来た、見た、書いた!

9月15日、イーサリアムの 「Merge(マージ)」 が完了した。この日、イーサリアムは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)のブロックチェーンから、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のブロックチェーンに移行した。PoWブロックチェーンの最後のブロックでは、Vanity Blockという新進企業がNFTの鋳造を行い、当該トランザクションのみが記録されるよう取り計らわれた。Vanity Blockは、この記念すべき最後のPoWブロックに永遠に文字を刻む権利を得て、植物と幻覚剤に関する研究で知られる思想家、テレンス・マッケナ(Terence McKenna)の言葉を引用した。「人が契約を果たせば、自然もまたその契約を果たす。見果てぬ夢を抱いた人間に、世界は救いの手を差し伸べる。最大の真理だ」

Vanity Blockには、売名の目的があったかもしれない。だが、彼らはイーサリアムの歴史上最も重要なアップグレードを見事に彩ってくれた。イーサリアムの将来性を考えれば、同アップグレードは仮想通貨の歴史で記憶され続ける可能性が高い。

私たちを人間たらしめるのは記憶、それも深い記憶だ

人類は有史以前から記憶を引き継ぐため、洞窟に壁画を描いたり、荒縄の結び目に意味をもたせてきた。部族や氏族ごとに、過去を保存するための言語が生まれた。言葉はやがて活字になり、歴史が生まれた。

情報化時代に突入すると、歴史的記録を伝えるメディアはインターネットがとって代わった。そして、ブロックチェーンの発明により、永久不変の 「ブロック」 の力によって、人類は地学的ともいえるレベルの記録の永続性を獲得した。

ブロックチェーンの誕生は、人類にとってタイムリーだったといえる。「歴史の呪い」に対する決定的な解決策となりうるからだ。

「歴史の呪い」には、2つの意味がある。

中央集権的な歴史記録:古代から現在に至るまで、歴史は中央集権的な権力によって一元的に管理されてきた。むろん非公式な歴史や民間の伝承はあったが、それらは一部のエリートがつくった「正史」の陰に隠されてきた。情報化時代も事情は変わらない。むしろ強力な中央集権型メディアがこれまで以上に力をもち、呪いの力は悪化した。暗号技術はこの状況を打開し、いかなる政治権力もおよばない記録手段として期待されている。

情報化時代における圧倒的な情報量と複雑さ:情報化時代において、発言力の弱い一般人にとって、歴史の真実を主張することは不可能に近い。何世紀か経ったあと、私たちが生きた証はほとんど残っていないかもしれない。人類は自分の歴史を主張する手段を再び失ってしまった。

HistoryDAOは、Web3とブロックチェーン技術によって、これら2つの呪いを解決することを目指している。

ブロックチェーンで歴史を運ぶ

ヘロドトスは亡命中、紀元前5世紀にペルシャ帝国を旅したときに見聞したことを独自の視点から記録し、『Ἱστορίαι(歴史)』を著した。これは西洋史上で最古の完全な歴史的記録である。ローマの雄弁家キケロは彼を「歴史の父」と呼んだ。

ヘロドトス自身は自らを客観的であろうと努めただろうが、残念ながら彼の記録したことは、彼の主観からまぬがれていない。歴史的記録には、公平性を欠いているのが通常である。

「歴史は勝者によって書かれる」という有名な言葉がある。事実はそれを経験した人しか知らない。古代ギリシャの歴史家トゥキディデスでさえ、歴史の真実性の問題には難儀し、厳密なデータ収集と因果分析で立ち向かった。彼は「記述した出来事は、すべて自分自身の目で目撃したものか、直接見た人から直接聞いたものに慎重な検討を加えたものである」と述べ、意識的に第三者の主観を排除しようとした。

ヘロドトスとトゥキディデスは偉大な歴史家だったが、では、われわれ一般人は歴史の目撃者として、どのように歴史に関与できるだろうか。

ブロックチェーンに、その答えがあるかもしれない。

ビットコインがマイニングを分散化しているように、HistoryDAOは歴史的記録の力を分散化する。

ブロックチェーン技術のおかげで、HistoryDAOはイーサリアムとBNB Chainの力を借りて、あらゆる種類の記録のNFTを発行、照会、取引することができる。

  • HistoryDAO は、ユーザーが多次元情報を記録できるように、様々なデータ形式の記録をサポートする
  • HistoryDAOにはNFTの流通市場があり、ユーザーは効率的に場面や歴史を発見、評価、取引、管理し、最終的な価値を評価することができる
  • HistoryDAO はコミュニティによって完全に所有および管理されており、DAO の開発はコミュニティが設定するアジェンダに基づいて推進される

 一言で言えば、HistoryDAOは、DAO、すなわち分散型コミュニティ組織によって運営されるNFTプラットフォームである。

HistoryDAOは個人のために歴史を記録するサービスを提供するが、同時にDAO組織によって合意された歴史も有する。コミュニティは、毎週、毎月、毎年の、歴史的な数量、歴史的なプロセス、歴史的なアルバム、歴史的なイベントを記録する責任を負っている。

では、HistoryDAOはどのようにプロダクトを整理し、サービスを提供しているのだろうか?
HistoryDAOの機能とサービスを、3つの側面から詳しく検討しよう。

NFTの発行市場と流通市場

前述の通り、HistoryDAOではユーザーが様々な歴史的情報を記録することができ、その情報はNFTという形でユーザーのブロックチェーンウォレットに保管される。その過程はオープンかつ透明で、100%の改ざん防止措置がとられている。

ユーザーが記録するデータは種類を問わない。友人や恋人との楽しい思い出、ゲームにおける名シーンなど、人生におけるほんの断片でも構わない。未来の人々はHistoryDAOに記録されたNFTを通じて、21世紀に生きた人々の生活を簡単に再現することができる。未来人は欲しい記録を正確な日付つきで無傷の保存状態で手に入れることができるのだ。それは、私たちが古代中国のお祭りを知ろうとするとき、古めかしい地図とくびっきりにならなければならない労力に比べれば、造作もないことだ。

HistoryDAOユーザーはNFTを鋳造する際、0.01 ETHをサービス手数料とガス代に分割して支払う。サービス手数料は、DAOによって管理されている市場流動性準備金(DAO treasury)に直接振り込まれる。

ユーザーによって鋳造された歴史的NFTは、流通市場で取引することができる。その際、HistoryDAOマーケットに取引額の2%を手数料として支払うが、これもDAO treasuryにも直接振り込まれる。

HistoryDAOマーケットでは、さまざまな歴史的NFTも取引される。NFTをソートすれば、該当するNFTの取引履歴、ページビュー、お気に入りなどの複数のプロパティを参照できる。各歴史的NFTの露出を可能な限り公平にするため、随時アルゴリズムの変更がDAOで提案され、コミュニティでサポートされる。

イニシャルNFTオファリング(INO)

歴史記録をより効率的にするために、HistoryDAOは「イニシャルNFTオファリング」(INO)の概念を導入している。すべてのユーザーがNFTコレクションにトピックを提供することができ、これは他のコミュニティメンバーとNFTのコレクションを共同構築することによって行われる。

スポーツイベントを例にとろう。

バスケットボールなどのスポーツシーズンにおいて、試合ごとにNFTを作成し、シーズンが進むにつれて、写真、動画、選手データなどの情報を使用して、各試合の詳細を記録することができる。もちろん、素晴らしかった試合のNFTは通常の試合のNFTよりもコレクション性が高く、決勝試合のNFTはプレーオフよりも価値が高い。ユーザーはシーズン後いつでも、名試合における最高の瞬間から、NFTを作成することができる。INOキャンペーンは、ブランドにとって過去のイベントを再利用するものでなので、費用対効果が非常に高い。

もちろん、これは広大なスポーツの世界における一例にすぎない。HistoryDAOで展開されるINOキャンペーンは、あらゆるカテゴリで実施することができる。

革新的なマーケティングアイデアを持つブランドは、HistoryDAOのメリットをフルに活用することができる。NFTを使って記念キャンペーンを実施するだけでなく、取引やオーディエンスとのエンゲージメントを通じて、ファンとの良好な関係をより長く存続させることができる。

DAOとトークン

他のNFTプラットフォームとは異なり、HistoryDAOはコミュニティとの対話とコミュニティの力に重点を置いている。つまり、HistoryDAOは歴史を記録するためのプラットフォームであって、単なるNFTの取引市場ではない。そのため、HistoryDAOは、Redditのような強力なコミュニティ製品を構築すること目指しており、製品設計におけるコミュニティ活動のアルゴリズムには最大限の注意を払っている。

コミュニティの負の側面として、歴史的記録の中央集権化を勧めたり、言論の自由を妨げる力も持ってしまう。分権化されたコミュニティであれば、強力な利権による歴史的記録の検閲に抵抗することができるだろう。分権化された歴史的記録に対する人々の信頼を高め、ひいてはHistoryDAOのNFTの価値を高めることにもなるはずだ。

HistoryDAOのガバナンスは、ネイティブトークン$HAOによって行われ、$HAOの保有がDAOの参加資格となる。DAOのコミュニティメンバーになると、提案の送信、コメント、投票などのガバナンスアクションを実行できるようになる。

ガバナンスに加えて、$HAOはHistoryDAOプロダクトのあらゆる局面で適用される。たとえば、マーケットでNFT取引を行う場合、支払いに$HAOを使用すれば、通常2%の手数料が1.5%となる。

目撃から歴史の記述へ:HistoryDAOはいかにWeb3を強化するか?

歴史が人類全体にとって、そして一人一人の人間にとって特別な意味を持つことは疑いがない。唐の太宗・李世民が言ったように、「銅を鏡とすれば、衣服を正すことができる。人を鏡とすれば、損得を知ることができる。歴史を鏡とすれば、栄枯盛衰を知ることができる」のである。

 歴史は私たちが前進するためのいしずえである。

だが、ひとたび利権が形成されると、スキャンダルを隠蔽したり、記録を私的な目的で歪曲したりして、歴史的記録を修正しようとする。いずれにしても、歴史的記録は主観的な感情に流され、本来の公平性を失うこととなる。

いま、HistoryDAOはブロックチェーンとNFT技術によって、歴史的記録の欠点を克服しようとしている。ビットコインがマイニングを分散化するように、HistoryDAOは歴史の力を分散化する。

分散化され、改ざんされにくい歴史記録は、歴史を多角的に記録し、歴史記録の公平性と真実性を追求する。

これこそが、Web3が提唱する新時代の精神の具体化である。Web3は、多様なコミュニティの文脈において、個人の主権と個人の価値を尊重している。歴史はもはや勝者によって書かれることはなく、すべての人間が平等に参加することができると私たちは信ずる。

現実世界のトピックにつながるNFTは、今後Web3と現実世界との関連性を高め、より多くの人々がWeb3の世界を積極的に理解するための触媒となるだろう。現実世界の歴史的記録を通じてNFTの導入を実現することは、Web3の世界のさらなる発展と成熟を促進するはずだ。

さて、HistoryDAOが主導するINOキャンペーンでは、諸ブランドに強力なマーケティングサポートを提供する。Web2のブランドがWeb3のメソッドで販売されるようになったわけだ。ティファニーのCryptoPunksカスタムNFTの発売や、スターバックスのStarbucks Odysseyプログラムはその好例といえる。

実際、Web3の影響力が増すにつれ、より多くのWeb2ブランドがマーケティングキャンペーンやコミュニティの成長にWeb3を利用している。その活用方法が、マーケターの腕の見せどころになるだろう。Web2にどっぷりのブランドにとっては、まずはシンプルで直感的なWeb3マーケティング計画を立てれば十分だ。

HistoryDAOが立ち上げたINOキャンペーンは、このようなWeb3新規参入者のニーズに応えている。同ニーズは、HistoryDAOの今後の成長の主な原動力となるだろう。

石に、パピルスに、そしてブロックチェーンに

DAOの歴史的使命は、あらゆる中央集権化された権力から独立することである。そこには「誰もが歴史の記録者となれる」という理想がある。HistoryDAOの本質は、歴史的記録の権限の分散化を実現することにある。

これはまぎれもなく世界史的な意義のある大事業だろう。Web3の精神を昇華させる新しいパラダイムである。Web3は分散型金融の次元をはるかに超えて、複眼的な思考、アプリケーション、および人間文化への統合をも含んでいる。ブロックチェーン技術がもたらす分散型の歴史記録の力を手に入れることで、世界中の誰もがカエサルのように「来た、見た、書いた(記録した)!」 と感激をもって言うことができるようになる