米証券取引委員会(SEC)はブローカー・ディーラーの運用リスクを軽減するため、従来の4段階のプロセスを3段階に圧縮することで、デジタル証券決済の合理化に向けた大きな一歩を踏み出した。

SECは25日にノーアクション・レターを発行し、デジタル資産証券を取引する代替取引システム(ATS)を運営しているブローカー・ディーラーが新しいガイドラインを遵守していれば、罰則を科すことはないとしている。

当局によると、いくつかのATSは、取引されている資産にカストディがない場合に、最新プロセスに則ることになるという。現在、ほとんどのATSは4段階のプロセスに従っている。まず、買い手と売り手がATSに注文を送り、次に、ATSが注文を照合する。3段階目として、ATSが照合された取引について買い手と売り手に通知し、最後の4段階目に、取引はお互いに、またはカストディアンを通じて、二者間で決済される。

しかし、金融取引業規制機構(FINRA)は、ブローカー・ディーラーが資産の物理的な保管を行わない場合のプロセスについて、より明確にするよう要求した。

ブローカー・ディーラーの中には、この4段階のモデルではリスクが高すぎると感じている人もいる。今回のノーアクションレターは、このプロセスを合理化することを認めるよう要求した。ノーアクションレターによると、3段階プロセスには以下のようになっている。

ステップ1:買い手と売り手がそれぞれの注文をATSに送信し、それぞれのカストディアンにATSに送信された、それぞれの注文を通知する。ATSがカストディアンに対し、ATS上で一致したことを通知したときに、それぞれのカストディアンに注文の条件に従って取引を決済するように指示する。

ステップ2:ATSが注文を一致させる。

ステップ3:ATSが買い手と売り手及びそれぞれのカストディアンに一致した取引を通知し、カストディアンが条件付指示を実行する。

ブローカー・ディーラーは、SECの規則の下で、「顧客口座のためにブローカー・ディーラーが所持しているすべての完済証券または余剰証拠金証券の物理的な所有または管理を取得し、維持しなければならない。」ことが求められている。この規則は、ATSが故障した場合に備えて、顧客を証券へのアクセスの損失や遅延から保護するものだ。しかし、これはデジタル資産を扱う場合には難しくなる。

SECは、最新モデルを選択したブローカー・ディーラーは、顧客保護規則に関連した強制執行措置に直面することはないとしている。書簡によると、このプロセスの導入を希望するブローカー・ディーラーは、最低25万ドルの資本金で運営していること、ブローカー・ディーラーの運営者が取引の決済を保証したり責任を負うことはできないことを顧客に明確に伝えることなど、カストディアンとしての役割に関する懸念に対処しているものとしている。また、SECへのセキュリティトークンの登録を評価する手順を確保していることや、資産が連邦法に準拠していることを確認すると説明している。

しかし、SECは、このノーアクション・レターが「このレターに記載されている状況下でデジタル資産証券を取引するATSのみを対象としており、それ以外の場合には、ブローカー・ディーラーによるデジタル資産証券の保管や管理については言及していない」ことを強調した。

今回の書簡は、執行に関するSECのスタッフの意見を表明したものであり、法的な決定ではない。しかし、仮想資産に対する規制上の監視がより洗練されつつあることを示すものだ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン