人工知能(AI)とブロックチェーン技術は「転換点」に達し、既存の産業を縮小させる一方で、新たな産業を創出する。ムーディーズ・インベスターズ・サービスが9月6日に発表したレポートで、このように予測している。

レポートの著者たちは、AIと分散型台帳技術(DLT)の複合的な影響は「企業のバランスシートをはるかに超えた」影響を及ぼし、既存の産業が「縮小または完全に消滅し、新たな市場をゼロから創出する」と予測している。レポートは以下のように指摘する。

「歴史は、革新的な技術が既存の産業を縮小または完全に消滅させる可能性を示してきた。…AIはコンテンツ生成、モビリティ、教育、ヘルスケア分野などで新たなセクターの出現を促すだろう。DLTはすでに仮想通貨や分散型金融の出現をもたらしているが、これらのセグメントの実績は過去18カ月間でばらつきがあった」

レポートはまた、AIがタスクの自動化により生産性を向上させ、多くの国での高齢化と人口減少の影響を部分的に相殺することで経済成長を促すと強調している。一方、DLTの利点には、金融包摂の促進や決済システムの近代化が含まれる。しかし、これらの利点が現れるのはおそらく次の10年以降となるだろうと予測する。

How AI and DLT will transform organizations' strategies. Source: Moody's Investors Service

世界の金融市場への影響について考えると、著者たちはAIとDLTがプロセスの効率化と新製品の創出を通じて金融機関の信用プロファイルを強化すると指摘している。ただし、金融、規制、サイバーセキュリティのリスクが適切に対処されることが前提だ。

「今後の変革はプロセスの効率化と新製品をもたらすが、既存のリスクを増大させ、新たなリスクを生みだすだろう」とレポートは述べており、「リスクと機会の相互作用は、セクターや発行者の戦略により影響の度合いが異なる5つの広範なチャネルを通じて、債務発行者の信用プロファイルに伝達される」と付け加えている。

これらの技術によって影響を受ける信用リスクの指標には、ビジネス戦略と実施、財務パフォーマンス、ガバナンスとリスク管理、産業や経済レベルの変化が含まれる。「テクノロジーの変化の全体的な経済・金融効果は、それらが引き起こす政策や戦略の変化を含め、ポジティブである可能性が高いだろう。しかし、進歩のコストと利益が人々、企業、国々の間でどのように分配されるかには大きな違いがあるだろう」と結論づけている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン