米財務省は3月21日、仮想通貨ミキサー「トルネードキャッシュ」を制裁リストから削除したと発表した

今回の措置は、1月に下された米控訴裁判所の判決を受けたものだ。判決では、「トルネードキャッシュのスマートコントラクト(プライバシー保護を目的としたソフトウェアコードの一群)は、いかなる外国人や外国法人の“財産”にも該当しない」とされている。これにより、OFACの制裁が議会から授権された権限範囲を逸脱していたことが認定された。

財務省は声明で、イーサリアム・ブロックチェーン上にあるトルネードキャッシュ関連の複数のスマートコントラクトアドレスを制裁リストから削除したと述べている。

これを受け、トルネードキャッシュのネイティブトークンであるトルネードキャッシュ(TORN)の価格は急騰し、発表直後に約60%上昇した

OFACは米財務省の組織であり、外国政府や外国人に対する経済制裁および貿易制限の執行を担当している。

トルネードキャッシュは、ユーザーが仮想通貨をミキサーにプールし、後から異なるウォレットアドレスに引き出せるようにすることで、送金元を秘匿するミキサー型プロトコルだ。

資金洗浄をめぐる問題

OFACは2022年8月、北朝鮮のハッキング集団ラザルスグループによる資金洗浄に利用されたとして、トルネードキャッシュを制裁対象に指定した。

ラザルスグループは、過去に多数のサイバー攻撃を通じて数十億ドル規模の仮想通貨を不正取得したとされている。2024年2月には、仮想通貨取引所バイビットでの14億ドル相当のハッキング事件にも関与したと指摘されている

米財務省によれば、2019年のローンチ以降、トルネードキャッシュは70億ドル超の違法資金の洗浄に関与したとされている。

また、トルネードキャッシュの開発者のひとりであるアレクセイ・ペルツェフ氏は、オランダの裁判所により2024年にマネーロンダリングの罪で有罪判決を受け、懲役64か月の刑を言い渡された。ペルツェフ氏は現在、控訴に向けた準備のため自宅軟禁中となっている。

イーサリアム財団は2月26日、同氏の弁護費用として125万ドルを拠出すると発表した。「プライバシーは当たり前の権利であり、コードを書くことは犯罪ではない」とXに投稿している