仮想通貨(暗号資産)取引所ビットフィネックスは5月13日、英ロンドン拠点のデジタル資産カストディアン「Koine(コイネ)」と提携し、機関投資家向け保管・ポストトレードサービスを展開すると発表した。投資家が仮想通貨取引の清算・決済におけるカウンターパーティーリスクと秘密鍵の使用を軽減できるようにしたという。

ビットフィネックスは、コンピューターを使ったアルゴリズム取引、また店頭取引を機関投資家にすでに提供しており、今回の新サービスによりその参加をうながすと主張している。

「ホット」でも「コールド」でもない、Koineの「Digital Airlocks」

プレスリリースによると、仮想通貨取引所が仮想通貨保管のため採用している「コールドストレージとホットウォレット」モデルは、スタッフによる「目視」が必要となり、秘密鍵のセキュリティを損なう可能性があるという。

そのため同社は、独自セキュリティモデル「Digital Airlocks(デジタル・エアロック)」を採用し、さらに法定通貨保管およびDVP(Delivery Versus Payment)決済を組み合わせているそうだ。

コインテレグラフに対し、Koine創業者のフィル・モチャン(Phil Mochan)氏は、Digital Airlocksについて説明した。

同社ソリューションでは、物理的なエアロックと同等機能を備えるため、3つの独立した技術からなるDigital Airlocksを使用しているという。

「デジタル資産は、トランジットアカウント(ホットウォレットに該当)と呼ぶ、もっとも外側のエアロックに入れられる。デジタル資金は第2エアロックへの移動前にそこで一時的に保持され、別の分散型台帳技術(DLT)により記録した後、保管資金の金庫である3番目のエアロックに移される」

従来のホットウォレット同様、外部エアロックは依然として攻撃されやすいものの、モチャン氏は、その違いは「保持されている残高がゼロであることと、そうでない場合でも保証する」という事実にあると強調した。

さらに、このプロセス全体が「ミリ秒未満の時間」単位で実施されること、ソフトウェアではなくハードウェア基盤となっているそうだ。

「単一の情報源」としてブロックチェーンを利用

またKoineは、人間に頼らずほぼ完全な自動化を実現するものとして設計しており、毎秒20万件以上の取引を処理できるという。

Koineのポストトレードでは、分散型台帳技術(DLT)により記録することで、デジタル資産を取引サイクルから取り除き、スタッフによる目視といった手動プロセスの必要性を排除できるよう設計したそうだ。

モチャン氏は、従来の株式や債券の市場でも資産を電子化し記録することは多いものの、照合作業が必要な多層的な取引モデルが引き続き採用されていると指摘した。

これに対してKoineのDVPソリューションでは、分散型台帳を単一の「真の情報源」として利用しているという。モチャン氏は、多段階の保管構造を備えていない従来の預託機関が使用するモデルに例えた。

ミリ秒単位の担保ロック、DVP実行

Koineのサービスは、Digital Airlocks採用ソリューションにおいて、取引に関与する全資産を管理することで、すべての暗号資産と(デジタル化された)法定通貨の継続的な法的所有権を保障するという。

「クライアントが取引を希望すると、Koineは取引実行前に取引の両者の担保をロックする。(中略)この担保ロックは、ミリ秒単位で実行される。取引後、取引所から決済指示を受け取ると、Koineはやはりミリ秒単位でDVPを実行する」

コインテレグラフに対して、ビットフィネックスは、「ビットフィネックスおよびKoine両社の顧客が、Koine上で保持しているトークンを使い、ビットフィネックスのクレジットを取得できるようにする」統合を進めていると明かした。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン