンジャミン・ネタニヤフ首相の側近に対して正式告発がなされることになったことを踏まえれば、これは非常に重要だ。

 その市場規模から、イスラエルでは銀行や規制、金融インフラは依然として限られている。地元規制当局の支援を受けながら、ハポアリム銀行とレウミ銀行が2行独占の形でこの業界を主導しているのである。ハポアリム銀行がブロックチェーン技術を採用する一方で、イスラエル最高裁は、レウミ銀行による仮想通貨・ブロックチェーン関連企業の銀行口座の制限を禁じる判断を下した。イスラエル最高裁はまた、バイナリーオプションを禁止する法律についての控訴も棄却している。

 イスラエルはフィンテックのスタートアップ国家であり、バンコールやゼン、ダグラブなど、多くの破壊的ベンチャー企業が、仮想通貨のスケーリング問題を改善する技術を開発している。現在のところイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関する規制はないが、イスラエル証券局(ISA)は、イスラエルにおけるICO規制の必要性について評価するための委員会を立ち上げた。

 

仮想通貨への課税

 イスラエル税務局は仮想通貨を資産・財産の1つに分類しており(18年5月の税通達)、イスラエル・デロイトにある国際税務部の長を務めるタックスパートナーのイサク・チコレル公認会計士によれば、仮想通貨の売却は、資本利得を生じさせるバーター取引として課税対象になる。また、資本利得は交換された資産価値に基づいて判断される。

 仮想通貨の所有者が仮想通貨を(投資のような)資本的資産として保有している場合、その利得は資本利得として分類されることになり、企業に対しては約46%(資本利得税23%、配当税30%)、個人に対しては25%の税が課される。

 仮想通貨売却による利得がマイニングなどの事業活動の一部であるとみなされる場合には、累進税率によって個人では最大47%、企業では46%の税が課される可能性がある。外国人投資家は租税条約に基づいて税金を免除されることもありうるが、免除されない場合には、イスラエルの企業あるいは個人と同様に課税されることになる。ICO発行機関がICO当日に投資家から受け取った対価については、場合によってはその日に課税されず、繰り延べされることもある。

 

 この記事における見解や解釈は執筆者によるものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を表すものではない。

 

セルヴァ・オゼッリ氏は国際税弁護士および公認会計士で、タックスノートやブルームバーグBNAの他、その他の出版物やOECDでも税金や会計問題に関する執筆を多数行なっている。