米クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁は、ビットコインは支払い手段として「広く採用されていない」と語った。決済時間の遅さや価格の変動の大きさから「実用的でない」と指摘した。
2月14日に米フロリダ州で開催された金融関連のカンファレンスの講演の中で、メスター氏は、米国の決済システムの将来に関するスピーチの中で、ビットコインやステーブルコイン、中央銀行デジタル通貨について語った。
メスター氏はビットコインが2008年に登場したことで、決済処理に関するイノベーションを起こしたとするものの、ビットコイン自身が支払い手段として普及するのは難しいとの見通しを示している。
「その価値は変動が大きく、投機によって動き、価値の尺度としての有用性が低い。その決済時間は遅すぎるため、主流の支払手段としてはじつようてきではない。さらにシステムを運用するためのコストは、膨大なコンピューターの電力供給に依存しており、従来の通貨に関連するコストよりもはるかに高くなる」
またその分散的なガバナンスシステムのため、プラットフォームの成長に伴って必要になる技術的な変更を決定するのが難しいという特徴もあると指摘した。
「ステーブルコインにも課題」
メスター氏は、フェイスブックが主導する仮想通貨リブラに代表されるステーブルコインについても言及。ガバナンスやコンプライアンス面での課題を抱えていると主張した。
「最終的な支払いがいつ行われるのか、ステーブルコインの所有者は誰に何を請求できるのかなど、すべての当事者の権利と義務について明確にする必要がある」
またグローバルなステーブルコインは、異なる管轄区域の法的枠組みに矛盾をもたらす可能性があり、実際に導入される前に調整される必要があると語った。
さらにステーブルコインの信頼性が失われ、所有者らが実際に償還を行うようなことになれば、金融の安定性を損なう可能性もあると述べた。
CBDCは「コストとベネフィットの研究を」
中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)について、メスター氏は講演の最後のパートで語っている。
CBDCについては、実際に導入する前に「中央銀行デジタル通貨を取り巻く様々な潜在的なリスクと政策課題をよく理解し、コストとベネフィットを評価する必要がある」と主張している。
米国においてCBDCを発行する課題については、FRBが「そのような通貨を発行し、消費者と企業に直接送金と保管のサービスを提供する法的権限を持っているかどうかだ」と指摘した。
また、デジタル通貨を発行した場合の消費者や企業の情報へのプライバシー保護や、違法行為を防止するための設計、金融政策や短期金融市場への影響といった点も、今後の課題になるとの考えを示した。
2月はじめ、FRBのブレイナード理事はFRBがデジタルドルの研究を進めていることを明らかにした。
さらに今週、FRBのパウエル議長はフェイスブックの仮想通貨リブラの発表がFRBにとって警鐘だったことを議会の公聴会で認め、デジタルドルの研究を精力的に進めていると話した。
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