英ケンブリッジ大学とロンドンスクール・オブ・エコノミクスのギャリック・ハイルマン教授(経済史専門)は米CNNとのインタビューの中で、ビットコインは経済的奇跡だと語った。

多くの経済学者は、ビットコインを欠陥のあるお金の形態だと否定し、普及するはずがないと言う。しかし、仮想通貨のユーザーは推定で500~1000万人。私の考えでは、ビットコインはちょっとした経済的奇跡に値する。

 ビットコインは世界初の非中央集権的なお金といわれる。検閲や中央権力によって介入されることがない価値の貯蔵庫だ。

 ビットコインが持つ非中央集権的な構造とピアツーピア(P2P)のプロトコルは、第三者を介さず独自の経済活動を行えるビットコイン・ネットワークを形成する。中央銀行や金融機関の中にはビットコインのそうした側面を警戒し始めているが、フィンランド銀行はビットコインの「すばらしい構造」を研究するよう経済学者に求めている。

 フィンランド銀行の調査員は「独占企業なき独占-ビットコイン決済システムの経済的分析」と題するリポートで次のように指摘している。

ビットコインは規制されず、規制できるものでもない。ましてや規制する必要もない。なぜならそのシステムそのものが(規定の動きをする)プロトコルであり、取引手数料はマイナーに関係なくユーザによって決定される。経済システムとしてのビットコインの設計は革命的であり、実用的ではないとしても経済学者の研究に値する。ビットコインが持つ明らかな機能性と有用性を鑑みると、経済学者はそのすばらしいシステムを研究すべきだ。

 ハイルマン教授はビットコインを経済的奇跡と表現したが、これは博士が言うような「小さい」ものではない。ビットコインの市場価値は現状で主要銀行の価値をしのぐ1660億ドル(約18兆5120億円)に達し、ビットコインの流動性はほとんどの株式市場より高い。ビットコインのいかなる面をみても「小さい」という評価を正当化することは難しい。

 ビットコインはこの11カ月、国際金融システムに大きな影響を与えてきた。そして急速なスピードで金融業界に変革をもたらしていくだろう。すでに機関投資家はビットコイン市場に参入している。コインベースCEOのブライアン・アームストロング氏は約100億ドル(約1兆8512億円)の機関投資家マネーがビットコインなどのデジタル通貨に向かうという。

 「100を超えるデジタル通貨取引専門のヘッジファンドがこの1年で創設されている。それをはるかに上回る数の機関投資家(ファミリーオフィスから政府系ファンド、従来型ヘッジファンドを含む)もデジタル資産での運用の検討に乗り出している。ある試算によると、今後、デジタル通貨に流れる予定の投資資金は100億ドルに上るとみられる。」とアームストロング氏は指摘する。

 主要なヘッジファンドや大手銀行がビットコインへと目を向ける中、一般の顧客や投資家がそれに追随するのは自然の成り行きだ。ビットコインはもはや小さな経済的奇跡ではなく、大きな奇跡で、長期的に金融セクターを変えていくの間違いないだろう。

 経済大国である米国や日本、韓国はすでにビットコインを合法とし、仮想通貨取引やビジネス、投資家に対して規制の枠組みを設定している。

 ハイルマン教授はビットコインはぜいたく品市場で通貨としての使用頻度が高まっていると指摘している。高額で非効率な銀行サービスにわずらわされず大規模な取引を行えるという利点があるためだ。「何万ドルもの絵画一枚に送金手数料2ドル(約223円)を払うなら、手数料は無料のようなものだ。しかし、それだけの絵画に2~3%の手数料を払うとすればかなりの値が張ることになる」。