ブロックチェーンセキュリティのスタートアップ企業、クアントスタンプ(Quantstamp)の共同創業者兼CEOのリチャード・マー氏が、分散型金融は従来の金融エコシステムを変える可能性を秘めているが、セキュリティが大きな課題だと述べた。

「DeFi(分散型金融)の成長には、セキュリティが極めて重要だと思う」と、マーCEOは7月9日のカンファレンス「Unitize」で語った。マーCEOは、2020年にこれまで複数発生したDefiをめぐるハッキングに触れ、今年だけで2600万ドル(約27億円)に相当する資金がDeFiプロジェクトから盗み取られたと話した。

拡大するDeFiエコシステム

DeFiのエコシステムは、19年12月には7億ドルだったものが現在では20億ドルとなり、約3倍に成長した。この成長を振り返り、マーCEOは次のように述べた。

「この成長が示しているのは、新しい金融システムが求められているということだ。新型コロナウイルスが発生してから見られるように、中央銀行はどんどん紙幣を刷っており、従来の金融システムで利用できる金利は相当低い。そのため、人々はもっといい選択肢を探している」

マー氏は、特にDeFiプロジェクトのコンパウンド(Compound)の拡大に触れた。従来の金融システムから得られるよりもはるかに高い利息を得ようと、約7億ドルがDeFiプロジェクトに流れ込んだ、と話した。

しかしセキュリティーが課題

マーCEOによると、DeFiプロジェクトは金融包摂や高い金利、コスト削減を見込む一方で、多くのプロジェクトはまだセキュリティの面が欠けており、ユーザーの資金に重大な脆弱性が存在している。

最大の攻撃ベクトルのひとつは、借り手が借入金額よりも少額の担保で融資を受けることだ、とマー氏は語った。ハッカーは、資産の価値を一時的にかさ増ししたうえで貸し付けプロトコルに預け入れ、その後、その操作した金額を使って別の資産を借り入れるのだ。

このようなプロジェクトは分散型であり、違法取引を追跡し復元する方法はないため、「事前に適切なセキュリティを有していることが必要不可欠だ」。マー氏は、セキュリティ監査の他、リアルタイムのセキュリティ監視、透明性の向上や保険が、DeFiの可能性を高めるための方法になるだろう、と述べて締めくくった。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン