「俺たちはまたゴックスされたのか」ーーー。

「ゴックスされる」とは、ハッキング等で仮想通貨が盗まれた時に使われる表現で、マウントゴックス事件に由来する。

今回の仮想通貨取引所ビットポイントのハッキングを受けて、まさか2回目のゴックスにあったのではないかと身構える利用者がいる。2014年に巨額ビットコイン消失させたマウントゴックス(Mt.Gox)の債権者だ。

いったいなぜか?

現在、民事再生が進められているマウントゴックス事件。既報の通り、マウントゴックスに残っているとされる13万7892BTC、16万2106BCHなどの仮想通貨、そして管財人の小林信明氏が換金した約690億円について、債権者に対する返済手続きが進められている。

実は、この690億円を換金した場所の1つが、ビットポイントではないかという可能性が浮上しているのだ。

GOXDOX.comがリークした東京地裁の資料から、今年2月、小林氏が、ビットポイントを通して昨年2月~6月にかけてビットコインなどを複数回に渡って売却していた可能性が明らかになっている

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そもそも、市場への影響などから、取引所でビットコインを売却する行為自体に批判の声は多く、小林氏が「東京のクジラ」と揶揄される所以となっている。当時GOXDOX.comは、「(マウントゴックス)の債権者は、ビットポイントでの売却の詳細となぜクラーケンのアドバイスを聞かなかったのかの説明を求めるべきだ」と主張した。

「クラーケンのアドバイス」とは、仮想通貨取引所クラーケンのジェシー・パウエルCEOが、マウントゴックスの仮想通貨の管理をめぐって提案した以下のものである

1.コインを売るな
2.売らなければならないなら、オークションにかけろ。クラーケンがサポートする
3.売りたければ、プライベートで売れ。クラーケンがOTC(店頭)取引を代わりにやってあげよう

クラーケンは、2014年から管財人にアドバイスをしていたが、公式な理由を明かされないまま、その役を外されていた。

今回、マウントゴックスの債権者がやきもきしているのは、「小林氏はマウントゴックスのビットコインをビットポイントに残しているのではないか?」という疑惑だ。詳細が分かっていないだけに「自分たちのビットコインがビットポイントでまた盗まれた可能性があるのではないか」と不安視している。

コインテレグラフ日本版の取材に答えたマウントゴックスの債権者は、パウエルCEOのアドバイスがあったにもかかわらず、ハッキングの危険性がある取引所でビットコインを売買したという小林氏の管理能力を疑問視。「小林氏は、ジェシーのアドバイスを聞いておくべきだった」と述べた。

また、GOXDOX.comの創業者もコインテレグラフ日本版の取材に応じ、以下のようにコメントした。

「重大な問題は、小林氏がビットコインを売却した相手を認めることを拒否してきたことだ。これを暴露したのはGOXDOXだ。もしGOXDOXがなければ、誰もマウントゴックス保有の仮想通貨がハッキングされた可能性に気づかなかっただろう

その上で、「小林氏はクラーケンのジェシーの提案を聞くべきだった」と先述の債権者に同意した。

繰り返しになるが、マウントゴックスの債権者は自分たちのビットコインを取り戻すべく戦っている最中だ。

今回の事件の行方次第だが、仮にマウントゴックスのビットコインがビットポイントにまだ残っていて今回のハッキングで流出したとなれば、マウントゴックスの債権者はまたしても「ゴックス」されたことになる。そうなれば、マウントゴックス事件の行く末にも影響を与えかねないだろう。