分散型金融(DeFi)は、仮想通貨(暗号資産)スペースで急速に成長しているセクターであり、DeFiエコシステムの取引高は一般的な仮想通貨市場に比べてまだ少ないが、レンディングと預金の新しい方法は、注目と称賛を集めている。

DeFiは大きな可能性を秘めており、2020年には多くのDeFiベースのトークンが上昇している。一部のトークンは過去5日間で60%を超える上昇を示しており、マーケットに反映され始めている。

デルフィデジタル(Delphi Digital)のレポートによると、DeFiスペースで人気のあるトークンは、長期および短期で大きな利益を出している。たとえば、ロンドンを拠点とするDeFiレンディングプラットフォームであるAaveは今週、ビットコインを大幅に上回り、先週比で66.46%上昇した。メーカーダオ(MakerDAO)が25.6%上昇するなど、ほかのDeFiトークンも大幅に上昇している。

DeFi Tokens performance

出典: Delphi Digital DeFiトークンのパフォーマンス

カイバー(Kyber)やバンコ―ル(Bancor)、ルーピリング(Loopring)といった分散型取引所(DEX)トークンも2桁の上昇を示している。ビットコイン(BTC)に比べれば毎日の取引高は少ないものの、こういったDeFiトークンが堅調な成長を示している理由は一体何か?

イーサリアム2.0がやってくる

ビットコインと同様に、イーサリアムネットワークはスケーラビリティの問題に対処しようとしている。DeFiのアクティビティの大部分がイーサリアムブロックチェーンを基盤としていることを考えれば、DeFiの成長に大きな影響を与える可能性がある。

イーサリアムは様々な段階でスケーラビリティに対処しようとしているが、イーサリアム2.0のアップデートが最も大きな影響を与えることになるだろう。

アップデートはこの夏以降に行われる予定だが、DappRaderのコミュニケーションディレクターであるジョン・ジョーダン氏が説明するように、これはDeFiスペースを含むイーサリアムエコシステム全体に大きな影響を与えることになる。

ジョーダン氏は、コインテレグラフに次のように語っている。

「イーサリアムのDAppsを理解しやすくし、使いやすくするための2つの大きな壁は、ガス料金とブロックタイムの遅さだ。イーサリアム2.0はこれらを根本的に解決し、イーサリアムのDAppsを、私たちが慣れ親しんでいる一般的なウェブアプリやモバイルアプリを利用しているように感じさせていくれるだろう」

イーサリアム2.0は、ネットワークの現在および将来の多くの問題を解決することを目的とし、シャーディングとステーキングソリューションを導入する。このソリューションは、アップグレードのフェーズ2をリリースする必要があるため、2021年以降に完全に実装される予定だ。

予定されているフェーズ0の実装はネットワークに大きな影響を与えるとは予想されていないが、イーサリアム2.0のステーキングの最初のリリースとなる。これは投資家がDeFiに強気になるのに十分な理由かもしれない。

ネットワークアクティビティは史上最高に

イーサリアムのトランザクションやスマートコントラクトといったネットワークのアクティビティは市場最高に達している。デルフィデジタルによれば、ネットワーク上のガスの使用量は2020年はじめ以来、増加している。

ETHガスステーションによれば、ガスの利用はテザー(USDT)と分散型取引所が牽引している。その結果、メサーリの最近のレポートによると、DEXトークンは中央集権型の取引所のトークンよりも優れたパフォーマンスを示している

DEX tokens outperform centralized counterparts five fold

出典: Messari

DeFiのネットワークでのユースケースの増加は、これらのトークンが価格上昇している理由を説明する可能性がある。実際、Aaveは先週最も優れたパフォーマンスを示したトークンであり、そして8100万ドルの預金がロックされた。

より多くのプロジェクトとユーザーは強気のシグナル

データからも、DeFiセクターがますます興味深い投資手段になりつつあることを示している。レンディングによってユーザーを高い利息を提供し、アプリにロックされた資金は増加している。

Total Value Locked (USD) in DeFi

出典: DeFi Pulse DeFiでロックされた資金(米ドル換算)

DeFiプロジェクト「ゼリオン(Zerion)」の創設者であるエフゲニー・ユルタエフ氏によれば、DeFiは飛躍的な成長を遂げている。ユルタエフ氏はツイッターで、新しいDeFiアセットの数が約2倍となり、1000を超えたとする画像を示した

New DeFi assets per month

(1ヶ月あたりのDeFiアセット)

デューンアナリティクス(Dune Analytics)のデータによると、全体的なアクティビティやプロジェクトの数だけでなく、DeFiユーザーの数も過去最高に達している。

Ethereum DeFi users over time

出典: Dune Analytics イーサリアムDeFiのユーザー

DeFiの将来は有望か

採用の拡大は、DAppsとイーサリアム全体にとって素晴らしいサインだが、イーサリアムにとってはスケーリングが差し迫った問題でもある。価格の上昇は、イーサリアムがこの問題に対処する能力に期待していることの現れだろう。

だたし、イーサリアム2.0のDeFiへの影響を巡っては、ステーキングとレンディングの関係が今後数年で問題になる可能性がある。Aaveのスタニ・クレホフCEOは、コインテレグラフに次のように語っている。

「現時点ではこの点について話すことは難しいが、それはインセンティブ次第だろう。ネットワークを保護するためのインセンティブがAaveに預けて利回りを稼ぐよりも高ければ、影響があるだろう。ネットワークが安全にあれば、インセンティブが低くなるので、レンディングはETH2.0のステーキングと競合できるだろう。時が来ればわかる」

イーサリアム2.0の最初のバージョンは、DeFiに対する強気の地合いを形成し続ける可能性があるが、将来的にはステーキングが大きな利益をもたらすようになれば、この関係は将来的に変化する可能性がある。

ステーキングがポピュラーなものになっても、両者が共存する可能性もある。げんじてんでは、イーサリアム2.0に多くの期待が集まっており、そしてDeFiも同じだ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン