国際決済銀行(BIS)が実施した調査によると、世界中で数多くの中央銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の展開を検討していることがわかった。
BIS金融経済局が6日に発表した論文によると、21年10月〜12月に調査を実施した中央銀行81行のうち90%が「何らかの形でCBDCの作業に取り組んでいる」としており、そのうち26%がCBDCの試験運用中、60%以上がデジタル通貨に関連する実験あるいは概念実証中であると述べている。
BISは、CBDC関連への関心の高まり(2020年の約83%から増加)は、COVID-19のパンデミックの最中におけるデジタルソリューションへの移行と、ステーブルコインやその他仮想通貨の成長が引き金となった可能性があるとの見解を示した上で、「世界の中央銀行の2/3以上が、短期または中期間のうちにリテールCBDCを発行する可能性が高いか、あるいはおそらく発行することを検討している。また、ホールセールCBDCの取り組みは、越境決済の効率化を理由に一層拍車がかかっており、中央銀行は、限られた稼働時間での決済システムや取引の流れにかかる手間など、現在抱えている重大な問題点をCBDCによって緩和することが可能であると考えている」と述べている。
Nine out of 10 respondent #CentralBanks are engaged in some form of CBDC work, according to the BIS CPMI survey. The share developing or piloting CBDC has almost doubled on year, to 26%, while six out of 10 are doing experiments or proofs-of-concept https://t.co/aQhcWCT5g0 pic.twitter.com/7Tk2UkZpVv
— Bank for International Settlements (@BIS_org) May 6, 2022
この論文では、20年10月のバハマのサンドドル発行を皮切りに、その1年後に発行されたナイジェリアのeナイラ、加えて21年の東カリブ通貨同盟のDキャッシュや中国のデジタル人民元の開発などのCBDCの台頭が引用されている。BISの調査によると、中央銀行の70%以上が、既存の決済システムに対して「民間セクターとのコラボレーションや相互運用」を取り入れたCBDCも検討しているとのことである。
ドイツ連邦銀行幹部のブルクハルト・バルツ氏は、4日、「CBDCが適切に設計されていれば、デジタルに精通していないグループなど社会全体の全ての人口グループに、安全、高速、効率的なデジタル決済手段の利用を提供することができる。また、CBDCがオフライン決済にも対応が可能であれば便利になり、現金に代わって費用対効果の高いデジタルを選択することで人々は恩恵を受けることになるであろう」と述べている。
調査の対象となった81ヶ国(世界人口の76%を占める)のうち25ヶ国は米国や日本などいわゆる「経済先進国」であり、その大部分が法定通貨と連動し、裏付けられたステーブルコインを決済手段とする「可能性がある程度ある」と述べている。それとは対照的に、回答した国全体の60%以上が、仮想通貨は国内決済に関して「取るに足らないか、役に立たない」と回答しており、また約40%が越境決済への仮想通貨の利用についても同様の回答を寄せている。