タイは13日、仮想通貨に関する規制枠組みを導入した国の仲間入りを果たした。100項に及ぶ法律は、タイの王国官報で公表され、仮想通貨をタイ証券取引委員会(SEC)の規制管轄下に入るデジタルアセット、デジタルトークンと定義しており、SECが同国での仮想通貨取引の主要な規制当局となる。
SECが統括
タイ政府は、タイ中央銀行のウィーラタイ・サンティプラポップ総裁が国内すべての銀行に対して、対応する法律が導入されるまでは、すべての仮想通貨関連取引を中止するように求めた今年2月以降、規制枠組みについて議論を行ってきた。
禁止ではなく規制に向けた明確な道筋はあったが、タイ政府の仮想通貨に関する根本的な懸念は、保守派の政治家には典型的なものである。 ウィサヌ・クルアガム副首相は3月に、「マネーロンダリング、税金逃れ、犯罪」のために使われる恐れがあるため、政府は仮想通貨とイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を規制する新しい法律を発令する必要がある、と説明した。
バンコク・ポストが報じた通り、アピサック・タンティヴォラワン財務大臣は、法律が最終的に導入された5月13日に、新しい法律は仮想通貨やICOの同国での禁止を目的とするものではないと述べ、それまでの政府の立場を繰り返した。その姿勢は、規制されている場合に限りICOを広く支持してきたSECの立場とも重なる。地元紙マティチョンが述べた通り、新しい法律の下ではSECがデジタルアセット企業を規制する責任を持ち、仮想通貨登録の費用や必要事項を定め、想定される問題に関するガイドラインを発表し、法律では明記されていない仮想通貨関連のその他の分野にも対処する。
新規制施行後も、詳細はいまだに不十分
国王令はすでに施行されており、デジタルアセットやトークンの販売者は90日以内、8月14日までにSECに登録しなければならない。従わなかったものは、無許可のデジタル取引の価値の最大2倍、もしくは最低でも50万バーツ(約15700ドル)の罰金を課される恐れがある。無認可の販売者に対する最も厳しい罰則は、最長2年間の懲役刑である。
財務省とSECはこれから、今まで銀行だけを対象としていたその枠組みを拡大し、国内すべての仮想通貨取引所、および個人の仮想通貨ブローカーやディーラーに対して関係当局に登録を求める。
しかし、国内企業や取引所がSECのみに登録を準備する中、状況は不透明なままである。規制枠組みも整っているとは言い難い。バンコク・ポストによれば、来月中に財務省とSECが、すべてのデジタルアセット取引を関連当局に登録することを求める基本法に着手する。
タイ証券取引所(SET)に上場しているジェイ・マート社の子会社で、タイで初めてのICOを成功させたジェイ・ベンチャーズは18日、SECと会談を行い、新しい規制について議論することになっていた。報道によれば、同社は新しい法律を検討し、「ホワイトペーパーの提出や、インサイダー取引に関する項目等」について、SECに明確にするように求める、4〜5つの項目を洗い出した、とジェイ・ベンチャーズのタナワット・レートワタナラックCEOは語った。
「デジタルコインが株式同様の扱いを受けるならば、数字を開示したり、インサイドトレーディングと見なされる可能性のあることを述べることはしない」と、レートワタナラックCEOは述べ、JFinコインが非課税措置を受けるために証券に分類されることを望む、と加えた。
さらにジェイ・ベンチャーズは、同国初のICOで販売された1億JFinトークン、およびその後販売される可能性のある2億トークンの行く末についても議論を行う。レートワタナラックCEOは、国はICOの規制を決断したが、新しい規制についてトークン発行者を導く特定の機関は不在であるとして、次のように語った。
「政府がデジタル(資金調達)を制限する法的機関を持つのであれば、取引を助ける機関も持つべきである。タイがSETや代替投資市場のような高いスタンダードを備えた公式のデジタル取引所を有するかどうかに関わらず」
地元メディアが伝えた通り、その他の銀行の仮想通貨関連の活動への関与を以前に禁止したタイ銀行も、SECからの規制に関するさらなる詳細を待ち望む関係者の一員である。そのためタイ銀行は、SECが規制に対する立場を明確にするまで、仮想通貨とICOに対する自身の立場を決めるのは控える、と述べたと報じられている。
新しい税項目も同様に不透明
新しい法律によれば、すべての仮想通貨取引は、利益に対して7%の付加価値税、および15%の資本利得税が課される。同国最大の仮想通貨取引所BXタイも、新しい法律にどのように従えばいいのか理解しきれていないようである。アジア・タイムズに対するコメントの中で同取引所の担当者は、ユーザーに対して資本利得税について伝えようとしているが、課税プロセスが明確さに欠けるとして、次のように語った。
「BXは顧客に対して、15%の資本利得税についてすべての情報を伝えるべく絶えず努力している。しかしその間にも、我々は税務局と関連当局が課税手続きを明確にしてくれるのを待っている。国王令によれば、顧客が所得税と資本利得税を徴収、計上し、税務局に届けることになっている。(中略)現状では、BXが15%の税を源泉徴収している」
同様にTDAXも、規制枠組みの導入に関する政府のコメントが発表される中で、3月に閉鎖されたICOポータルを再開するつもりはない。同取引所も追加で詳細が発表されるのを待っている。
「現在のところ、対処方法について明確な言及がないまま、法律を発表しただけだ。SECがさらなる詳細を発表するのを待つ必要がある」
追加の規制導入を検討
SECの委員長は15日、同委員会が追加の法律を導入することを、マティチョンに対するコメントの中で認めた。事務局長はさらに、海外でのデジタルトークンに対する投資は新しい法律の範疇に入らないと述べた。しかし、同国のビットコインウォレットcoins.co.thの共同創業者で、ブロックチェーン愛好家のジラユート・スルプスリソパ氏がバンコク・ポストに語った通り、そのことが、前述の15%の源泉徴収税と併せて、国内の投資家を海外の取引所へ向かわせ、仮想通貨を海外に保管することを促す可能性もある。
税が施行される前の4月、SECとタイ・フィンテック協会のテクノロジーコンサルタント、ブーメ・ブーミラタナ氏は、デジタルアセット税の導入が国内の仮想通貨企業オーナーや愛好家から強く否定的な反応を引き起こす中、国内の仮想通貨コミュニティーのメンバーとともに、金融当局に対して同国の仮想通貨の税枠組みを再検討するように求めた。
ブーミラタナ氏は、デジタルトークンは資産価値の点で異なるため、ICO発行トークンからの税徴収は通常のデジタルアセットとは異なった扱いを受けるべきである、と述べた。
別の業界関係者で、最近開設された仮想通貨取引所JIBEXのサンティー・スクチョトラットCEOは、タイ市場から地元のスタートアップが資金調達をできるように、投資家の権利は、金融、投資リテラシーを持って取り組まれるべきである、と主張した。スクチョトラットCEOによれば、そうでなければ、タイは「優良なICO取引をその他の市場に奪われてしまう」と話した。