【特別寄稿】元モルスタ幹部「資産クラスとしての成長には規制とR&Dが不可欠」

著者 ロニー・ポテル(Ronnie Potel)

企業やプロジェクトが発行する仮想通貨であるトークンが資産クラス(投資対象となる資産の種類や分類のこと)の領域にも浸透するにつれて、ブロックチェーン技術の進化は転換点を迎えた。

仮想通貨の時価総額も取引量も激増する中、ビットコインはより専門的・技術的見地からの評価がされるようになってきており、ブロックチェーン資産への投資を行う金融商品もより洗練されたものになっている。

トークン形式のブロックチェーン資産の時価総額は、今日では約19兆円を超える。これは私が投資銀行家として専門にしてきたアジアのいくつかの株式市場より大きい。例えば 香港の成長企業を扱うGEM市場の時価総額は4兆円弱にすぎない。また、ブロックチェーン資産の日々の取引量も現在5000億円弱で、すでに台北証券取引所のそれより多い。

大きな資金を持った機関投資家や金融機関大手内部からの問い合わせも増えており、内部で真剣な議論が交わされていることは間違いない。

私たちはまだこのテクノロジーの黎明期にあり、中核となる基礎的な仕組みは決して固まったとは言えないが、それら仕組み間の相互運用性が約束される限り、異なったテーマ別に勝者がうまれるだろう。

 

規制と投資家保護策が機関投資家の参入の土台をつくる

ICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨で広く資金調達する手法)市場は予想通り苦戦中だ。発行体のガバナンスやトークン公開基準が貧弱であるのが特徴で、質の高い発行者でさえ市場の勢いに乗じて、権利・義務関係や条件を都合よく設定している。ここで、ICOを規制するしっかりした仕組みが重要な役割を果たすようになる。

懸命な規制と適切な枠組みは資産クラスにとって不可欠であるばかりでなく、機関投資家によるこの分野への参入を促すだろう

また、激しいボラティリティにかかわらず米国証券取引委員会(SEC)は建設的な姿勢をみせている上、各国の規制当局もこれに追随している。

事実上の株式公開を ICOの形式で行なっていた者は明らかに生き残れないだろうが、そうではないICOについても、当局は過度な規制を避けつつ、通常の投資家保護を行うべきである。

現在一番規制が厳しいのは 資本規制のある国々だが、これは技術を封鎖しようとする試みではなく、国家主権による技術採用への前奏だとみるべきだ。

 

ブロックチェーン技術が有するセキュリティー上の強み、政府機関等も期待

ブロックチェーン資産にも新たな資産クラスとして紆余曲折があるだろうが、普及のスピードは前例がないものになるだろう。というのも、ブロックチェーン技術がもたらすセキュリティー上の利点が大きいからだ。

現在、大手銀行やその他金融機関でも頻繁にセキュリティが破られており、その中央集権型データベースを保護することができていない。

それに対し、パブリック型のブロックチェーンは規模化に対応できるセキュリティ・ソリューションを提供している。例えばイーサリアムのプロトコルに最近なされたアップデートは、ブロックチェーン上でのプライバシー・ソリューションをアラカルトで提供してくれるいい例だ。

各国政府がこの技術を採用し始めているのも、セキュリティ上の利点が要因だ。

一方で、20兆円規模の市場にしては、ビジネスリーダー達のブロックチェーン技術に対する知識不足や理解の浅さが目につく。 もちろんビットコインには多くの課題があるが、我々はもう、それがなんの有用性をもたず、マネーロンダリングの一手法だというような一般的な議論に終始しているべき段階にはない。

企業はブロックチェーン技術と、市場の40%を占めるビットコイン以外のブロックチェーン資産にも目をむけるべきだ。

ブロックチェーン技術を使うことで、既存の金融システムへの参入が困難だった人々が、スマートフォンからすぐに金融サービスを利用できるインフラが形成されつつあるというのは非常に深い意味をもつ。この技術が金融サービスを使う人々にとって有利であることが証明されていけば、既存金融業界等の利益マージンが大幅に減ることは明らかである。

 

企業は個人型資本主義への移行に対応せよ

私たちは今、企業中心の資本主義から、個人型資本主義への潮流を目の当たりにしている。

このプロセスの中で起きている金融の民主化は、人類にとって地殻的な変化だ

企業にとって、法定通貨をベースとしたキャピタルマーケットではなく、平等で透明な将来を導くブロックチェーン技術の研究開発することが急務だ。 また、既存の寡占企業は事業規模やビジネスモデルを調整する必要がある。

ブロックチェーンの資産クラスとしての奥行きや成長速度は、企業によるブロックチェーン技術関連のR&Dの度合いと、既存金融ビジネスの変革とのバランスで決まっていくだろう。

 

著者紹介

ロニー・ポテル(Ronnie Potel)

元 モルガン・スタンレー銀行アジア太平洋区株式エクイティキャピタルマーケット部門共同責任者。香港に拠点をおくBletchley Park Asset ManagementとRadian Blockchain Venturesの共同設立者であり、金融市場で20年の経験を持つ。

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