イタリアの仮想通貨取引所ビットグレイル(BigGrail)から約200億円分の仮想通貨ナノ(XRB)が今月8日不正流出し、顧客資金が支払い不能になっていることが分かった。同取引所はハッキング被害を受けたとしているが、ビットグレイルでは先月から10BTC/日の出金制限が実施されており、匿名の経営者による「持ち逃げ」疑惑も取り沙汰されている。XRBはこれまでの24時間で約24%急落している。
ビットグレイルは主に当時レイブロックス(RaiBlocks)と呼ばれていたナノの取引所として知られ、名称も同通貨「レイ」の発音にちなんでいた。特に、KuCoinやバイナンスでの取り扱いが始まる前は、多くの人がビットグレイルでナノの取引を行っていたようだ。さらに、フランチェスカ・フィラノCEOは元レイブロックスの開発メンバーの一人で、同通貨に詳しかったと見られる。
同取引所が9日に発表した声明によると、今回1700万XRBがハッカーによって奪われたという。これは全供給量の10%強に当たる。
これを受け、ナノの開発チームはミディアムにおいて声明を公開し、フィラノCEOから不正流出を「帳消し」するよう台帳を改編する要望があったことを明かした。ナノチームはこれを即座に拒否し、「そういったことは不可能であり、我々が進むべき道ではない」と返している。
さらに「フィラノ(CEO)が長期間に渡ってビットグレイル取引所の経営状態についてナノのコア開発チームを欺き続けてきたことに関しての確証が出てきた」とし、詐欺の可能性を示唆した。
フィラノCEOはツイッターでこれに反論している。
ナノは昨年12月まで0.1~0.2ドルで取引されていたが年末年始のアルトコインブームで一次35ドルまで急騰。一か月で200倍になった計算だ。世界最大級のナノ取引所であるビットグレイルの顧客資産も相当膨らんでいたはずで、詐欺の疑惑が出る背景となっている。
「ナノ」は2016年に元クアルコム等出身の米エンジニアであるコラン・ルマヒュー氏が設立。当時ビットコインが直面していた取引量や取引承認速度の問題を解決する目的で開発された。手数料ゼロ、マイナーゼロ、遅延ゼロを謳っており、IoTにおける応用に向いているとされる。