ビットコイン急落の原因は何か?専門家インタビューから解き明かす

週末にかけ、仮想通貨市場は大幅に下落した。ビットコインは13%下落。時価総額は2010億ドルに落ち、過去1年間で最低の1920億ドルに接近した。

9月6日にビットコインの価格が1時間で10%以上下落して以来、仮想通貨市場は継続的に下降線をたどっている。ほかの仮想通貨は4月や6月の時以上に打撃を受け、10〜30%の損失を出した。

Source: coin360.io

コインテレグラフは、ThinkMarketsのチーフマーケットアナリストで、元バンク・オブ・アメリカのトレーダーであるナイーム・アスラム氏と、eToroのシニアマーケットアナリストであるマティ・グリーンスパン氏、著名な仮想通貨テクニカルアナリストのUzi氏にインタビューし、ビットコインやアルトコインの最近の下落の原因について探った。

1日の下落としては近年最大

9月6日、24時間足らずで仮想通貨時価総額は400億ドル近く下がり、過去3年間で最も急激な下落を示した

Source: CoinMarketCap.com

8月中旬、仮想通貨の時価総額は過去1年で最低レベルの1,920億ドルまで下落している。だがこのような大幅な損失を計上するのに要した期間は、8月7日から 14日までの7日間だった。

Diarのリサーチャーが指摘しているように。8月8日まではビットコインの安定性は2017年6月以来で最高の水準を示していた。それ以降の8月 8日から 26日まで、ビットコインの価格は6,000ドルの範囲で比較的安定した状態だったが、その後7,000ドルを超える回復が始まった。

Source: CoinMarketCap.com

しかし、ビットコインが4日間で7,000ドルから7,400ドルへ急上昇して売り圧力が高まり、仮想通貨取引市場が売り相場に変わり、ビットコインは大幅に下落した。

8月末のhapeShiftの最高経営責任者(CEO)であるエリック・ボールヒーズ氏のコメントによれば、弱気相場はまだ終わっていないという。しかし主要な仮想通貨の低価格が続けば、新しい投資家が市場に参入するのに充分な機会を提供するとしている。

ビットコインの日足チャートは、2月以来似たような動きを4回示している。過去6ヶ月間でビットコインは10,000ドルまで上昇、6,000ドルまで下落、また10,000ドルに回復し、4回にわたって6,000ドルのレジスタンスを試している。

2月には11,000ドルに急騰したが、6,000ドルに戻った。4月にも10,000ドルに上昇し、6,000ドルに下がった。7月にも8,500ドルまで上昇したが、1ヵ月後に6,000ドルのレジスタンスレベルを試しただけだった。9月にも同様のパターンが発生し、上昇がピークに達した後それぞれ最終的に6,000ドルまで下がる結果となった。

Caption: One-day Bitcoin price chart from Cryptowat.ch

仮にビットコインが6,000ドルのサポート水準から回復しても、次の短期反騰がビットコインを7,000ドルまで押し上げ、その後6,000ドルレベルに戻ってしまう可能性がある。しかし、ビットコインが6,000ドルレベルで底値を維持できれば、新たに発見されたモメンタムによる適切な中期的な上昇ラリーの可能性も出てくる。

急落の要因

ThinkMarketsのチーフマーケットアナリストであるアスラム氏は、コインテレグラフとのインタビューで、投機筋がグローバルな取引市場でビットコインを売りすぎ、不必要に下落傾向を強めたと語った。

アスラム氏が強調するのは、ビットコインの下落トレンドは、仮想通貨市場が9,000億ドルの評価額を達成し、急降下を始めた2017年12月以来変化していない事実だ。

投機筋は狼狽してしまって、できるだけ多くの利益をビットコインの取引から搾り取ろうとしている。ビットコイン自体は昨年12月以来変化はないのだから、何にパニックしているのか?」

ビットコインの価格が、最近数か月で大幅に下がった原因を特定するのは困難だ、ともアスラム氏は付け加えた。

仮想通貨市場および金融市場のアナリストや投資家は、しばしば仮想通貨とブロックチェーンのセクターにおける様々な事情と仮想通貨の価格変動の間に相関を見つけようとする。

しかし、相関関係は因果関係ではなく、あるイベントが発生した時期が、仮想通貨が大幅に下落したり急騰したりした時期と一致したからといって、必ずしもそのイベントが仮想通貨市場で大きな動きを引き起こしたというわけではない。

国際的な調査会社であるTABB Groupが7月に発表したレポートによれば、OTC取引におけるビットコインの規模は、仮想通貨取引市場の少なくとも2〜3倍だ

実際にOTC市場が仮想通貨市場の2〜3倍の規模であるという前提であれば、仮想通貨セクターでの動向は、少なくとも短期的には、取引市場の価格変動に最小限の影響しか及ぼさないはずだ。なぜなら、取引市場価格は、より大きなOTC市場に依存するからだ。

各種の報道では、水曜日に始まったビットコインの調整は、ゴールドマン・サックスがビットコインのトレーディングデスクを立ち上げる決定を遅らせた事実が主な原因だとしている。

しかし、それは無理があるように見える。機関投資家や大企業といった自社の顧客に対し魅力を持たないビットコインのトレーディングから、仮想通貨のカストディ(保管)サービスに方向転換するという大手投資銀行の決定が、その後1時間も経たないうちにビットコインの価格が急落した原因になるとは考えにくい 。

むしろ、2017年の12月以来継続的に蓄積してきたビットコインと他の主要な仮想通貨に対する売り圧力が、市場の不安定性とボラティリティをもたらし、市場評価額を低下させた可能性がより高い

ビットコインのボリュームは、従来の資産や、金(ゴールド)のような価値保蔵手段に対し相対的に低く抑えられているため、主要な仮想通貨取引所で連鎖反応によるドミノ効果を引き起こしやすいのだ。

ゴールドマン・サックスは関係ない?

ゴールドマン・サックスは、リテイルトレーダーや個人投資家の需要増に対応するためのビットコイン・トレーディングデスクの立ち上げを延期した、と報じられた

その後、ゴールドマン・サックスの最高財務責任者(CFO)であるマーティン・チャベス氏は、同社がビットコインのトレーディングデスクの運営から方針転換したとする報道を否定し、そのような報道は「フェイクニュースだ」と断言した

市場の下落を、ゴールドマン・サックスによるビットコイン・トレーディングデスクの遅延と結びつけるのは時期尚早である、とアスラム氏は語る。ゴールドマン・サックスはビットコイントレーディングデスクの計画を完全に諦めたわけではなく、より早急な取り組みが必要な仮想通貨のカストディサービスに集中すべく、優先順位を変えただけだとしている。

「ゴールドマンはこのプロセスを遅らせるだけで、この分野にはこれまで多くの資金と人材を投資してきている。市況が好調でなければ、銀行がIPOプロセスを遅らせるのはよくあることだと投資家たちは理解しなければならない。完全に新しいものを開始しようとしている事実について話しているのだから。ビットコインに関しては、ゴールドマンが多くの分野で関与している。それについて考えるのは止めて、価格に集中しよう」

現在の仮想通貨市場には、リテイルトレーダーが投資に使用できるコインベース、ジェミニ、アップビットのような規制された取引所が幅広く存在する。しかし、仮想通貨と機関投資家との間の障壁を打破するための、信頼できるカストディのシステムとソリューションが欠けている

ゴールドマン・サックスは、仮想通貨を新しい資産クラスとして認められるため、さらに広範な金融市場と政府を説得すべく、より性急な課題に取り組んでいると言える。

仮想通貨に関するテクニカルアナリストのUzi氏は、ゴールドマン・サックスの発表が市場の急落に寄与したかもしれないが、ゴールドマン・サックスが唯一の原因だとするのは難しい、とコインテレグラフに語った。ビットコインは既に7,400ドル前後でレジスタンスに直面していたのが原因で、そのピークに達し下降線をたどったのだ、と話す。

「私としては、ゴールドマン・サックスが仮想通貨のトレーディングデスクに関する計画を手控えるニュースが、ビットコインの下落のトリガーに寄与したと感じている。それに7,400ドル辺りの厳しいレジスタンスに直面していた。しかし、この下落の何日も前から、膨大な量のビットコインの空売りが、ビットフィネックスに加えられていた。これは多くの人が気づいていた。1万BTCもの空売りがあったと私は見ている。よく言うように、金の動きを追えだ」。

2月以降の弱気トレンド

金融業界において最大規模のマルチアセット取引プラットフォームの1つであり、800万人のアクティブユーザーを抱えるeToro。eToroの上級アナリスト、グリーンスパン氏はアスラム氏と同じ見方をしている。グリーンスパン氏によれば、最近数か月の仮想通貨市場は弱気トレンドにあり、堅実な取引量とモメンタムを使って8,000ドルのレジスタンスをブレイクアウトすることが出来なくなっている

「仮想通貨市場のボラティリティはここ数日でその大きさを見せたが、この市場ではまだかなりよく見られる現象だ。ビットコインの価格に関する限り、この価格はここ数ヶ月間で5,000〜8,000ドルのかなり安定したレンジに入っており、これは変わっていない」

グリーンスパン氏によれば、市場のボラティリティは、仮想通貨セクターにおけるトレーダーからの需要不足が引き起こしている可能性が高いという。アナリストや報道で取り上げるような特定の出来事が主要な原因ではないだろうと、グリーンスパン氏は付け加えた。

「その他考えられる理由としては、報道されて続けている悪い噂や、ドル高とテクノロジー関連株の弱さがあるが、結局のところ、短期取引における供給過剰と需要不足の単純な問題だ

流動性の不足と、偽の取引量

ビットコインの取引市場が世界市場のあらゆる個人投資家やリテイルトレーダーに開放されているという事実を考慮しても、ビットコインの市場は十分に流動性のある市場とは見なされていない。仮想通貨市場のデータプロバイダーの推測では、ビットコインの日足取引量は約50億ドルとされているが、ほとんどの主要な仮想通貨取引所で「仮装売買」により取引量を膨らましている調査も出ている。

経済学者で仮想通貨のトレーダーであるアレックス・クルーガー氏が今週初めに語ったところでは、韓国の仮想通貨取引所ビッサムでは、8月25日から2億5,000万ドル以上の偽の取引量が発生しているという

これは、ビッサムが提供する120%の取引手数料の払い戻しを、あるトレーダーグループが利用しているからだとクルーガー氏は説明した。これにより、1日2億5000万ドルの取引量で、純利益が約9万ドルになる可能性があるという。

「韓国の仮想通貨取引所であるビッサムには、8月25日から現在まで毎日午前11時(韓国時間)に2億5,000万ドルの偽の取引量が発生している 。ビッサムは、エアドロップと呼ばれるボーナスとして取引手数料の120%の払い戻しを提供している。取引手数料は0.15%だ。10億ウォンの手数料の払い戻しするのに、仮装取引のトレーダーは2,780億ウォンを取引しなければならない。それが日足で2億5,000万ドルの偽の取引量となる。午前11時にちょうどに3万1,000のビットコインが取引されるわけがわかるだろう」

ビッサムが使用する方法は、直接的または間接的に「仮装売買」を誘発し、仮想通貨取引所の日足取引量を増している。結果として、あるトレーダーグループが1日の純利益9万ドルを収め、ビッサムの日足取引量が大幅に増加する。

しかし、この方法は仮想通貨の国際的な取引量に関する信頼性を低下させ、グローバルな仮想通貨取引市場に悪影響を及ぼしている。

Uzi氏によれば、市場の投資家を保護し、政府に仮想通貨セクターを正当な業界として確実に認めさせるため、流動性と偽の取引量は、仮想通貨取引所が緊急に取り組まなければならない問題だ

「流動性問題の解決は、取り組むべき課題だ。そして、主要な取引所で疑問視される取引量が存在する現状では、偽の取引量の問題は大きな規模で対応する必要がある」

またUzi氏は、このセクターで機関投資家や大規模なヘッジファンドの活動がない事実も、ビットコイン市場が依然として非流動的である要因だと指摘した。市場は依然として機関投資家からの大きな需要をサポートする準備が整っておらず、米国先物市場あるいは仮想通貨取引所を通したビットコインに関するショート、ロングののほとんどは、個人投資家によって行われているともUzi氏は述べた。

ビットコインの市場は依然として非流動的だ。特にアルトコイン市場を見るといつもそう感じている。ボラタリティがあり、妥当なレジスタンスを試すモメンタムがあっても、現段階でビットコインにプロの機関投資家がショートポジションを取るとは考えられない。それに膨大な空売りがほとんど投資家に明らかになってしまうことは、リスクマネジメントにとって困ったことになるだろう」

コインベースのETF登場で状況は変わるか

6兆3,170億ドルの資産を管理する世界最大の資産運用会社であるブラックロックと米仮想通貨取引所のコインベースは、仮想通貨をベースとした上場投資信託(ETF)の開発を目的とした話し合いに入っていると、今月7日に報じられた。市場活動を強化し、仮想通貨に対する機関投資家からの需要増加に対応するためだと伝えられている

VanEckとシカゴ・オプション取引所(CBOE)の申請を受け、米国証券取引委員会(SEC)が最初のビットコイン型ETFを承認する可能性も既に取り沙汰されている。ブラックロックの関与により、米国を拠点とし、米国政府に規制を受けている金融機関の間でビットコインのETF分野における競争が促進され、他の仮想通貨ETFの申請が増えれば、主要な仮想通貨における流動性の改善につながる可能性がある

米インターコンチネンタル取引所による「バックト(Bakkt)や、コインベースとブラックロックによるETF、日本と韓国の肯定的な規制関連動向といった変数が、仮想通貨の短期的回復に寄与する可能性もある。こういった変数は、2012年、2014年、2016年の調整時にはなかったものだ。

専門家が全体として一致している意見は、9月6日に仮想通貨市場の調整を引き起こしたのが、ゴールドマン・サックスのトレーディングデスクに関する単一の報道ではなく、売り圧力の高まりと様々な要素が組み合わさった結果、グローバルな市場に大きな影響を与えたのではないということだ。