ビットコイン(BTC)価格は11,000ドルのレジスタンスからの急反落の後、軟調な展開が続いている。2020年第4四半期に突入したが、足元での市場心理は依然として慎重で中立的なままだ。しかしビットコインはいくつかの要因により、第4四半期に大幅な下落に直面する可能性もある。

3月から8月にかけて、良好な金融状態、低金利環境、数兆ドルの景気刺激策により、ビットコインと株式市場は連動する形で上昇してきた。だが11月に控えた米大統領選挙により、新たな景気刺激策の承認が遅れる可能性が高まっている。米国のマクロ情勢と金融市場を巡る不確実性の高まりは、BTCに圧力をかける可能性がある。

トレーダーは一般的に短期的には慎重であり、中長期的には楽観的だ。テクニカルアナリストは、BTC価格で注視すべき重要なレベルは、9,800ドル、10,700ドル、11,800ドルであるとの指摘も出ている。ビットコインが9,800~10,700ドル、もしくは10,700ドル~11,800ドルのレンジにある間は、低ボラティリティになると予測している。そのため、ビットコインの短期的なトレンドには慎重ではあるが、大きな落ち込みにはならないだろうと予測している。

また一方で、トレーダーはビットコイン価格がCMEビットコイン先物市場で形成される、いわゆる「CMEギャップ」についても留意している。現在CMEギャップは9,650ドルにあり、まだこれは埋められていない。ほとんどのCMEギャップは埋められる傾向があるため、このCMEギャップへの関心は引き続き高いままだ。

短期的な弱気構造

ビットコインは9月末に11,000ドル以下で終値を付けた。テクニカル分析では、新しいロウソク足が前月のロウソク足よりも下で閉じた場合には、「弱気な巻き込み」と呼ばれている。

さらに、8月17日以降、ビットコインは日次チャートで4回連続で安値をローアーハイを記録しており、ビットコインは繰り返しレジスタンスから反落している。最新のピークが前のピークを下回ると、ローアーハイが形成される。8月17日以降、ビットコインはそれぞれ12,468ドル、12,050ドル、11,179ドル、10,950ドルでピークに達している。

ビットコインは、月次チャートと日次チャートン両方でテクニカル的に弱気のパターンに直面している。そのため、短期的にはBTC価格で引き戻しが起こる可能性がある。

ビットコイン価格は9月28日、一時的に10,800ドルのレジスタンスを突破した。しかし、仮想通貨トレーダーの”Byzantine General”は、それがブルトラップである可能性が高いと指摘している。BTCが主要なレジスタンスレベルから完全に抜け出すのに苦戦している場合、ブルトラップの可能性が高くなる。

ビットコインの最近の10,950ドルからの下落は、短期的に慎重/弱気な構造を示しており、それが月次での弱気パターンと一致するとき、短期的な下落傾向を増幅させる可能性がある。

第4四半期の過去のパフォーマンス

BTCの過去のパフォーマンスをみると、直近の2回の第4四半期では、それぞれお42.46%と13.59%のお下落となっている。過去2年間での第4四半期のパフォーマンスを考えると、今回もさえない動きになる可能性があるともいえる。

しかし、2016年に半減期を経た後、BTCは第4四半期でプラスとなっており、613.98ドルから998.33ドルに上昇した。BTCは今年5月にも半減期を迎えており、過去の傾向に従えば、今後12ヶ月にかけて徐々に上昇する可能性がある。2016年の半減期サイクルでは、BTCが2万ドルのピークに達するまで約15か月かかっている。

不確実な金融市場

新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックにより、米国の株式市場は低迷が続いていた。パンデミックの第二波を巡る懸念は、米国での景気刺激策の欠如とワクチンに関する不確実性によって増幅される可能性がある。景気刺激策は、個人向けの現金給付によって経済への圧力を緩和し、市場全体の流動性を高めることになるとみられている。

しかし、ビットコイン、金(ゴールド)、株式、リスクオン資産は、景気刺激策がないまま、第4四半期に突入した。11月に控えた米大統領選挙もあり、刺激策を巡る動きは行き詰まりに陥ろうとしている。米民主党は、現金給付を含む2.4兆ドルの刺激策を準備していると報じられているが、これが大統領選挙前に承認されるかどうかは、依然として不透明だ。

その結果、投資家心理は9月を通じて低いままだった。バンク・オブ・アメリカによると、投資家は先週、株式市場から258億ドルを引き出している。これは、貿易戦争の恐れが激化した2019年6月以来、1週間としては最大の流出となる。バンク・オブ・アメリカのストラテジストは、流出の理由として、景気刺激策の欠如を挙げている。

ビットコインと株式市場との相関関係はデカップリングしつつあり、BTCと金との相関関係が高まっているが、一般的にはより広範囲な市場心理の影響を受ける。仮想通貨取引所Bequantのリサーチ責任者であるデニス・ヴィノクロフ氏は、マクロと政治での展開が、仮想通貨を駆動させるドライバーになると、コインテレグラフに語った。

「マクロと政治における展開は、すべての市場でますます重要な市場心理のドライバーとなっており、これはデジタル資産も例外ではない。米国の大統領選挙を巡る不確実性は、多くのボラティリティをもたらすと予想される。リスクが波及する可能性は高いとみられているが、興味深いのは、ビットコインとイーサリアムのインプライドボラティリティ(将来の変動率)が、スポット市場の値動きが鈍いにもかかわらず、しっかりと固定されていることだ」

オンチェーン指標はポジティブ

6月以降、オンチェーン指標はビットコインの強気トレンドを継続的に示している。クジラの動きやBTCホドラーの動向、ビットコインアドレス、ハッシュレートなど、様々なオンチェーン指標は、ビットコインが健全な蓄積フェーズにあることを示している。

たとえば、グラスノード(Glassnode)の最高テクニカル責任者であるラファエル・シュルツ・クラフト氏は、ビットコインの短期保有者MVRV(STH-MVRV)が4月以来、1を上回っている点を指摘している。同氏は1を試す展開となれば、トレンドの反転になる可能性があると指摘している。

VoltCapitalのゼネラルパートナーであるスーナ・アムハズ氏は、ビットコインブロックチェーンのアドレスアクティビティに言及し、ユーザーの実質的な成長を示しており、健全な市場心理の可能性を指摘している。

全体として、テクニカル的な構造は短期的には弱気であり、長期的には蓄積フェーズにあることを示している。金融市場の不確実性は、予見可能な将来にわたり、BTCに対する売り圧力を強める可能性があるが、オンチェーン指標は、ネットワークが健全な成長段階にあることを示している。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン