重要なポイント:

  • ビットコインは9万7900ドルまで上昇したが、先物指標はトレーダーがやや慎重姿勢にあることを示唆

  • ビットコインETFへの流入が回復しているが、マクロ経済リスクが価格の重石になっている

  • ビットコインのデリバティブ市場は穏やかな楽観ムードだが、レバレッジの使用は控えめとなっている

5月1日、ビットコイン(BTC)は9万3000ドルから9万5600ドルの狭い取引レンジを6日間維持した後、ついにブレイクアウトを果たし、BTC価格は過去10週間で最高値となる9万7930ドルに達した。しかし、BTCデリバティブ指標によれば市場心理は依然として中立のままとなっている。こうした動きは、米国の現物ビットコイン上場投資信託(ETF)への大規模な純資金流入と並行して発生している。

トレーダーの失望感の一部は、進行中の世界的な関税対立がマクロ経済データに影響を及ぼし始めている点だ。機関投資家の関心が高まっているにもかかわらず、景気後退への懸念が価格上昇の制限要因となる可能性がある。これにより、BTCが2025年に11万ドル以上へ到達する可能性は低下している。

Bitcoin 2-month futures annualized premium. Source: Laevitas.ch

ビットコインの2カ月先物における年率プレミアムは、過去1週間にわたって6〜7%の間で推移しており、5〜10%の中立レンジ内にとどまっている。これは、1月にBTCが9万5000ドル付近で取引され、先物プレミアムが10%を超えていた時期と比較すると、市場の楽観度が後退していることを示している。このことから、10万ドル超えに対する期待が薄れてきている、あるいは確信が持てなくなっていると考えられる。

金のパフォーマンスがビットコインを上回る

一部の市場関係者は、金価格が2680ドルから3220ドルへと20%上昇したことを懸念材料に挙げている。ビットコインは最近、時価総額で銀(1.8兆ドル)を上回り、世界で7番目に大きな取引可能資産となったが、金が21.7兆ドルに達したことでこの成果はかすんでしまった。ビットコインと株式市場との強い相関関係により、“デジタルゴールド”としての魅力が損なわれつつあるという投資家の不安も広がっている。

Bitcoin spot US-listed ETFs daily net flows, USD. Source: CoinGlass

また、過去2週間で米国の現物ビットコインETFに流入した36億ドルの資金が、デルタ・ニュートラル戦略に基づくものである可能性も指摘されている。この戦略では、ビットコインの保有者がETFなどの上場商品へ資産を移したり、デリバティブを使ってヘッジを行ったりしているため、価格への直接的な影響は限定的となる。この見方は、同期間中にBTCがわずか5%しか上昇していないという事実とも一致する。

Bitcoin 1-month options 25% delta skew (put-call) at Deribit. Source: Laevitas.ch

プロトレーダーが9万7500ドル近辺のBTC価格に安心感を抱いているかを見極めるには、オプション市場のデータが有効だ。BTCオプションにおける25%デルタスキュー指標は、2月15日以降で最も低い水準に接近しており、大口投資家やマーケットメーカーがここからの上昇を期待していることを示している。これは、3週間前まで売りオプション(プット)が高いプレミアムで取引されていた状況からの大きな反転だ。

BTCのデリバティブ市場は強気派にわずかに傾く

総じて、ビットコインのデリバティブ市場は穏やかな楽観ムードを示している。トレーダーは価格上昇を見込んでいるものの、レバレッジの使用は控えめとなっている。特に4月9日に7万4500ドルのサポートを再テストした際にもデリバティブ市場が大きく動揺しなかったことを踏まえると、このような状況はサプライズ的な上昇が起きやすい条件と考える人もいるかもしれない。

もっとも重要な影響要因は、米国と中国の通商関係にある。貿易戦争が続く限り、ビットコインはS&P500の動きに連動しやすい構造が続く可能性がある。この環境下では、ビットコインが短期的に過去最高値を更新するのは難しいと見られるが、現在のデリバティブ市場はやや強気派寄りに傾いている。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。

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