世界38ヵ国で展開する、世界最大級の総合人材サービス企業ランスタッドは、スマートコントラクトを利用可能なエンタープライズ向けブロックチェーン「サイフェリウム(Cypherium)」を用いて、業務ワークフローの自動化を選択したという。グーグル運営のクラウドサービス「グーグル クラウド プラットフォーム(GCP)」が2月28日、これら人材・資格管理(HR)に関係する事務プロセスの動作環境として同クラウドを採用したと明らかにした。
サイフェリウム
サイフェリウムは、セキュリティ脅威の軽減と相互運用性に加えて、毎秒数千のトランザクション(取引)に対応できるスケーラビリティ(利用者増に対する適応能力)の改善、分散化を実現することを目的としているという。
また、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)とHotStuffの2種類を併用するハイブリッドコンセンサスメカニズムを採用。ブロック提案者の選出にPoWを利用する選挙チェーン、HotStuffを利用するトランザクション検証チェーンで構成されているそうだ。
HotStuffは、仮想化ソフトウェア企業VMwareの研究部門が2019年に論文を正式公開したBFT(ビザンチン・フォールト・トレランス)コンセンサスアルゴリズムのひとつ。フェイスブックの仮想通貨リブラのコンセンサスプロトコル「LibraBFT」の派生元としても知られている。
またサイフェリウムは、Android用アプリ動作環境(Dalvik)を基にした、スマートコントラクト実行環境CVM(Cypherium Virtual Machine)を用意している。
標準化団体W3Cの「非中央集権型識別子(DIDs)」に準拠
個人のプライバシー保護においては、サイフェリウムは暗号化ハッシュ、メタデータ、デジタル署名を組み合わせて、機密データ自体を保存する必要性をなくせるようにしているという。
さらに、ウェブ関連の標準化規格策定団体W3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)が、SSI(自己主権型アイデンティティ。Self-Sovereign Identity)と呼ばれる個人情報ポリシーのもと策定している「非中央集権型識別子(DIDs)」も組み込んでいるそうだ。
検証の自動化
ランスタッドは、HRに関連する支払いなどの事務処理、学術・専門資格と個人IDの検証においてブロックチェーンを使用することで、従来の手作業が原因とするミスを大幅に削減し、時間を節約できると考えているという。
ただしこれら情報の検証は、サイフェリウムのパブリックチェーンにデジタル証明書(のハッシュ)を公開する必要がある公的機関など、公式ソースとの協力次第になるようだ。
グーグル・クラウドによる声明の中で、ランスタッドのグローバル・コラボレーション・マネージャー、フランク・ファン・デル・バイル(Frank van der Bijl)氏は、何よりも簡単な解決策を見つけたいと述べた。
「グーグル・コンピュート・エンジン(GCP)とサイフェリウムは、我々にとって理想的な組み合わせであると証明されている。両方に数回クリックするだけでアクセスできる。自分ですべてを構築したり、他のアプリをインストールしたり、メンテナンスしたりすることを心配する必要がない」
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン