カナダの主要大学が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発を中心とする新しい研究をカナダ中央銀行(BoC)に提出し、この分野で進行中の技術革新を強調する形となった。

この研究は、BoCが大学4校と政府発行の仮想通貨の計画の可能性について探る取り組みに続き、昨年開始されたものである。木曜日には、合計3つの案が同時に発表されており、各々の案は、明らかにブロックチェーン技術の応用を基盤としたものであった。

カルガリー大学が提出した案では、「分散型台帳技術(DLT)と高度な暗号プリミティブによる電子マネー(「e-キャッシュ」)スキームの組み合わせ」が活用されている。この案は、特に僻地の地域社会におけるCBDCへの普遍的なアクセスを遍く促進することだけでなく、カナダ市民の自由を維持しつつ、強力なプライバシーの保護を確保することに焦点を当てている。

モントリオールのマックギル大学の案は、「送金者と受領者の間の非対称的なプライバシー」に焦点を当てており、研究者たちは、価格の歪みを回避し、お金の標準的な需要関数の整合性を促すためには、プライバシー保護が欠かせないと説明している。

トロント大学とヨーク大学が共同提出した案は、Know Your Customer(本人確認)に裏付けされたアプローチを促進することで、誰もが金融サービスにアクセスできるようにする金融包摂を拡大し、モノのインターネットや人工知能などの破壊的な技術の出現期における経済的主権を保護するというものである。このアプローチによれば、デジタルルーニー(カナダの1ドルコイン)への展開は、2つの段階を経て行われ、まず「認証プロトコルによるデジタルマネー」の確立、続いて「共通リソースとしてのブロックチェーン」を基盤とするプログラム可能な電子マネー、の順となるとしている。

BoCは、研究報告の紹介の中で、「中央銀行デジタル通貨対策を強化している」ことを認めたものの、現在のところ「それを発行する予定はない」としている。とは言うものの、BoC内部では、遅かれ早かれ、カナダは、いわゆる「デジタルルーニー」が必要になると頑なに主張する声が一部で上がっている。

カナダ中央銀行のティモシー・レーン副総裁は、水曜日の演説の中で、COVID-19のパンデミックがデジタル通貨の必要性を加速させているとし、「このパンデミックにより、私たちが予想していたよりも早く決断を下す局面が来るかもしれない。」 と、述べている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン