イギリス政府主席科学顧問である、Sir Mark Walport氏が、税金徴収、パスポートや登記の発行などのデータ管理の安全な方法として、政府によるブロックチェーン技術の利用を提案した。

 

「暗号通貨向けに開発された分散型元帳技術は、出所や所有権を保証する必要のある他の業界でも既に利用されています。したがって、リサーチ、イノベーション、ポリシー、そして法執行機関や商業コミュニティが結束し、イギリスがこういったトレンドの中から可能な限り最大の利益を得ることが出来るよう、そのつながりを確保する必要があります」

同氏によって書かれた最新の年次報告書で、政治のための分散型元帳技術の利用と、政府による様々な公共事業において分散型元帳技術が利用されるよう推奨されている。

同氏によれば、”きちんと規則に従い、サービスの提供を改善、認証し、セキュアに記録を共有することで"健康状態"を向上させること”につながるという。

 

イギリス政府がブロックチェーン技術を採用した場合、どのような意味がそこにはあるのだろうか?

「ブロックチェーンによって、政府が様々な領域を跨ぎデータを保管、管理するという素晴らしい機会がもたらされることになります。私は、こういったテクノロジーを提供しているスタートアップにとって、政府もパートナーたり得ると考えています。我々のポートフォリオ会社のひとつ、Storjは、より高速にファイルを格納し、より安く、そして一層セキュアにデータを扱えるようこのようなソリューションを提供するための努力をし続け、セキュリティの向上とコスト削減の両方を実現しています」

 

Simon Dixon氏もまた政府とブロックチェーンが連携したインフラを開発しているFactomについて言及していて、ブロックチェーンとの連携こそデータを保管する最も安全な方法だと述べている―「彼らのマインドセットを変えることは大きな課題です。データを中央集権的なサーバーに保管しておくことでよりハッキングされやすい環境を作ってしまう、という認識を広めなければなりません。細切れに分散してブロックチェーン上で保管すれば、破損ファイルとして扱われますから暗号化するよりも安全ですし、盗難があった場合でも特定できます」

 

OutlierVentures.ioのファンディングパートナーであるJamie Burke氏もこう述べている―

 

「イギリス政府は既にオープンデータに関しては世界のトップリーダーです。彼らはブロックチェーンがもたらす価値に自然とたどり着いています。世界中の政府がどうすれば効率を上げることが出来るのか研究していて、ブロックチェーンは土地登録から運転免許証の発行、ヘルスサービス、税金徴収に至るまで、あらゆるペーパーワークやマニュアルタスクを亡くすことが出来ますので、まさにその代表格です。しかしながら、公共的な仕事を故意にひとまとめに亡くしてしまうのは、とても政治的な判断が必要になってきます。こういった仕事が全体の雇用のうち20%から40%を占めている国もあります」

 

ビットコイン VS 現金

また、Sir Mark Walport氏はビットコインが物理的なお金と敵対してきた経緯を指摘し、ブロックチェーン技術が犯罪行為と立ち向かうためにはどのように利用されるべきかも説いている―

 

「ビットコインにはパラドックスが存在しています。例えば現金は非合法的に利用することが可能です。しかし現金とは異なり、全てのビットコインによるやり取りは非常に強固なセキュリティを誇る元帳によって管理されていますし、そのデータはどこへ送られるわけでもありません。ブロックチェーンに似た高く洗練された分散型元帳を、犯罪行為から守るための機能を加えてソフトウェアを開発できるというのはまたとない機会です」

 

未来のガバナンスへの一歩

ブロックチェーン技術を採用することで、ストレージ情報をより安全に保管するだけでなく、例えば、既存の投票システムなども変えることができるはずだ、とSimon Dixon氏は語っている―

 

「ブロックチェーンを応用した投票システムはキラーアプリケーションとなり得るでしょう―幾度となく言われていることですが、将来的には所謂不正投票を全て終わらせることが可能になるはずです。一旦それが実現してしまえば、他の国から一歩リードした模範となるはずです」

分散型元帳の主な機能は、導入することでもたらされるその透明性にある。誰にもブロックチェーン上の情報に侵入することは不可能且つ変更することもできない。2016年2月に行われる予定のオンラインオークションでこの手法が用いられる予定だ。

 

「”私にとって、透明性とガバナンス、この二つの機会を得られるというのは明白な利益だ。特に政治的費用などに対しては最も顕著だ。政治家に対して、政府調達や経済的利害関係などの説明を求めるために市民や社会活動家団体に元帳を提供するということだ”、と、Jamie Burke氏は言っていました。”最も大きく複雑なブロックチェーンを利用した社会的取り組みは、保証制度だ。もしこれがトークン化されれば、対象者が利用できる分は限定的なものとなるはずだ―スーパーの食料品のみに償還されるか、公共料金や交通機関に適応され、福祉、そしてどのように政府に間引かれることなくきちんと資本が利用されるか、などより有意義な会話ができるようになるだろう”―と、彼は述べています」

Simon Dixon氏はこう結論付けている―

 

「今がそのプロセスを進める時です。マン島では既に始まっていますし、ロンドンがどう追従していくか楽しみです」