米ヘルスケアテック企業セムラー・サイエンティフィックは、現在ビットコイン(BTC)を3808BTC保有しているが、これを2027年までに10万5000BTCまで増やすと発表した。今後2年半で保有量を約28倍に引き上げる計画だ。
セムラーは、まず2025年末までに1万BTC、2026年末までに4万2000BTC、そして最終的に2027年末までに10万5000BTCの保有を目指すという。
この目標を達成するために、株式発行、社債による調達、事業キャッシュフローを活用する方針を示しており、新たに専任の戦略責任者も任命した。
同社は2024年5月に初めてビットコインを購入し、長期保有方針を明言。それ以降、3800BTC超を取得し、BitBoのデータによれば、上場企業の中で世界第13位のビットコイン保有量を誇る。
セムラーの動きは、上場企業がビットコインを購入するトレンドの中でのものだ。中には本業以上にビットコインの取得を優先し始める企業もある。
仮に10万5000BTCに到達すれば、セムラーはビットコインの発行上限2100万BTCのうち0.5%を保有することになる。なお、日本の投資会社メタプラネットも、2027年末までに21万BTCの取得を目指す方針を6月9日に発表している。
ビットコイン戦略責任者にジョー・バーネット氏を起用
セムラーは、ビットコインの購入戦略を主導する新役職「ビットコイン戦略ディレクター」に、著名なビットコインリサーチャーであるジョー・バーネット氏を起用したと発表した。
バーネット氏は以前、ビットコイン金融サービス企業アンチェインドで市場調査部門のディレクターを務め、さらに以前はビットコインマイニング企業ブロックウェアソリューションズで主任アナリストとして活躍していた。
また、ビットコイン業界に転身する前は、4大会計事務所の一角であるEY(旧アーンスト・アンド・ヤング)に勤務していた経歴も持つ。
同氏は今回の発表に際し、「企業財務におけるビットコイン導入の流れは、明らかに加速している」とコメントしている。
ヴァンエック「株価下落時は戦略見直しも必要」
一方、資産運用会社ヴァンエックの仮想通貨リサーチ責任者であるマシュー・シーゲル氏は6月17日、上場企業によるビットコイン取得戦略について、「株価が大きく下落した場合には、その戦略の終了も検討すべき」と警鐘を鳴らした。
特に、「ビットコイン購入資金を調達するためにATM(アット・ザ・マーケット)型の増資を多用する企業は、株価が純資産価値(NAV)に近づくと、新株発行による株主価値の希薄化リスクが高まる」と指摘している。
現時点でそのような状況に陥った企業はないものの、「セムラーはその水準に近づきつつある」と同氏は警告を発している。
セムラーの株価(SMLR)は2025年に入ってから約41%下落しており、ビットコイン購入開始前の水準に近づいている。
ビットコイン含み益は1億7700万ドル超
セムラーは2025年6月3日時点で、ビットコイン投資によって287%の含み益を達成し、評価益は1億7700万ドルに上っている。
また、BitcoinTreasuries.NETによれば、セムラーはビットコインを保有する上場企業130社の中で、1株あたりのビットコイン保有量(0.00034BTC)で第4位となっている。
この「1株あたりビットコイン(BPS)」は、1株あたりがどの程度のビットコイン価値に裏付けられているかを示すものであり、株価への影響を測る指標としても注目されている。