毎日の取引量ベースで世界最大のビットコイン取引所であるビットフィネックスが、「@Bitfinex'ed」を含むネット上の批判者たちに対して法的手段を講じるために法律事務所を雇ったことがわかった。

Bitfinex Accounts For Over 12 Percent of Global Bitcoin Trades

 ビットフィネックスの法務責任者であるスチュアード・ホグナー氏によると、「悪意のある行動をとる人物によるクレームは全くの虚偽であり、仮想通貨の生態系を攪乱するために発されてものだ。結果的に、ビットフィネックスではこうした攪乱者とその共犯者に対し、我々が持つ全ての法的権利と対処法を行使することを決定した」。

 仮想通貨関連のファンドを経営しておりグーグルグラスの開発者でもあったカイル・サマニ氏は、今回の訴訟の動きについて、ビットフィネックスは決定的な間違いを犯している、とコメントした。

「ビットフィネックスは監査ではなく脅しを選んだ」

 ここ数カ月、ビットフィネックスと同社が運営していると噂される仮想通貨ティーザー(Tether)をめぐる問題がネット上で取り沙汰されてきた

 ティーザーは米ドルなどの法定通貨に連動しており、ティーザー社によって管理される法定通貨の準備金に裏打ちされていることになっている。ところがティーザー社は、保有するとされるドル準備金への第三者監査にずっと応じてこなかった。@Bitfinex'ed等の批判者が、発行されたティーザーの一部がドル準備金によって裏打ちされていないのではないかと懐疑の目をむけている原因だ。

 ライトコインの創始者であり、元コインベース幹部だったチャーリー・リー氏は1日、ビットフィネックスに対して第三者による監査をうけいれるように促している。

 「銀行口座にあるドルに裏打ちされていないUSDT(ティーザー)の発行が最近の(ビットコインの)値上がりを助長しているという恐れが広まっている。ビットフィネックスとティーザーは、第三者による監査をうけいれ、準備金の量を証明すべきだ。正しいことをしてほしい」とツイッターでのべている。

 第三者による監査は、ビットコイン価格が操作されているのではと騒ぐ多くの投資家たちを落ち着かせるはずで、ビットフィネックスと仮想通貨界にとって良いことだ。またティーザー保有者にとっても同通貨がきちんとドルに裏打ちされていることを再確認するよい機会になる。

 だがサマニ氏が指摘するように、ビットフィネックスは第三者による監査ではなく、批判者たちを訴えることを選んだ。

 同氏は「詐欺の嫌疑をかけられた仮想通貨取引所には二つの選択肢がある。①透明性にコミットし、言葉だけではなく非の打ちどころのない監査を実施する。②批判者に訴訟をちらつかせ脅す。ビットフィネックスは②を選んだ。ブラボー、ビットフィネックス」とツイートしている。

ドル準備金に問題があった場合のリスクは大きい

 これまでもアナリストや識者はティーザーのドル準備金に対して疑念の目を向けてきた。

 ブロックチェーンなどの技術関連コンサルタントを務めるティム・スワンソン氏は、もしティーザーが1対1の比率でドル準備金に裏打ちされていなかった場合の深刻な影響について懸念を表明して「(ティーザーは)なにかが根拠になっているのだろうか?1対1の比率になっていなければ、もしどこかの取引所が倒れた場合、影響が広まるリスクはどれくらいだろうか?」とのべている。

“Is there anything backing this? If these aren’t backed 1-to-1, then what is the contagion risk if one of these exchanges goes down?”

 ビットフィネックスは現在世界で一番大きな仮想通貨取引所であり、ティーザー自体が900億円の時価総額を持つ仮想通貨になっている。業界全体への影響を考えて、ビットフィネックスとティーザーは数か月のうちに第三者による監査を受け入れて支払い能力を証明すべきだ。さもなくば、世界の仮想通貨コミュニティー内でさらに大きな物議をかもし、誰も利さないだろう。

「市場を攪乱するために綿密に計画された攻撃」

 先月19日、ビットフィネックスは綿密に計画されたハッカー攻撃の標的になっていることを明かした。一方で、法定通貨と仮想通貨の出金や取引所としての支払い能力には影響がないとし、ネット上での流布していた不正確な報道を打ち消した。

 同社はツイッター上の公式アカウントで声明を発表し「ビットフィネックスは事業体として支払い可能な状態(ソルベント)であり、法定通貨と仮想通貨の出金は通常通り機能している。恐怖心と疑念が高まっているが、市場を攪乱するために綿密に計算された攻撃だと見ている」とした。

 現在、ビットフィネックスが採用したスタンスは取引所を仮想通貨界の攪乱者と不正確な疑惑から守ることのようだ。

ティーザーの利用規約「ユーザーに換金を求める権利はない」

 以前から、ティーザーの公式サイト上に掲載されている利用規約によるとティーザーが「お金」ではないことは既に明文化されており、批判の対象になっていた。同サイトによると、

ティーザーを保有すると、これを取引したり、保持したり、ティーザーの受け取りを認める人へ支払いすることができる。しかしティーザーはお金ではないし、金銭的な道具でもない。また貯蔵された価値でも、通貨でもない。ユーザーは保有するティーザーを現金と交換したり、買戻しを求める契約上・法律上あるいはその他の権利を有さない。我々はティーザーの買戻しや現金との交換に関する権利を保証しない。また、ティーザーを購入、取引、売却、払い戻しする上での損失に対して補償しない。

 ティーザー社はこれに補足して、法律的にはドルとの交換を保証できないが、ユーザーからの換金リクエストを尊重する強い意志があることを明らかにしている。

我々の利用規約は様々な不満をもつものによって捻じ曲げて解釈され、ティーザーが運営会社の悪意や気まぐれによって法定通貨によって払い戻しされないことがあるとされている。これは正しくない。我々は特定の顧客に現金払い戻しを行わない権利を保持するものの、理由なくしてそのようなことはしない。我々には、制裁をうけていたりうける可能性のある国からのユーザーや、身元チェックの問題があるユーザーが我々のサービスを使わないようにする義務がある。つまり、現金による払い戻し請求は理由なしに拒否されることはないが、選択的にこれを拒否したり、ケース・バイ・ケースでティーザー発行を拒否する権利は保持する。