巨額ビットコインのハッキングを発表してから4時間あまりでの「トップ会見」だった。

日本時間5月8日の正午過ぎ、世界最大の仮想通貨取引所バイナンスのジャオ・チャンポン(通称CZ)CEOは、ハッキング被害についてツイッター上のライブ動画で全世界のユーザーに対して状況の報告を行った

元々この時間帯にAMA(Ask Me Anything、私に何でも聞いて)が予定されていたとはいえ、大事件に対するトップの対応としては異例の早さだろう。

同時視聴者数は4000人以上。「資金は大丈夫か?」、「今後の見通しは?」、「やつれたように見えるが?」など数多くの質問がオンラインで送られてくる。中には「髪の毛が白くなったように見えるが」という質問に対してCZが「ライトのせいだ」と反論する場面もあった。

出入金再開は「1週間ほどかかる」

ハッキングへの対応で29時間ほど寝ていないというCZは、7000BTCのハッキングを止められなかったことについて「残念だが、それが現実だ」と認め、今後の対策について話し始めた。

CZによると、現在注力しているのはシステムのリカバリー。全ての口座・データシステムにおけるハッカーのいかなる足跡も削除することが必要と強調し、「それが終わるまでは、残念だが、出入金の再開はできない」と述べた。バイナンスの持つデータ量が多いため、「おそらく1週間ほどかかるだろう」という見通しを示した。

また、APIキーを使ってトレードをしているユーザーに対しては、すぐに変更することを推奨すると話した。

さらに支援を申し出たトロンのCEOやコインベース 、QKCに改めて謝意を示し、奪われた7000BTCを埋め合わせる資金は十分にあると述べた。

「もちろんかなりの打撃になるが、我々は損失の埋め合わせはできる」

その上で他の取引所と協力して、ハッカーのアドレスをブロックすることに努めていると付け加えた。

ロールバックの可能性も

一方、仮想通貨コミュニティーからビットコインのロールバック(巻き戻し)はやらないのかと聞かれていることを明かし、「今後、2、3日で(ロールバックを)行うかもしれない」という見方を示した。7000BTCという金額が、ハッキング後のブロック生成のためにマイナーに支払われた報酬をはるかに上回っていることから、マイナーたちから同意が得られるのではないかという見立てだ。

ロールバックは、ハッキング攻撃が起こった間の取引をすべてなかったことにし、攻撃が起こる前の状態に戻すことを指す。

ただCZは、大規模のロールバックを行えば、「ビットコインの信用を傷つける可能性がある」とし、ビットコインネットワークに対して「ネガティブな影響がでるかもしれない」と話した。

現在、ロールバックをするかバイナンス内のチームで慎重に検討しているという。

CZは、今後も透明性を大切にすると宣言。改めて次の1週間ほど出金ができなくなることに対してユーザーに謝罪した。

CZがハッキングについて話したのは約8分間。その間にユーザーから「ロールバックはしないで」、「CZ愛しているよ」などオンラインでコメントが相次いだ。

ハッキングされたことでセキュリティ不備を問う声は高まるだろう。しかし、事件後すぐにトップが顔を見せて謝罪をし、状況の説明をする姿は評価できるのではないだろうか。