2019年6月、仮想通貨によるマネーロンダリング(資金洗浄)防止に向けた国際的な対策としてFATF(金融活動作業部会)が参加メンバー国に対してガイダンスを発表した。焦点になったのは、トラベル・ルール。仮想通貨取引所やウォレット業者などを含む仮想資産サービス提供者(VASP)に対して取引に関する顧客情報の収集と送付を要求するルールだが、技術面などから課題があった。

あれから1年。

VASPはトラベルルール対策を進められているのだろうか?6月24日にはFATFの総会が開かれる予定で仮想通貨業界でのトラベル・ルール導入の進捗が俎上に載る。

日本の業界関係者は、「FATFは各国から収集した論点をもとに何らかの指針を示す見通し」とし、「この指針にある程度従う形で全世界のVASPにおいてシステムやオペレーションプロセスの導入が行われる想定」と話す。最終的には来年か再来年になると予想した。

FATFが定めるトラベルルールの遵守に向けた技術開発を手がけるクールビックス(CoolBitX)のマイケル・オウCEOは、コインテレグラフジャパンに対して、今月のFATF総会では仮想通貨業界の進捗に対して高い評価が与えられるだろうと予想した。

200カ国中20カ国も...

 オウ氏によると、FATFのメンバー200カ国中トラベル・ルールを反映した規制を発行できたのは20カ国ほど。ただ、多くは「大きな前進」を見せている。

「FATFは過去1年間での仮想通貨業界での進歩に満足すると思う。クールビックスはFATFの業界グループの参加者の1つだが、規制当局と業界側が歩調を合わせ始めているのを見て感心した」

その上で同氏は、今回の総会ではFATFはガイダンスが期待するものを繰り返すだろうと予想。新たに関連規制を発表する国もあるはずだとみている。「より多くのVASPが具体的なデッドラインに向けて動き出すだろう」(オウ氏)。

「サンライズ問題」

オウ氏によると、サンライズ(日の出)問題とは、異なる国で異なる時間に規制が始まり、それぞれの国が異なる解釈をする可能性を指す。

「現在、トラベルルールの解決策は複数存在する。それぞれ適切なデューデリジェンス(顧客確認)の方法と実践を要求する。これらは時間がかかることだ。ユーザー側に求める行動変化は解決策によって異なる。VASPたちはマーケットにおける異なる解決策について考慮に入れて管理する必要があるだろう。放置しすぎると、時間に追われることになるだろう」

クールビックスは、トラベルルールの遵守に向けて顧客データを共有するための暗号化されたポータルAPI「シグナ・ブリッジ(Sygna Bridge)」を手がける。2020年4月以降にサービスを立ち上げた。現在複数の国で複数のVASPが利用開始しているという。同氏は、年末までにシグナ・ブリッジや他の解決策を採用し始めるVASPは急速に増えるとみている。

昨年10月、クールビックスは、SBI VC、コインチェック、ビットポイントとその他の匿名の取引所と覚書を交わした