IFA株式会社のブロックチェーン事業Alreがインキュベーション事業に乗り出す。

日本の良さを取り込みつつ、グローバルな潮流を組み合わせたものを目指す。IFA株式会社COOの桂城漢大氏にその狙いを聞いた。

すべてのプレイヤーが参加する議論の場を

「日本において、誰もがフラットにブロックチェーンを議論する場を創りたい」

桂城氏は、今回のインキュベーション事業の狙いをそう語る。

技術重視やビジネス特化ではなく、「技術やビジネス、社会、規制」といったブロックチェーンを巡るあらゆるアスペクトを橋渡しすることを目指す。

「民間企業やマーケット関係者、行政、それにグローバルなプレイヤーを1つにまとめて、日本としてブロックチェーンをどう進めていくのかを発信していきたい」

テクノロジーやビジネス、規制、コンプライアンスといった軸を1つにまとめるのが、Alreが構想するインキュベーションの形だ。

日本が世界をリードするには

世界で仮想通貨への規制論議が盛り上がる中、「向かい風を追い風にするべき」と桂城氏は強調する。

1つは、テクノロジーや社会へのインパクトを重視する欧州的スタイル。もう1つは投資やビジネス面を重視するアジア的スタイル。そして最後が規制面を重視する米国的スタイルだ。

「日本は仮想通貨やブロックチェーン技術を金融面から捉えて、そこからブレイクダウンしている印象。本質的な議論を避け、米国的な規制重視の方向になっているのではないか」

桂城氏の目から見ると、日本での仮想通貨・ブロックチェーンを巡る議論は、イノベーションよりも規制を重視する米国的スタイルに偏重しているように見える。

1つのスタイルだけでは、仮想通貨・ブロックチェ―ンという新しい潮流をとらえきれない。その問題意識が今回のインキュベーション事業につながった。テクノロジー、ビジネス、そして規制。これらの要素をバランスよく議論する場を創っていく考えだ。

仮想通貨のネガティブイメージの払しょく

インキュベーション事業では、ビジネスマッチングや政策提案といった取り組みを進めていく方針だが、一番重要なのは教育だ。

「パラダイムシフトを考えるならば、日本でのネガティブ指向を変えていくべき。日本という国は一度レピュテーションが崩れると、すべてが否定されてしまう傾向があると思う。まずはネガティブなイメージを脱却することが第一だ」

2017年のバブルで広がった仮想通貨やICOに対するネガティブイメージを払拭することが大きな役割だと強調する。そのためには、仮想通貨・ブロックチェーンに関する正しい知識を啓蒙していくことが近道だと考える。

桂城氏にとって、スイスで感じたことが大きなヒントとなった。

「スイスの旅行会社を訪れた時にヒッピーのような経営者の人と出会った。クリプトをやっているという話をしたら、2時間もブロックチェーンや仮想通貨について議論できた」

スイスでは「クリプトバレー」と呼ばれる地域があるなど、政府を挙げて仮想通貨・ブロックチェーンを推進している。国民の中でも仮想通貨・ブロックチェーンを学ぼうとう意識が高かった。

「国民投票があるスイスだからこそ、一人ひとりが知識を持とうとしている。ちゃんと知識があればこそ、何を規制すればいいのか、何がリスクになるのかがわかる。すべてがリスク、すべてが悪という認識を改めることが必要だ」

19年度中に母体となる組織づくりに着手

AIreとして、2019年度にはインキュベーション事業の母体となる組織づくりを進めていく。それと同時に勉強会の立ち上げも計画している。まずは年内にも第一回の勉強会を開始し、月1ベースでの開催を目指す。

参加者も広く募っていく考えだ。前述のように、国内外の企業や行政、専門家といった人々に幅広く参加を呼び掛けていく。

桂城氏は、今後ブロックチェーンを活用する裾野は広いと考えている。たとえば、その1つが地方創生だ。「地方自治体によるトークン発行があてはまるはずだ」(桂城氏)。トークンが信用を可視化するものであれば、最も適しているのが地方だとみる。固定ファンを持ち、発行母体としての信用もある地方自治体が、トークンエコノミーを作り出す未来は「理論的に成立する」と予測する。

ブロックチェーンやトークンを活用する場が広がれば、それだけコミュニティの裾野も広がる。新規参入者も参加しやすく、フラットな議論ができる場こそが、AIreの目指すコミュニティの形だ。

また海外からの参加も重要だと考えている。日本に進出したい海外企業が、日本の文脈を理解し、国内関係者とコミュニティを創っていくことも、日本が世界に開かれていく道と考えている。

将来的には、インキュベーションの母体となるコミュニティ自身がブロックチェーンで活用するモデルも考えている。

「たとえば、コミュニティの中での意思決定や投票にブロックチェーンを活用する方向もあると思う。社会実装を目指すならば、まず自分たちで実証実験も兼ねて技術を使っていきたい」

桂城氏は「理想主義的過ぎるかもしれないが、大きな夢やゴールを掲げなければ、社会を変えていくことばできない」と強調する。桂城氏は「長い道のりになると思う」としながらも、新たなコミュニティ創りに意気込んでいる。

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