NFTゲーム Axie Infinityとは
Axie Infinityは、ベトナムのゲームスタジオSky Mavisが開発したブロックチェーンゲームだ。ゲームをプレイすることでトークン収益が得られる「Play-to-Earn」という新ジャンルを確立させたことでも注目のNFTゲームである。
ゲーム内では、イーサリアムベースのネイティブトークン「AXS(Axie Infinity Shards)」と「SLP(Smooth Love Potion)」の2種類が流通する。Axie(アクシー)というNFTモンスターを手に入れ、育て、集め、他のプレイヤーとのバトルを中心にゲームを進めていく。
育成により強化させたAxieをバトルさせ勝利することでトークンを得たり、2種類のAxieを繁殖させて新しいAxieを誕生させ売却したり、さまざまな方法で収益を稼ぐことが可能だ。
Axie Infinityは、2018年にリリースされて以降、現在最もアクティブなブロックチェーンゲームとなっている。また、NFTマーケットプレイスで最も取引が行われているのがAxie InfinityのNFTであるなど、人気が高いNFTゲームの一つとなった。
Axie Infinityは元々、イーサリアムのメインチェーン上で開発されていたが、ガス代(取引手数料)の度重なる高騰によりゲームの進行に支障をきたすようになったことから、その後、ガス代がほとんどかからない独自のサイドチェーン「Ronin」に移行している。
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Axie Infinityのゲーム内容
Axie Infinityは、ゲームとしては歴史あるオーソドックスな育成ゲームである。Axieというモンスターを自分のペットとして育て、戦わせ、また、さまざまな種類を集めたり、時には繁殖させる。戦いの延長線上にはLand(土地)を購入し王国を築くことも可能だ。
Axie Infinityが従来のゲームと大きく異なるのは、NFTを活用している点だといえるだろう。AxieやLandはすべてNFTとして生成されており、プレイヤー自身の完全な所有物となる。
NFTとして発行されたデジタルアセットは、マーケットプレイスで売買したり、サードパーティが簡単にデータにアクセスすることができる。そのため、将来的にはAxie Infinityの世界で、独自のツールやゲームシナリオを構築することが可能となる。
Axie Infinityはゲームプレイのみならず、ソーシャルネットワークと収入源としての特徴を持つ。Axie Infinityのエコシステムでは、その貢献度に応じてプレイヤーに報酬としてトークンが与えられる。プレイすることで収益が得られるPlay-to-Earnの核となる部分だ。
Axie InfinityのPlay-to-Earnでは、貢献内容によってAXSトークンまたはSLPトークンが付与される。ゲームは、要所でこのAXSやSLPが必要になり、両トークンは仮想通貨であることから仮想通貨取引所にて売買することも可能だ。
ゲームの基本はAxieによるバトルだが、バトルにはコンピュータと対戦する「アドベンチャー」モードと他のプレイヤーと対戦する「アリーナ」モードが用意されている。
Axieには、戦闘での勝敗を決定する体力(HP)、士気、スキル、スピードの4つの特性(ステータス)が用意されている。これらステータスは、Axieのクラス(属性)と目・耳・角・口・背中・尻尾の6つのボディパーツ(カード)によって決定する。
プレイヤーはより強いAxieを手に入れるために、より多くのAxieを集め、これらの組み合わせを試行錯誤したり、また2種類のAxieを繁殖させて、強い特性を持つ新しいAxieを誕生させたりしながら、バトルに挑む。
バトルは、ディフェンダーとなる1体のAxieとアタッカーとなる2体のAxieで構成されるチーム戦のため、ゲームをプレイするには最低でも3体のAxieが必要だ。これは、最初は購入するしかないのだが、実は、ここにAxie Infinityの秀逸な仕組みがある。
なぜAxie Infinityは人気ゲームになったのか
Axie Infinityを始めるために必要なAxie3体を入手するには、相場のレート次第で数万円から数十万円が必要となる。より強い特性を持つAxieを揃えるには、それ以上にもなってしまうほどNFTの人気は高まっている。
これほどまでに初期投資が必要なゲームであるにも関わらず、それを以てしてもプレイすることで収益が稼げることから、参加者は後を絶たない。AxieをNFTとして売買できるため、人気が増したことで良い投資案件にもなっているのだろう。
Axieの価格が高騰している。出所:上段 The Lunacian 2020年1月、下段 Axie Infinity marketplace 2021年10月
さらには、サードパーティによるスカラーシップ(奨学金)制度が、その人気を加速させている。
有名なスカラーシップに、YGG(Yield Guild Games)というギルド(オンラインゲームのプレイヤー集団・企業)がある。ギルドは、NFTやリソースを使って稼ぐことのできる、Play-to-Earnゲームに投資し、大量にNFTを購入している。
ギルドはそれらのNFTを奨学生と呼ばれるプレイヤー候補に無料で貸し出し、ゲームをプレイさせ、そこで得た報酬の一部を利子として徴収する仕組みを構築した。YGGには、1000人を超えるAxie奨学生が所属し、各プレイヤーは毎月数百円~数千円を稼いでいるという。
このように、Play-to-Earnは新しい労働形態として受け入れられつつある。フィリピンやインドネシアなどの新興国では、YGGに所属しAxie Infinityをプレイして生計を立てるプレイヤーも多数誕生しているのだ。
こうした仕組みが功を奏してAxie Infinityの人気は益々高まり、同時にNFTとAXSやSLPの価値も相乗効果で上がっている。
Play-to-Earnという概念は、古くからメタバースと呼ばれる仮想空間プラットフォームにも存在していた。しかし当時の通貨はメタバース内に限られ、通貨によって購入したアイテムなどはNFTではなかったことから、クローズドな世界の概念でしかなかった。
Axie Infinityのトークン「SLP」と「AXS」
SLPやAXSは、イーサリアムの共通規格であるERC-20に準拠して発行されるトークンである。
SLPは、主にAxieの繁殖のために必要なトークンだが、AXSは繁殖コストに使用するのみならず、Axie Infinityのエコシステムを支えるガバナンストークンとしても機能する。
Axie Infinityは常に拡張されており、新たなゲームシステムや新しい機能を追加するなどのタイミングで、ガバナンス投票に利用できる。
また、エコシステムを維持するためのインセンティブとしても機能している。AXS保有者は、トークンをステークすることで新たに発行されるAXSを報酬として受け取ることが可能だ。
それ以外にも、AXSはLandでユーザーが生成したコンテンツなどをプレイすることでも入手できるなど、あらゆる報酬に利用されるトークンとなっている。
AXSは繁殖コストだけでなくガバナンスやステーキングにも使用され、エコシステムの中核として流通している。出所:Axie Infinity ホワイトペーパー
Axie Infinityでの稼ぎ方
Axieでは、プレイヤーがブリーダーになって実世界のペットのように繁殖させて、Axieの子孫を誕生させることができる。新たに誕生したAxieはもちろん、NFTとしてマーケットプレイスにて販売することが可能だ。
ただし、1体のAxieの繁殖回数は7回までと上限が決められており、繁殖の際には1AXSおよび繁殖回数によって変化するSLPがコストとして必要になる。
繁殖に必要なSLPは、Axie Infinityをプレイすることで入手可能だ。アドベンチャーモードで対戦したり、デイリークエストをクリアしたりすることで手に入れられる。また、仮想通貨取引所バイナンスやUniswapなどSLPの取引が可能な取引所にてイーサリアム(ETH)と交換することも可能だ。
一方のAXSも、SLPと同様ゲームをプレイすることで入手できるが、AXSはアリーナモードで他のプレイヤーに勝利したり、バトル大会などで上位ランクに入賞したりすることでしか入手することができない。つまり、より強くならなければ手に入れることが難しいのだ。
Axie Infinityエコシステムで流通するNFTは、公式のマーケットプレイスにて売買が可能だ。ゲームをプレイするのに必要なAxieは、事前にこのマーケットで入手する。
また、繁殖によって誕生させたAxieやゲームをプレイして手に入れたさまざまなゲームアイテムも、イーサリアム(ETH)建てで売買可能となっている。Axie Infinityは、希少性のあるNFT取引で収益を上げることもできるのだ。
ゲームをより多くプレイすることで希少性の高いアイテムを手に入れたり、あるいは繁殖によってより強いAxieを誕生させるノウハウを見つけ出し、トップブリーダーとして君臨することで、より多くの収益を上げることができる仕組みとなっている。
Axie Infinityのゲームとしてのクオリティ
これまでのブロックチェーンゲームにも、NFTキャラクターを繁殖させることで新種を生み出し、NFTの希少性による価値で盛り上げられてきたゲームが多数存在する。しかし、その多くはコレクターの存在ありきでその価値を保っていた。
多くのNFTキャラクターは、「角があるから希少だ」「色がほかと違うから珍しい」などのように見た目が異なることによる、意図的な希少性による価値観でしか評価されてこなかった。すなわち、純粋にゲームとして面白いかどうかが度外視されていたのだ。
しかし、Axie InfinityにおけるAxieの希少性は、ゲームをプレイする上でバトルに強いNFTを生み出すことが大きな目的になっていることから、その価値は明確なものになった。NFTとしての価値が、これまでのゲームよりもはるかにわかりやすいのだ。
そのわかりやすさは、ゲームの面白さにもつながっている。プレイすること自体が面白いブロックチェーンゲームとなると、まだまだ少ないといっても過言ではない。Axie Infinityは、数少ない質の保たれたブロックチェーンゲームといってもよいのではないだろうか。
さらに、Play-to-Earnによってしっかりとしたエコシステムが形成されていることも好感が持てる点だ。プレイすることで収益が得られるため、続々と参加者が増加する。参加者が増えることで、トークンやNFTの価値は高まるという好循環を生み出しているのだ。
ネガティブな点としては、人気が高まりすぎたことで初期投資に必要なコストが高騰してしまっている点だろう、参加するためのハードルが高くなり、一般ゲーマーが参加しづらくなってしまっている。
しかし、スカラーシップ制度など、Play-to-Earnによって誕生した新しい労働環境は、仮想通貨による希少なイノベーションの成功事例であり、多くの人がNFTやブロックチェーンゲームに注目してくれるようになったのは評価できる。
Axie Infinityの成功は、Play-to-Earn領域への投資をも加速するのではないだろうか。
Axie Infinityの今後
2021年5月に、イーサリアムのメインチェーンからサイドチェーンRoninに移行したAxie Infinityは、ゲームとしてはまだまだ始まったばかりだ。
Landの提供を開始したAxie Infinityは、ゲーム開発者をブロックチェーン技術に巻き込むための強力なメディアになることを目標としている。
すでにAxie Infinityは、Axieを鑑定するツールやマーケットプレイス検索を強化するツール、ミニゲームの提供、これらの情報を集約したコミュニティサイトを展開している。
AXSによるエコシステムは今後も拡大されることが予想され、将来的にはWebブラウザやモバイルアプリなど、さまざまなプラットフォームでプレイできるようになることが期待されている。
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