オーストリア金融市場機構(FMA)の理事が、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)に対してこれまでより厳しい規制案を提出した。29日にコインテレグラフドイツ版が報じた。既存の法律を使った規制の実施を進め、将来的には仮想通貨を証券と同じように扱うべきといった発言も出た。

 オーストリアの新聞「ディエ・プレッセ」の29日付の記事によると、FMAのクンプフミュラー氏は、仮想通貨は「将来的に証券と同じように扱われるべき」と発言。その上で証券と同じようにICOにも「限度額に応じて」義務を課すことを提案。FMAの理事会はこの限度額を200万ユーロ(約2億5800万円)と定めた。

 またFMAのエトル理事は、「外国為替の売買のためには小型の銀行ライセンスが必要である」既存の金融機関への規制と比較。現在のオーストリアの法律では仮想通貨に対してそうした法律はない。去年FMAは、ICOや仮想通貨関連で法律違反があったとして、30件ほどを検察局に報告した。

 「ディエ・プレッセ」によると、FMAの理事はオーストリアの財務大臣に対して異を唱えている。ハルトウィグ・レガー財務大臣が「規制案を考えるのは省レベルでFMAは執行に力を入れるべき」と発言し、FMAから仮想通貨の取締に関する権限をはく奪しようとしているからだ。

 これに対してFMAは、マネーロンダリングなどはこれまで法律によって表面的にしか規制されてこなかったので大臣からのさらなる監視強化を歓迎するとしつつも、FMAが進める監督業務に関して「深刻な問題が生じていないため」権限移譲は「政治的な決定」でしかないと反発した。エテル氏は、FMAが「統合された独立機関」としてとどまることが重要だと主張した。

 ただ、仮想通貨の規制強化に関する両者の意見はそれほど食い違っていない。2月にレガー財務大臣が仮想通貨業界に対する規制強化とヨーロッパ全体での早期の規制の実施を呼びかけた時、FMAの理事は賛同し、レガー財務大臣が提案した「フィンテック規制会議」への参加を表明していた。