日本銀行の雨宮正佳副総裁は、世界各国で議論されている中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、〇〇ペイなどの決済プラットフォーム間の相互運用性を飛躍的に向上させる可能性があると発言した。

雨宮氏は27日、「決済の未来フォーラム」での挨拶の中で、CBDCと決済システムの将来像について語った

キャッシュレス決済が普及する中で、大手テック企業や交通系・流通系企業などがデジタルマネー分野に進出している状況を指摘。その上で、雨宮氏は日本では「民間マネー間の相互運用性の確保が一つの課題になっている」と語った。

「例えば、○○ペイなどのノンバンク決済事業者がそれぞれ運営する決済プラットフォームの加盟店は必ずしも重なっていないので、ある事業者が発行するデジタルマネーを保有していても、別のプラットフォームに加盟する店舗では利用できないことがあります。また、異なる決済プラットフォーム間では、個人間送金を行うこともできません」

そして、CBDCがこのような相互運用性の問題を解決する可能性があると述べた。

「CBDCがあれば、誰とでも個人間送金が自由に行えるほか、民間マネー間の相互運用性も飛躍的に向上することになります。CBDCが民間マネー間の橋渡しをすることにより、決済の効率性の改善に寄与し得ることを示しています。実際、最近、こうしたご要望を伺うことが増えています」

CBDC導入への課題

CBDCのメリットについて触れる一方で、導入を巡る課題についても雨宮氏は語っている。

1つは「官の民業圧迫」や「民間のイノベーションを阻害する可能性」だ。

CBDC発行によって「銀行振込など既存の民間決済サービスをクラウドアウトする可能性がある」と指摘。またCBDCの決済コストが民間に比べて大幅に低ければ、民間マネーによる決済ではなく、CBDCによる決済が選ばれるようになる可能性もあるとしている。

2つ目は企業や個人が銀行預金よりもCBDC保有の方を選択すれば、銀行の資金調達に影響を及ぼし、銀行による金融仲介機能に影響を及ぼす懸念があるとしている。

3つ目は、データを巡る問題だ。CBDC発行によって、取引情報が中央銀行に集中してしまえば、個人情報保護の問題やデータ活用の問題を引き起こす懸念があると指摘した。

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